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第1話

   

「わあ、きれい! キラキラ光ってるわ!」

「うん、きれいだね。これがこの星の蛍だよ」

「あら、蛍なのね。そういえば私も聞いたことがあるわ。でも、なんだか蛍というより、宝石みたいな輝き……」

 おそらく私の一列後ろの座席だろう。若いカップルの会話が聞こえてきた。

 窓の外を見て、感激したに違いない。感嘆の声こそ上げないものの、私も同じような感想を(いだ)いていた。ああ、これが木星の蛍なのだ、と。


 ほんの100年くらい前まで、地球から出ることが出来るのは、ひと握りのエリートのみ。宇宙飛行士として選ばれ、厳しい訓練を受けた者だけだったという。

 それが今では、誰でも気軽に宇宙旅行を楽しめる時代になっている。ただし太陽系の外まで旅行できるのは富裕層だけで、私のような庶民でも手が届くのは、もっと近場の惑星のみであり……。

 私は今回、木星遊覧ツアーに参加しているのだった。


 先ほど蛍の話があったように、遊覧宇宙船は今、木星のガスの中に突入していた。木星全体を覆っている、いわゆる雲と呼ばれる部分だ。

 水や氷の粒で出来ている地球の雲とは異なり、木星の雲の場合、アンモニアだかアンモニア化合物だかの結晶らしい。そう言われると何だかオシッコを連想してしまうが、船内にいれば匂いは届かないせいか、実際に入った雲に不快なイメージは全くなかった。

 まるで湖の近くで濃い霧が発生した時みたいに、視界全体がモヤモヤしている。そんな中、お尻を輝かせて蛍が飛ぶ様は、まさに幻想的な美しさだった。

   

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