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宙を舞う小さな点。
平地から見てあの大きさなら実際の大きさはかなりのものだろう。
バイトの帰りにいつもの道を歩く服部は空を見上げながらそんなことを考える。
口元に昼食の栄養食スナックを運ぶ。
カリッと噛むと持った場所が悪かったのかほとんど落としてしまう。
「あーあ。やっちゃった。」
すぐに空を見上げて言い放つ。
「お前のせいだぞ?お前がよそ見させたからこうなったんだ。」
しかし、先ほどまではるか上空をくるくる回っていた点はもうない。
責任転嫁もうまくいかなかった服部は苦笑いしながら目線を落とす。
「やあやあ、そこのあなた。出会って早々失礼ですが、その転がっているものを食べてもよろしいですか?」
そこには丁寧にものを頼むトンビがいた。
服部は驚きすぎて身動きも言葉も出ない。
首を傾げるとんびはまた口を開く。
「おや?だめでしたか。これは大変失礼を。落ちてもその菓子はあなたのです。私なんかにやる義理はありませんよね。」
そう言って後ろを向き羽ばたこうとするとんびにやっとの思いで声をかける。
「いやいや、いいよ。いや、いいですよ。落ちてるので良ければ食べてください。」
そういう時顔だけ振り向いて顔をぱっと明るくさせる。
「ほんとですか!いやぁ、かたじけない。残飯あさりにも飽き飽きしてましてな。助かります。」
そういうとすぐさま落ちたスナックをつつく。
服部はそれも残飯には変わりないと思いつつ新しいスナックを開ける。
「あの…よかったらこれ。新しいのもあるんでどうぞ。」
「ほんとに!?いや、失礼。いやぁ、都会も捨てたもんじゃないですね。冷たいやつもいますがみんな結構優しい。」
そう言って新たなスナックを受け取ったとんびはすぐにまた地面に落としそれをつつく。
その様子に思わず服部は笑ってしまう。
とんびは食事をやめて不思議そうに服部を見つめる。
「どうかしました?」
「いや、ごめん。せっかく新品であげたのにまた地面に落として食べるもんだからつい…。」
服部は吹き出してしまい喋れなくなる。
とんびは少し不機嫌になりながら
「動物ってのはそういうもんだよ。」
とむくれている。
それを見て服部は笑いながら謝罪をする。
「ごめんごめん。私は服部。君は?」
作れていたとんびは顔を明るくさせて片翼を差し出す。
「おぉ、友達になるんだな!俺はトビー。普段は山の管理してる!」
服部はトビーの片翼をがっしりとつかむ。




