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帰りは豊虫は自分の足でゆっくり森をかき分けるひぐっさんの後ろを歩く。
寺嶋は肩に止まりながらチチチと少し音の外れた人間の歌を歌っている。
「先生って…何者なんですかね?」
歌うのをやめた寺嶋が豊虫の首元に片翼を立てもたれかかると吐き捨てるように話す。
「ありゃ、人間じゃねえよ。俺ら動物とはそもそも何かが違うんだ。」
それを聞いたひぐっさんは息を顰めながら歩みを止めて振り返る。
「寺嶋さん。あんた滅多なこと言わないでくださいよ。ホウチュンが怖がってしまうでしょう。」
「僕は大丈夫です。実際に同じ人間とは思えないような魅力を感じますし…動物じゃないって言われても驚かない気がします…。」
「チチチ、ありゃ魔女か物の怪の類だな。今この世界を支配してるのは人間と山の生き物。でも、大昔には物の怪もそのうちの1つの種族だったらしいからな。」
「寺嶋さん。そんなお伽話は…。」
「悪い悪い。魔が刺した。俺もスズメにしちゃあ長生きしすぎたんだなぁ。」
2人の会話がよくわからないがふざけた様子ではないことが伝わった豊虫は黙って山を下っていく。
彼らの話は夢物語のような、年寄りの与太話のような雰囲気を醸しながらもどこか嘘ではない忘れてはいけない話をしているようであった。




