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リクガメはホゥ爺に向けていた目線を素早く林の奥に向ける。
「どうかしましたかな?」
ホゥ爺を無視して林に向けて怒鳴る。
「おい!盗み聞きか?そんなおもろい話はしてへんぞ!聞きたいなら出てこい!」
暗闇からゆっくりと人の形をした者が姿を現す。
「すいません。盗み聞きする気はなかったんですが近くを通ってしまって…。」
「いつぞやの子供か。こんな時間に何してんだ。」
少年は目線を落として答える。
「俺が何かわかってるですよね?あんたは色々知ってるんですよね?」
リクガメは鬱陶しいと言った様子であしらう。
「知らんな。お前と会ったのは2度目だ。それで何を知れってんだ。」
そう言って踵を返すリクガメに少年は近づいていく。
「俺は自分のこと全然知らないんです。いつからこうなのか。誰が親なのかもわからない。」
リクガメは足をとめ耳だけを傾ける。
「覚えてるのは生まれた時の暖かい感覚と死にかけた時に助けてくれた暖かい感覚だけなんです。」
リクガメは答えず長い無音が続く。
「リクガメ様。彼は…」
「やかましい!」
ホゥ爺の言葉を遮りリクガメは少年を見据える。
「一つだけ教えてやる。おめは分かれた四つの魂を持ってる。それはおめを助けた者の数…」
話してる途中でリクガメは目を細め少年を凝視する。
「おめは…。おめの魂の一つはあの子の…。」
それだけいうとまた背を向け去ろうとする。
「待って!なんの話ですか?教えてください!俺を助けてくれた者達ってのは誰なんですか!?」
その言葉を最後に意識が空に引っ張られる感覚を覚える。
豊虫は目を開けると涙を流していた。
今日はうなされていたわけではなかった様だが鼓動が早く下瞼が重い。
どんな夢を見ていたかは覚えていない。
なんで泣いていたのかも覚えていない。
ベッドに横たわったまま豊虫は横を向き欠けた月を見上げる。




