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山の麓まで来ると三男雄は大きく伸びをしながら話し出す。
「あのさ、ほんと真剣な話するとさ。俺怖い。頭から拒否されたらさ。流石に辛いし豊虫の友達なら尚更。」
豊虫は黙って頷く。
「だから、本当にダメだった時は俺のこと気にしないで。友達はどっちも大事だろ?俺は辛いけど割り切れるから。豊虫とは変わらず友達だから。」
力なく笑うらしくない三男雄の肩に手を回す。
「バカ言ってんじゃないよ。そうなったらトビーがお前の良さを理解するまで朝までかかっても何ヶ月、何年かかっても説明してやるから安心しろ。」
そう言って得意げに鼻で笑って三男雄を見る。
三男雄は少し照れくさそうに笑いながら
「なんだよ、それ。バカすぎ。もう…。真剣に話した俺がバカみたいじゃん。」
そう言って豊虫の腰に手を回して歩き出す。
その瞬間ブワッと大きな影が急降下する。
それは足元の砂を巻き上げ豊虫たちの目をくらます。
「ホウチュン!ひさしぶり!」
そう言って片翼を差し出す。
その翼を取ると涙目になりながら豊虫は答える。
「久しぶり、トビー。僕らが来ることわかってたの?」
「寺嶋さんから聞いてたから山頂の木から麓を見下ろしてたんだよ。」
「はえー、あんなとこから…。トンビってのは本当に目がいいんだなぁ。」
そう言って感心する三男雄に気づいたトビーはしばらく彼を見つめる。
「あ、あの、トビー?彼は…」
「おい、ホウチュン。こいつ…。」
豊虫が何かを言うのを遮ってトビーは三男雄に鋭い目線を送りながら話す。
そのトビーから向けられた視線に何か悟ったのか三男雄は少し寂しそうに豊虫を見る。
「ほらな?」
三男雄がそう呟いた瞬間、トビーは大きな両翼で彼をがっしりと押さえ込む。
「こいつは…いや、君がそうか!ホウチュンの話に出てくる人気者だね!うんうん、確かになぁ。寺嶋さんには敵わないけど溢れ出るカリスマ性?みたいなの感じちゃうなぁ。」
突然の出来事に豊虫と三男雄は目を丸くしながらトビーを見つめる。
「ん?どうかした?」
トビーは2人の雰囲気に動揺する。
そしてハッと何かに気づく。
「ごめんごめん!自己紹介がまだだったね!俺はトビー。よろしく!」
そんなトビーの様子を見て2人は一斉に吹き出す。
状況が飲み込めないトビーは2人を交互に見る。
「ごめんごめん、トビー。俺は三男雄。豊虫からはみのっちって呼ばれてるから是非そう呼んでほしい。」
落ち着いた三男雄はにこやかに笑うと右手を差し出す。
トビーは何が何だかわからないと言った様子だったがその手を見ると満面の笑みになり片翼を差し出しがっしりと握手をする。




