人魚
人魚
まだ都が京にあった頃、陸には人が街を作り海の中には美しい尾びれをヒラヒラとさせる人魚がいた。
漁師は動力もない船を使い沖で網を張っているとしばしば網に絡まっている人魚と出会う事がある。
上半身は人の魚などは気味が悪く食べる事もできずに網から出されて海へ戻される事がほとんどだ。
そんな人魚の存在を知った偉い人達の間で一つの噂が立ってしまった。
〜〜人魚の肉を食べると不老不死になれる〜〜
そんな噂が広がる頃に豪勢な屋敷に生きたままの人魚を手荷物にした商人が訪ねてきた。
屋敷の主人はこれから自らが食す人魚とやらに話しかけた。
主人
「お主の身を食べれば不老不死になれるというのは本当か」
自らの故郷から遠く離れた場所へ連れてこられ絶望した虚な目で人魚は答えた。
人魚
「いいえ、決して不老不死にはなれません。
それどころか私達の肉体は人間の精神には毒でございます。」
主人
「ええぃ、本当のことを答えよ」
人魚
「本当でございます。不老にも不死にもなる事は叶いません。ただ少しだけ毎日が長く感じるでしょう」
主人
「もう良い、こやつの肉をわれの前へ出せ」
掛け声と共に人魚は奥の間へ連れて行かれ小さい断末魔と共にその命を散らした。
しばらくすると青緑色の肉が屋敷の主人の前に出され、少し躊躇いながらも主人は頬張り食べ終わったが特段体への変化は感じなかった。
次の日に目が覚めても体への変化を感じず噂に疑問を持ち、脇差を使って指を少しだけ切ってみた。
しかし、傷がたちまち治る事もなく自分の中で不老不死を否定するだけだった。
痛みがほとんどなかったことだけが幸いだったが血を片付ける屋敷の奉公人に少し嫌な顔をされ、朝食の秋刀魚の骨が喉に刺さり散々な1日が始まった。
屋敷の主人は人魚の肉を食べたことを忘れることにし普段通りの日常を生き続けた。
齢50そこそこになると病床に伏しご飯もまともに食べれず2年ほど苦しんだ挙句、ぽっくり息を引き取った。
主人は目を覚ました。
自分の体とあたりを見回して気づいた事は人魚とやらを食べた頃に時間が戻ったのだ。
人の一生を1日で体験できるとは素晴らしいと喜びながらも自分が生きているかの確認がしたくなり、手元にあった脇差で指を切ってみると傷が治るわけでもなかった。
痛みは感じなかったが元が長く生きていたからだろうと思う事にした。
奉公人には嫌な顔をされたが、病気がなく美味しいご飯が食べれる事の嬉しさで朝食をかき込んでいると喉へ骨が刺さった。
人生にはやり直しが効きません。
何かの罪を改心し生きるような事はできますが
「ドアを開ける」だけでもドアノブを開かなければ飽きませんしドアノブに手をかけなければ、手を正面は出すためには肩を動かさなければいけません。
全ての出来事は一つ前の動作が必要と考えれば、変える事はできないの、、かもしれません。
何度も人生をやり直すのは羨ましいですが
私は飽き性なので人魚の肉を食べるのはごめんですね。




