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この料理の腕は愛海仕込みである

 予定通りに白米を炊いて、味噌汁を作り、鶏肉とごぼうを炒めて、豆腐に醤油をかけて鰹節を乗っけて夕飯の完成である。ふりかけの量はお好みでどうぞ。


「わぁ、これ、私たちも食べていいんですか?」

「あぁ。悪いが、一人前を小豆と真白で分けてもらう形になる。流石に3人分は食費が持たなそうだったからな……」

「元々食事を必要としない我らにとって、少量でも食べられるだけど幸せなのじゃ。ニノが気に病むことは無い」


 予備の皿も導入して、彼女らにも料理を出す。マジで皿の数がギリギリだ。そもそも一人暮らし想定なので、足りている方が奇跡なのだが。心配性な母のファインプレーである。


「じゃ、いただきます」

「「いただきます(なのじゃ)!」」


 うん、どれも上手くできている。愛海仕込みの俺の料理の腕は伊達ではない。よく彼女の料理実験に付き合わされた過去を持つので、蓮も俺も料理は出来るのだ。それがこうして活きているのだから、愛海には大感謝である。


 真白は鶏肉とごぼうをセットでひとつまみ。箸でその小さな口へと運んでいた。


「おいっしいぃ〜、のじゃぁ〜!」

「ですね」

「人間の作る料理など久方ぶりに口にしたが、よもやここまでとは! この鶏肉、柔らかくて、味付けの調味料の量が絶妙で、甘辛く仕上げておる。ごぼうも食感を生み出しつつ、鶏肉の味を引き立てておる……! なんじゃお主は! 料理人か何かなのか!?」

「い、いえ、一般高校生ですけど……」


 なんだか喜んで貰えたみたいで恐縮だ。小豆も目を輝かせながら料理を頬張っていた。二人とも幸せそうで、料理を作った甲斐があるってもんだ。


「ふむ、我が選んだ居候先は、大当たりじゃったらしいのぉ」

「嬉しそうで何よりだ」


 ……それにしても、賑やかになっちまったなぁ。


 元々、一人暮らしがしたくて、親の仕事の都合を利用して家を飛び出して。明日からはバイトが始まる。家賃や学費なんかは負担してもらっててるとは言え、食費は自分で稼がなきゃな。ついでに、こいつらの分までな。


 ……いつか、二人まとめて自分だけで養えるようになりたいものだ。こいつらは基本安上がりだけど、出来る限り気遣ってやりたいな。


「あ、そうそう。鶏肉は、白ごはんと一緒に食べても美味いぞ〜」

「なにっ!? では……う〜ん! 最高なのじゃぁ〜!!」

「はい! 美味しいですね♪」


 真白は鶏肉×白米がお気に召したようで、最後までそのスタイルで食べ切っていた。いい食べっぷりだ。


「なぁ、ニノよ」

「なんだ?」

「豆腐の上のこの茶色いのはなんなのじゃ?」

「あぁ、鰹節だよ」

「これが鰹節!? 我は、鰹節は硬くて太い物であると記憶しておるが?」

「それを削って薄くした奴がこれだよ。ま、食べてみなって」

「はむはむ……なるほど、記憶にある味じゃ。美味しいのぉ〜」

「掛かっているのは醤油ですか?」

「そうだ。個人的に、キッ○ーマンさんの醤油は豆腐とよく合って美味いと思ってるぞ」

「はい、確かに美味しいですね!」


 その後味噌汁も好評を頂き、結局どの料理も美味い、という結論に落ち着いたらしい。食後に二人で議論していた。特に鶏肉や鰹節がトレンドらしい。また近いうちに鶏肉料理を出してやるかな。


「さてさて、俺は帰ってきた時にお風呂入ったから、二人も入れよ」

「なっ、風呂も入って良いというのか!?」

「もちろん。好きなだけ温まってこい」

「真白ちゃん、行きましょう」

「そ、そうさせて貰うのじゃ……」


 小豆が真白の手を引いてお風呂場へ入っていった。まさか二人で入るつもりか? どっちも身体小さいとは言え、浴槽に同時に入れるかは甚だ疑問だが。


「さて、今のうちに課題でも━━」


 不意に、ピロン♪ とスマホがメッセージを受信する音がした。


 通知画面に目をやれば、槍水さんからだった。


『夜分遅くに失礼するわね。相談の件なんだけど、幾らかお部屋の候補はあるの。取り敢えず自分で検討してみようと思うから、明日の放課後に意見を教えてくれないかしら』

『了解。でも、それってLINE上じゃダメなのか?』

『大事なことだから、直接会って話し合いたいと思ってるの。それとも、嫌、かしら……?』

『いやいや、お気になさらず。じゃあ明日の放課後に。場所はどこにする?』

『じゃぁ……駅前のカフェでどうかしら?』


「えぇっ!?」


 思わず声をあげてしまった。こ、これはまさか……放課後デートのお誘い!? デートというほどのものではないだろうが、放課後に女子とカフェなんて初めてだ。少なくとも愛海以外では。愛海は、たまに愚痴吐きで俺らを利用するのだ。


『分かりました。じゃあ明日待ってますね』

『うん。じゃあ二ノ宮くん、おやすみ』

『槍水さんもおやすみなさい』


 最後に、互いにおやすみスタンプを送り合ってスマホを閉じた。心臓がドキドキする。これが女子とのLINE……! しかも一緒にカフェに行く約束をした。あー、ダメだ。今日はもう勉強に集中できる気がしねぇ。課題は朝早起きしてやろう……


 やば、何故だか眠気が襲ってきた。お風呂に入っている小豆や真白には悪いが、先に寝させてもらおう。


 明日の学校の準備をすませて、スマホのタイマーを、いつもより1時間早く設定する。寝るのには早いが、代わりに起きるのを早くする。なんだか凄い眠たい。


「皿洗い、明日でいいか……」


 俺は瞼が落ちてくるのを感じながら、眠りにつくのだった。


 おやすみ。

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