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ジジイと学ぶweb小説講座

ジジイと学ぶまっっっったく役に立たないweb小説講座 〜こうすれば貴方も売れっ子間違いなし!?〜

作者: 一木 川臣

 


「たのも〜!!」


「朝からうるせえな! まだ朝の5時じゃねーか! なんの用だよ!」


「おぉ、売木の倅か。ちょうど良かったお前さんに会いたかったんじゃよう」


「な、ひいジジイじゃねえか。生きてたのか!?」


「失礼な! まだ死んでないわい! お前さんも元気にしとったかの?」


「元気じゃねえよ、朝早くから庭で叫びまくって、誰かと思ったわ…… んで、なんの用事だよひいジジイ」


「実はワシ、10年ほど前から『小説家にならなきゃ』というweb小説サイトで投稿し続けていたのじゃが、一向に評価ポイントがつかなくてのぉ。お前さんなら何かいいヒントを持っていないかと思って朝早くから来たのじゃよ」


「はぁ…… 70も越して若え趣味だなひいジジイ…… なんだ? そのweb小説が読まれない原因を俺に尋ねに来たってことか?」


「そういうことじゃ、10年かけて3000万文字の大長編を書いたのにも関わらず未だポイント0、流石にモチベーションも下がってきて昨日は寝込んでしまったわい」


「すげえ長編だな…… それだけ情熱注いで誰も読まれないじゃ中々キツいだろうな。だが、俺も素人だぞ、相談相手間違ってねえか?」


「そんなことないわい。お前さんは高校生だからの。この『小説家にならなきゃ』の客層で一番ベストな年齢層だと思っておるわい」


「マジか、面倒くせえな…… 読みたくねえよ、ひいジジイの小説なんて……」


「相変わらず口が悪いのお。そうかと思ってお前さんの大好きなシリアル食品を用意しておいたからそれで一つお願いできないかの?」


「……仕方ねえな。そうと言われちゃ断る理由もねえしな…… 」


「さて、そうと決まればこれがワシの書いた小説じゃ。早速読んでくれんかの? そして心置きなく物申してほしいのじゃ」


「はぁ…… ん? タイトルは……『害虫駆除』…… は? なんの話だよひいジジイ!!」


「文字通り『害虫駆除』をテーマにした話じゃよ」


「んなことは分かってるぞ! 『害虫駆除』をどうして、どんな話が展開されるかちっとも分からねえぞ!!」


「色々じゃよ。害虫相手に無双したり、害虫駆除業者である主人公がハーレム作ったりとな。ワシはこのタイトルが気に入っているのじゃ、文句は受け付けんぞ」


「お前さっき意見が欲しいって言ったじゃねーか! こんなタイトル何の話が全く分かんねえぞ。俺が読者ならまずクリックしねえよ。ひいジジイ、他の『ならなきゃ』のタイトルちゃんと見てるのか? 『無職の俺、異世界なら害虫相手に無双できました』とか『婚約破棄をして害虫無双 〜私は悪い虫を追い払う〜』とかさあ!」


「はぁ? そんな長文タイトルワシは嫌いじゃ。ワシはこの四文字でこの作品の全ての想いが詰まっておるからのお」


「んなこと言われても分かんねえぞ、何の話かがよ! 長文タイトルじゃなしにしてもある程度推測できるようにしておけや。要素が分かんねえぞ、ラブストーリーなのか、ただの虫駆除なのか…… せめて何か添えておけよ…… じゃねえと誰も見ねえぞ」


「そうか…… お前さんが言うのなら少し直すかのお……」


「はぁ…… しっかしよく害虫駆除で3000万文字も書けるもんだ…… どれどれ、サブタイトルはマシな方だな…… とりあえず1話目はプロローグからか……」


「そうじゃ。プロローグは大事だからのお。1話目から読者のハートを鷲掴みにせにゃならんからの。それなりに力を入れておるぞ」


「……って、これは流石に力入れすぎじゃねーのか! びっくりだぞ、何万文字あるんだよ!!」


「確かその小説サイトは1話7万文字までかけたはずじゃ。それに加えて書ききれなかった分はまえがきとあとがきに書いておいたからのお。全部合わせて11万文字と言うところかの?」


「文字数多すぎだろ! なんでプロローグ部分で11万文字も使用してるんだよ! プロローグってそんなに間を割くものじゃねえだろ……」


「そりゃ主人公の生い立ち、生まれてから現在に至るまでの経緯、学歴はもちろんのこと、原戸籍、親族、保有資産、推定被相続人に至るまでしっかり書かなければ読者はわからないからのお……」


「いや、細かすぎるぞ。それこの話に関係あるのかって話だぞ、特に戸籍部分……」


「綿密な人物描写がこの作品のウリなのじゃ、これから後に続く3000万文字のストーリーにかかる伏線も含んでいるからのお。ここは欠かせないところじゃぞ」


「んにしても、これは読者逃げてくぞ。だってプロローグの後半殆ど役所の書類じゃねえか。なんでweb小説なのに『印』とか書いて押印させようとしてるんだよ……」


「リアリティを追求するとこうなるのじゃよ。『ならなきゃ』でも中々見ないほどの役所書類の再現っぷりは本作が唯一無二だと思っておる」


「唯一無二じゃなくて誰もやらねえんだよ。読みづれえ…… なんで『ならなきゃ』に来てまでこんな堅苦しい文を読まされなきゃいけねえんだよ。もっと簡潔でいいんだよ、『俺は今まで特段目立つことなく生まれて24年の時を過ごしてきた。唯一得意なことがあるとすれば虫を駆除することに長けている』ぐらいで、このプロローグ部分は終わりだ!!」


「最近の若い奴はせっかちであかんのお。そんなのこの主人公が持つ魅力の1%も伝えられないぞ」


「若い奴が読むからいいの! 後から続く物語を通して主人公の魅力を引き出せばいいじゃねえかっ! 最初っから羅列させられちゃたまらんぞ」


「そうか…… 結構時間を要したところだったのになあ……」


「全体通してみても文字数多すぎだろ…… 大体一部ごとに3000〜6000文字ぐらいに落ち着かせるのが相場だぞ」


「そんなもんかのお…… 改訂作業が大変になりそうじゃわい」


「はぁ…… 俺もう疲れたぞ、中身に触れる前にこんなに疲れるんだぞこの小説。そりゃ評価0なワケだ」


「最近の若いもんは体力が無いのう」


「体力ある年寄りでも逃げ出すぞこれは……」


「ともあれ、今日は色々勉強になったわい。今日の指摘部分で大分手を加えねばいけないから今日はここまでにしておくぞぉ。また近々改訂した小説を引っ提げてお前さんの元に行くからその時はよろしく頼むの。ほら、お前の大好きシリアル食品だ」


「……悪いなひいジジイ。せいぜい頑張れよ」


「じゃあの!」



 ・

 ・

 ・


「……まず『害虫駆除』と言うテーマを改めるべきじゃねえか?」


気が向いたら次作を投稿します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 爆笑でした! とてもおもしろかったです☆彡
[良い点] 文字数の桁に根気強さを見ました。読まれやすさは大事ですね。
[良い点] レビュー一覧からお邪魔します♪ プロローグの11万文字に笑っちゃいました。 役所の書類を完全再現……! いや、逆に見てみたくなりました! 3000万文字は読めそうにないけど、そのページだ…
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