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豊虫は今にも泣きそうな気持ちになりながら道に佇む。
叫んでから数分経ったが民家から誰か駆けつける様子はない。
代わりに通りを歩いていた女性が駆け寄り彼の身を案じてくれていた。
「大丈夫?変なことされなかった?怖かったよね?」
豊虫はそれにこくりと頷くとフラフラその場を去ろうとする。
「待って!警察に相談しなきゃ他の人たちも危ないよ?」
「危ないのは僕たちじゃない。山の動物たちだよ。」
ボソリと呟いた言葉に女性が反応する。
「動物?どういうこと?」
そう聞かれても豊虫は黙って首を振るだけでその場を去ろうとする。
少し上空からピーヒュルルルルと鳴き声が聞こえるとすごい勢いでトビーが舞い降りてくる。
「服部!警察連れてきた!もうすぐくるよ。」
突然現れたトビーに驚いた豊虫は我慢していた涙が溢れてしまう。
「あれ?豊虫!?なんでこんな…って、え?大丈夫か!?何された!」
トビーは大きな翼で豊虫を抱きかかえる。
豊虫はその暖かさに涙が止まらなくなっていた。




