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三男雄との一件があってから2ヶ月が過ぎようとしていた。
彼は相変わらずクラスのみんなから好かれていて忙しそうにしている。
豊虫は物怪という存在が確かに存在しているかもしれないという事実から以前のようには三男雄と付き合えなくなっていた。
「ほーうちゅ!帰ろ、帰ろ、お家に帰ろー。」
「ご、ごめん。今日は山の方に呼ばれてるから…。」
そういえば彼がついてくることはない。
先生を恐れているからだ。
「今日はって。最近毎日じゃん。んね〜、1日くらいいいじゃん?動物話もいっぱい溜まってんだろ〜?」
困ったような顔をしながら豊虫は壁にかかっている時計を見る。
「あ、しまった!もう行かないと!ごめん、本当にごめん!また今度!」
「あ、豊虫…」
三男雄が何かを言い出す前に豊虫は教室を飛び出す。
彼が嫌いになったわけではない。
むしろ大事な友達だと今でも思っている。
しかし、それよりも恐怖が勝ってしまいずっと気まずい状況が続いていた。
きっと三男雄はきちんと説明をしようと話しかけてくれてるのかもしれない。
しかし、それを聞く度胸が豊虫にはなかった。




