5
私の声がおかしい事に気づいたらしく、シークレットが水差しから水を注ぐ音がしました。
暗い中なのに良く動くことが出来ますね。
まず灯りを点けるのが先ではないかしら。
「お嬢さま、おみずです」
彼女は私の手の中にグラスを持たせてから離れて行きました。
……あかりは?
色々聞き質したい事はありましたが、とりあえず水を一口だけ口にします。
飲み込みませんでしたけれども。
そっと傍に有った布に吐き出して。口を拭いました。
……これは薬湯かしら?
とても苦く酸っぱいのですが。
とても苦く酸っぱいのですが。
大事なことなので二度言いました。
知っている薬湯と違う味でした。
まさか……
くすくすくす……嗤う声が聞こえたような気がします。
コーユーノって周りは屑ばかり集めていたのかしら。
そういう私がコーユーノなのですけれど!
早々に完全なる二人の記憶が戻ってくれると有難いのですが!
無い物ねだりなのでしょうか?
誰を信じて良いのか?
誰を疑えば良いのか?
不安ですし、腹もたっておりますが!
まずは灯りと食物摂取が先ですわ。
「シークレット、灯りをつけなさい。それとお父様に面会の予約を」
命じられたのに驚いたのか、バタバタと動きだすシークレット。
あら、あなたバタバタ駆ける事が出来たのね。知らなかったわ。