第4話 まろうどがみ
土曜日の昼時。それは我が家にとって、一週間で一番賑やかになる時間だ。
ただでさえ十人の大所帯なのに、そこに来客が加わる。皆で昼食を食べるのが恒例なのだ。
誰かが定めてそうなったわけではない。流れでそんな風になる土曜日が増えていって、いつの間にかそうならない日の方がイレギュラーになっていったのだった。
秋月家(今更だが、私のフルネームは秋月美琴という。私の同居家族は皆秋月姓だ)だけで子ども七人、大人二人、そしてそこにジロパパも加わる。これで十人。
来客というのは五人いる。まずは一番年長の兄・一馬の彼女、悠里ちゃん。二人は大学生だ。とっても仲が良い。
そして悠里ちゃんと一兄の友達、譲二くんとその甥っ子の八幡ちゃん。八幡ちゃんのお友達のヨネ子ちゃんと、ヨネ子ちゃんのお母さんのフサ子さん。八幡ちゃんとヨネ子ちゃんは、私の小学生の妹と同い年だそうだ。
譲二くんと八幡ちゃんも、ヨネ子ちゃんとフサ子さんも、一兄が悠里ちゃんを初めて家に連れてきた頃――あれは三年前だ――から突然親しくなった。
それまでお客さんが遊びにやってくるような家ではなかったのに、なんだか突然風通しが良くなったような、家の中と外の世界をつなぐ通り道ができたような、そんな変化が感じらるようになった。
当時、ひどく引っ込み思案な性格をしていた私は度々学校でイジメられることがあったのだが、イジメがおこらなくなったのもあの頃だ。私が自分への批判や陰口を跳ね返せるようになったからだ。そんなことをしてみようと心境の変化が起きたのは、おそらくこの五人の来客がきっかけだったのだろうと思っている。
だから私は、彼らに密かに感謝している。客神みたいに。
そして今私が抱えている問題も、どうかあの頃のように解決してくれないだろうかと、どうしようもない期待をしている。そんな都合の良いこと、無関係な彼らに願掛けしたってしょうがないと分かり切っているのに……
それでも心のどこかで、私は救いを求めている。そうしないと、今に何かとんでもない破滅が起きる。そんな漠然とした確信を、自分の中から消すことができないでいた。
怖いのだ。