二枚目のカード 1
立ち話もなんだからと、わたしは保健室へ招かれた。
シンクはこちらへ椅子を差し出すと、食器棚の上に置かれたマグカップにインスタントコーヒーの粉を入れる。
「プリンセスも飲むかい? 砂糖もミルクもないけどね」
「おかまいなく」
そんな事よりわたしにはシンクへ聞きたいことが山ほどある。
何から聞こうか迷っていると。
「プリンセス! 先日は申し訳ない事をした!」
「ええー!?」
わたしは驚愕した。
なんとシンクがこちらへ頭を下げているではないか。
「あの時の俺は悪い蟲に精神を侵されていたんだ――」
シンクは自身の事を語り始めた。
彼がこの世界にやってきた目的は主に二つ。
一つは王宮から亡命させたお姫様の保護。
お姫様というのはわたしのことだ。
…………。
お姫様というのはわたしのことだ。
重要なことなのでもう一度だけ言わさせてね。
そう……わたしがプリンセスだ!!
さて、シンクのもう一つの目的はカードの回収。
この二つを同時に追っていた最中、ヤバい敵の罠にハマってしまったシンク。
気色の悪い蟲を食わされてしまい、精神を操られてしまったんだって。
因みに王宮を襲撃した悪い人達への仕返しは他の騎士達に任せているらしい。
わたしはシンクの顔をジト―っと見つめる。
「キミが言いたいことは分かっている。プリンセスを守る騎士がこれでは頼りないと思われても仕方が――」
「ううん、違うよ。わたしが言いたいのはあなたってちゃんと他人にごめんなさいできる大人だったんだね」
「それってもしかして俺を許すと言ってくれたのかい?」
「そうだよ。あなたの正体は仙台のおじいちゃんから裏を取ったの。だから信用してあげる」
「そうか……先代にも心配をかけてしまったな」
「でもあなたって大人のくせに敬語は使えないんだね」
「……手厳しいな」
シンクは苦笑した。
◇ ◇ ◇
昼休みが終わって、今は算数の授業中。
そう、わたしが大好きな算数。
の、ハズなのに……。
わたしは授業に集中できないでいた。
それは先ほどシンクとの別れ際に手渡されたこの一枚の紙が原因だ。
回想――。
「プリンセス、キミにこれを渡しておく」
「なにこれ? なんか知ってる人の名前がたくさん書かれるけど」
「彼らには十分気を付けるんだ。さっきも言ったが俺はヤバい敵の罠にハマった。そいつはおそらくカードを持っている」
「それって、わたしが持っているこれみたいな?」
ポッケからカードを取り出す。
それはわたしを魔法使いに変身させる不思議なカード。
計5枚あって、それを全部持っている人はどんな願いも叶えられるらしい。
シンクは頷く。
「ああ、そうだ。そしてその人物はこのリストの中にいる」
「どうして分かるの?」
「臭いだ」
「臭い……? 体臭ってこと? フェチなの?」
「違う、そうじゃない。魔法に精通している者は少なからず魔力を纏っているんだ。索敵能力を鍛えれば感じることができる」
「ふーん……」
シンクの言っていることはよくわからないけど、とりあえずリストを眺める。
そしてわたしは驚愕した。
「んな!? こ、これって――!?」
そのリストの中には……。
なんと大親友のかやちゃんの名前が載っていたのだ。




