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リクガメは一切歩みを止めようとしないので駿馬は駄々をこねるようにその場に座り込む。
「なあ!カメさんカメさんよ〜。どこまでいくんだよ?流石に疲れたよ〜。」
座りながら地団駄まで踏み出す駿馬に呆れて怒鳴る。
「お前が見たいと言ってたんやろうが!やかましいからとりあえず近くまでいったんてんねん!」
それを聞いた駿馬はすぐ立ち上がりリクガメに抱きつく。
「まじ?まじかよ!カメさんよ〜、いいとこあんねぇ。いやぁ、言ってみるもんだ。ダメで元々だもんな、人生!」
「テキトーなこと抜かすな、アホ。禁足地の手前までや。入んのはあかん。」
駿馬はつまらなそうにリクガメを離す。
「なんでよ〜?ダメなことってのはダメだけどやるから楽しいんじゃないの。」
「ふん!死んでもええなら構わん。お前も供物になりゃええわ。」
それを聞いて駿馬は少し神妙な面持ちになる。
「俺は自分が自由なのは好きだけど、誰かが不自由なのは見たくないな。」
リクガメは眉をひそめて駿馬を見る。
「お前が自由?さっきのお前の話を聞いたら嫁に縛られて自由なフリをしてる哀れな男にしか見えんがな。」
駿馬は思わず苦笑いをする。
「それはそうなんだよなぁ。俺自身人を好きになるってのはこんなにも融通の効かないことかって困惑してるよ。」
その言葉を聞いてリクガメは今日何度目かわからないため息をつく。
「なんでもええわ。やけど可哀想やと思わんことやな。あそこにおるやつはお前を喰うだけ、何もくれはせん。」




