3
3匹は別れ、それぞれ家路につく。
豊虫はしばらく夕陽を見ていない気がして太陽があるはずの場所を見る。
雲は太陽の光は一切通さんという気構えで空を全面覆っている。
しかし、豊虫の周りは明るい。
ということはそんな雲なんかを気にしていないくらい太陽は光を放っているのだろう。
そんなことを考えながら歩いていると前方から明らかに異質な格好をした男が近づいてくる。
格好自体はまるで絵に描いたようなマタギである。
植物で編まれた笠と靴。
紺の作務衣のような者を着ている。
夏にも関わらず肩から毛皮のようなマントをかけ背中には野球のバットを入れるような長細い袋をぶら下げて鋭い眼光をギョロギョロさせている。
まるで物語から出てきたマタギのような男は街の中でそれだけでも異質だがことさら目を引く部分があった。
それは顔だ。
全面顔を白塗りにして赤い模様を描いているのだ。
豊虫はその存在に気づくとすぐに見ないように視線を下に落とす。
彼でなくてもこんな怪しい人間に関わりたい者はなかなかいないだろう。
しかし、関わりたくないと思えば思うほど相手は無意識のうちに感じるものである。
横切ろうとする豊虫をジロリと見る。
その嫌な目線に驚き思わず目が合ってしまう。




