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なぜか学年1位にご教授することになりました

 その後、特に変わったことも無く昼休みになった。


「さ、蓮。約束は?」

「もちろんですとも。休み時間の間に買ってきましたよ」

「お、良い心がけじゃない」

「ありがたき幸せ」


 俺たちは幼稚園からの幼馴染。お互いの好物なんて熟知している。なので蓮は、愛海の好みであるオレンジジュースを的確に選んでいた。


「じゃ、私は友達と約束があるから。ジュースありがとね」


 愛海が友人たちと談笑しながら教室を出て行く姿を後ろ目に、蓮が言った。


「ニノは食堂だろ? 行こうぜ」

「あぁ」


 食堂は、学年を問わず賑わっていた。蓮は肉うどん、俺はわかめうどんを注文して席に着く。


「お前ほんとわかめ好きだな」

「仕方ないだろ、美味しいんだから。蓮だって毎回肉じゃねぇか」

「食べ盛りなんでね〜」

「そんなんだといつか愛海に注意されるぞ」

「栄養をバランスを〜、ってか」


 会話もそこそこに、うどんをいただく。やはりうどんに乗ったわかめとネギは最高だ。ネギは無料だし、財布にも優しい。


 すると、蓮が急に数学の時のことに触れてきた。


「そういえばニノ、数学ん時めっちゃ槍水さんのこと見てたよな」

「別に良いだろ」

「どうして見てたのかなぁ〜?」

「いや、槍水さん、改めて努力家で凄いなと思った」


 蓮は、基本憎めない奴だが、何かにかけて色恋沙汰に絡めようとしてくる悪い癖もある。今回も多分、そう言う類だ。


 そんなことを思っていると。


「私を呼んだかしら?」

「槍水さん!?」


 まさかのご本人登場である。これには蓮も驚きを隠せないらしい。うどんを気管に詰まらせていた。


「ねぇ、ご一緒してもいいかしら。他に席も空いていないようだし」

「あぁ、どうぞどうぞ」


 持っていたトレイを覗いてみると、まさかのごぼ天うどん。食堂には他の料理もあると言うのに、奇しくも3人ともうどん。うどんの会だ。


「それで、私二ノ宮くんに相談があってきたの」

「え、俺?」


 学年1位の秀才が相談とは珍しい。しかも俺に。思い返しても、特に心当たりはない。


「二ノ宮くんって、最近引っ越して一人暮らしを始めたんでしょう?」

「あぁ、はい。そうですよ」

「実は、私も一人暮らしを始める予定なの。それで、いいお部屋を探すお手伝いをして欲しくって」

「へぇ、槍水さんも一人暮らしを?」

「そう。……少し、親と離れたくってね。物件をどうするか迷っているのだけど、相談できそうな相手が居なくて。でも、実際に一人暮らししている人なら、って思って」

「あー、なるほど。だったら、俺でよければ相談に乗りますよ」

「ありがとう。じゃあ、後でまた話し合いたいから、連絡先を聞いてもいいかしら?」

「えっ、連絡先!?」

「そ。LINE、やってるわよね?」

「あ、も、もちろん」

「これが私のQRコードよ。読み込んでくれる?」

「あ、俺もついでに貰ってもいい?」

「えぇ、分かったわ」


 スマホのカメラで、槍水さんの画面に表示されているQRコードを読み込み、友達登録をする。母親、愛海を除けば初めての女子のLINEである。シュボっという音と共に、クマのキャラクターのよろしくスタンプが送られてきた。それに俺もちびキャラのよろしくスタンプで返信しておいた。


「よし、二人ともありがとう。私はこれで。また別の機会に話しましょう」

「あ、じゃあね」


  いつのまにかうどんを食べ終えていた彼女は、トレイを直しにさっさと席を離れるのだった。


「なんだよ、俺完全についでだったじゃんかよ。ニノ、ずるいぞ〜」

「そんなこと言われたって困るわ。俺もびっくりしてんだからさ」

「確かに。まさか、あの槍水さんも一人暮らしとはなぁ。俺は一人暮らしなんてさらさらする気は無いけどなっ」

「蓮はまず一人で部屋の片付けを出来るようになろうぜ……」


 そう、この蓮とかいう男、意外と整理下手なのだ。棚があっても、種類を分けすぎて結局枠が足りなくなってたり、中々断捨離出来なかったりと言った具合。俺や愛海が手伝ってようやく綺麗になったが、一人でできるようになって欲しい。


 ……そういえば、小豆はゆっくり休めているだろうか。昨日は荷解き手伝わせちゃったし、今朝も朝ご飯を用意して貰ったから、掃除は程々で良いと伝えたのだが……心配だ。


「って、さっさと食べないと間に合わなくね!? 次移動教室だよな!?」

「次は……理科……実験室じゃねぇか急いで食うぞ!」


 俺たちは、残りのうどんを平らげ、慌ただしく教室へ戻るのだった。

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