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「んでんで?最近いつ仲良しの彼らと会ってんのよ?」
豊虫の先を歩きながら後ろ歩きで話しかけてくる。
「後ろ向きで歩くと危ないよ。人とぶつかる。」
「大丈夫、大丈夫!ぶつかったことないから、俺!」
自信満々の三男雄の言うことは誇張ではないんだろう。
「んで?んで?どうなのよ?」
「山の友達?楽しくやってるよ。」
それだけでは済まされず三男雄は洗いざらい聞き出そうとする。
豊虫自身、大切な友だちの話はしたくなるし三男雄はいつも楽しそうに聞いてくれるので話していて楽しかった。
今日は新しく増えた友達のトビーの話をしてやる。
「おいおい。トンビっていやぁ、ピーヒョロロロロって空高く飛んでるやつじゃないの?」
「そうだよ。すごい勢いと速さでバッと降りてくるんだよ!」
いつの間にか話に熱が入り2匹で盛り上がりながら身振り手振りを交えながらになっていた。
「みのっちさ、そんなに楽しそうに話聞くのになんで僕の紹介しようって提案はいつも断るのさ。」
「いやいや。豊虫の友達はさ、みんな魅力的だよ?会いたくないわけじゃないのよ。でもさ、あの怖い人いるじゃん?」
そう話す三男雄に思わず豊虫は叫ぶ。
「危ない!」
時すでに遅しドンと背後の人にぶつかり三男雄はぶつかった相手ともつれながら倒れてしまう。
「う、うわぁ!す、すいませんすいません!前向いてなかったから…大丈夫…」
すぐに立ち上がり手を差し伸べた三男雄の顔から血の気が失せていく。
豊虫が覗き込むとそこには見覚えのある顔があった。
「先生!大丈夫ですか?怪我は?」
すぐに駆け寄ろうとする豊虫を三男雄は咄嗟に左手を伸ばし遮る。
「豊虫!待て!」
突然遮られて豊虫は驚いて三男雄を見つめる。
いつもはお調子者な三男雄が真剣な顔をしていることに気づき豊虫は息を飲む。
我に帰り自分のしたことに気づいた三男雄は慌てて取り繕うように笑顔を見せて先生の横に回り込み体を支えて起き上がらせようとする。
「はっはっは!豊虫、ぶつかっちゃったのは俺だ。俺が起こさないと失礼になるだろう。本当にすいません。大丈ですか?お姉さん。」
そう言っていつもの調子を取り戻したように三男雄は話し出す。
「あらあら、ご丁寧にどうも。私もよそ見をしていたのよ。だからお互い様ね。」
そう言いながら三男雄をまじまじ見た後豊虫に視線を移す。
「こんなとこで会うなんて奇遇ね。お友達かしら?帰り道?」
彼女の声を聞くとぼーっとしてしまうがそれをなんとか堪え豊虫は答える。
「はい!今日はみなさん忙しいみたいでして。学校の友達と遊んでいました。」
自然とにやけてしまうし心が弾んでしまう。
しかし、先ほどの三男雄の態度が気になりいつもほど魅了されない。
彼女を立たせた三男雄はすぐさま豊虫の隣に立ち彼を引っ張る。
「豊虫!そういや遊びに行く途中じゃないの。早く行こうよ!」
「え、いや、でも先生にちゃんと挨拶できてないし…。」
そういう豊虫に少し三男雄の口調が荒くなる。
「俺と遊ぶ約束だったろ?先生には申し訳ないけど今日は先約優先!」
そんなやりとりを見ながら先生は微笑む。
「あらあら、私はお邪魔虫みたいね。豊虫くんはモテるわね。」
そう言ってひらひらと手を振って彼らを横切り去っていく。




