④過去
今日は木曜日。
天気は雨。
今日も父ちゃんは仕事。博史と美加子は学校。
雨の日、母ちゃんはお散歩に連れていってくれないのだ。
今日はつまらない日だ。
博史が学校に行く前に少し遊んでくれた。
母ちゃんは雨の日どこにも行かないのでお顔塗り塗りはしないようだ。
今日は、少し我輩の過去についてお話をしよう。
------
我輩が物心ついた時、小さな町のペットやさんにいた。小さいゲージに閉じ込められ、毎日、毎日いろんな人間が我輩を見に来てはかわいいと言ってはその場を立ち去る。ちなみに、我輩は豆柴である。
しばらくすると、我輩の買い手が見つかった。きれいなお姉さんで名は美和と言った。毎日たくさん遊んでくれて、とても大事にしてくれた。
美和には彼氏がいた。もう3年ほど付き合っているらしい。彼氏も我輩を大事にしてくれていた。だが、美和のおなかに赤ちゃんができたので、結婚して引っ越すことになったのだった。そして、我輩は捨てられた。。。人間てものは勝手な生き物だ。
我輩が美和の家に行ってからたった1ヶ月ほどだった。そこから先はこないだ話した通りだ。だから、我輩を拾ってくれた博史と藤巻家の人々には感謝してもしきれないのだ。
あー早く博史帰ってこないなかぁー?
藤巻家で雨の日にお散歩に連れていってくれるのは唯一、博史だけだからな!
母ちゃんは雨の日、ゴロゴロしてるだけだ。最近太ってきたんじゃねーか?ありゃ、そろそろ中年太りだな!
我輩も気を付けなければ。。。メリルちゃんに嫌われてしまうからな!
「ただいまー!」美加子が帰ってきた。
「今日は雨だねぇー。お散歩に行けないねー。」と美加子が言うので我輩は、美加子のカッパを加えてお外に行こうアピールをしてみた!
「吉田さんダメダメ!美加子は雨の日遊びに行かないのー!」
くっそぉー!美加子め!!ワンワン!
美加子はおいしそうにおやつを食べている。美加子は我輩にも犬用のおやつをくれた。
ナイス!美加子!今日はこれで許してやる!ワンワン!
おやつを食べていると、博史が帰ってきた。
お帰りーワンワン!我輩は博史めがけて飛び付いた。
博史は「吉田さん待て待て。着替えてくるから」と言って二階に上がっていった。
しばらくすると、博史は着替えて降りてきた。
「よしっ、吉田さんお散歩に行くぞぉー!」
さっすが博史だ!我輩は犬用のカッパを装着してもらった!
テンション上がるぅー!
雨の日は嫌な思い出がよみがえるから本当は大キライだった!でも、博史と一緒なら雨の日もまた楽しいと思えるようになった。
我輩は水溜まりに思いっきり飛び込んだ!バッシャーン!!博史に水しぶきがかかった!
博史が「コラッ!吉田さんやめなさい、びしょ濡れになるだろ!帰ったら母ちゃんに叱られるぞ!」
そうだった。。。つい、雨の日の水溜まりに飛び込みがちだが、いつも帰ると母ちゃんにどえらい怒られるのだった!
鬼のような母ちゃんの顔が脳裏に浮かぶ。。。おっかねぇー。
すると、博史も水溜まりに飛び込んだ!バッシャーン!!
我輩に水しぶきがかかった。
何するんだ!ワンワン!
我輩が吠えると博史は「これでおあいこだな!一緒に叱られよう」と言って笑った。
我輩はなんだかうれしくなって、また喜びの舞を踊った。
博史はいつものように、変だと言いながらすごく笑っていた。
1人と1匹は、びちょびちょになって家に帰ってきた。
案の定、母ちゃんのカミナリが落ちた。。。
美加子が「お兄ちゃん何やってんのー?吉田さんもびちょびちょじゃない。」と言いながら笑っていた。
我輩は体についた水を払おうとブルブルした!
母ちゃんにかかった!また、叱られた。。。
我輩はごめんと言わんばかりに母ちゃんをペロリとした。
すると、母ちゃんは「仕方ない子たちね。さっさと風呂入ってきなさい。吉田さんもちゃんと、洗ってあげるのよ!」と博史に言った。
やったー!博史とお風呂だぁー!一緒に入るのは久しぶりだな!我輩はなんてったって、お風呂が大好きなんだ!
我輩がお風呂を好きになった理由というのはな、我輩が初めて博史の家に来た日のことだった。
前日の雨でびしょ濡れでドロドロで冷たくなっていた我輩を博史は丁寧に優しく洗ってくれて、温かいお風呂に一緒に浸かったんだ。まるで兄弟のように。
最初は、恐かったけど博史がしっかり抱っこしてくれていたので安心したのを覚えている。
だが、最近は博史のやつ我輩が犬かきを覚えたので抱っこしてくれなくなったんだ!おかげで犬かきがとても上手になったのだ!
人間は毎日温かいお風呂に入って気持ちいいだろーなー。くぅーうらやましいぜ!
今日は雨だったけどとてもいい日になった!