みかんのルーツ
唐突な家族会議が始まった。
ダイニングテーブルを挟んで目の前にはパパ、その隣にはママ。
雪丸はわたしのおひざの上。
まず最初に口を開いたのはパパだった。
「雪丸から聞いたよ。みかん、全て知ってしまったんだね」
「どうしたの急に? 雪丸はワンちゃんだよ。人間はワンちゃんとお喋りはできないんだよ」
――――。
一瞬の沈黙があった。
「あ、あれ~? ちょ、雪丸、話が違うじゃないか! みかんは雪丸が喋る事を知っているんじゃなかったのか?」
焦りながら雪丸に耳打ちをするパパ。
雪丸もなんだか困惑している。
も~仕方がないなあ……。
「知ってるよ。雪丸は元々人間の男の子だったんでしょう?」
「な、なんだ。知っていたのか。じゃあ、そういうことだ。家族会議は以上……って、痛っ! 痛いってママ!」
ママに足を思いっきり踏まれ、さらにギロリと睨まれたパパ。
「わ、分かってるよ。言うよ、言うから痛くしないでおくれ」
改めてこちらへ向き直るパパとママ。
パパは一つ咳ばらいをすると。
「もう分かっているかもしれないけれど……パパとママはみかんの本当のパパとママではないんだ。今まで黙っていてすまない!」
そして頭を下げてきた。
わたしの心のもやもやした気持ちはすっかり置いてけぼりだ。
なんかジェットコースターから振り落とされた気分。
シンクをやっつけた後、雪丸はしばらくしらばっくれていたけれど……。
ようやく教えてくれたかと思えばこれだよ、まったく。
まさかみんなグルだったなんて……。
「じゃあ、仙台のおじいちゃんと宮崎のおじいちゃんも本当のおじいちゃんじゃないの?」
「ああ、おばあちゃんたちもだ。因みに言っておくと仙台のおじいちゃん……実は元王宮の騎士だったんだ」
パパが言うにはわたしが別の世界で王宮のお姫様として生まれたのはどうやら本当みたい。
わたしの本当の名前はシトラスっていうんだって。
そして間もなく王宮が襲撃された。
なんやかんやでわたしとこのカードは騎士見習の少年に託された。
一応言っておくと、その少年っていうのが雪丸のことだよ。
雪丸は行く当てを求め……隠居生活を送っていた元王宮の騎士を訪ねた。
それが仙台のおじいちゃんだ。
仙台のおじいちゃんは先代の騎士団長でエースと呼ばれていたんだって。
「じゃあ……。仙台のおじいちゃんがわたしをプリンセスって呼んでいたのは、孫をヨイショする為の比喩じゃなかったんだね」
「すまない……」
「どうして謝るんですかパパさん?」
――――。
「うわあああん! みかんが急によそよそしくなっちゃった~! ほらあ! こうなるから~! こうなるから僕は本当の事を言うのは反対だったんだ~!!」
泣き出すパパさん。
それを隣で慰めるママさん。
「もう、パパ。そんな事言ったってしょうがないでしょう。いつか言わなきゃいけないことだったんだから。ね?」
「だってだって~!!」
ママさんはわたしの方へ向き直ると、諭すように口を開いた。
「ねえ、みかん……。私とパパは本当の両親じゃないけれど、あなたを愛しているのは本当なの。パパの態度を見ていれば分かるでしょう?」
わたしは黙ってこくりと頷く。
「別に頭に本当の~とか、真の~とか、娘と並んだら姉妹と間違われるくらい美人の~とかまでは求めてないの。だからせめてさん付けはやめない? あと敬語も……ね?」
「わたしと姉妹っていうのは無理が……」
「無理が? なに? なにか言いたいことがあるのかな~?」
こういう時のママの微笑みはいつも不気味で恐い。
「な、なんでもないよママ。あとパパも急によそよそしくしてごめんね」
そう言うと、二人の顔はパアっと明るくなって。
「「みかん!!」」
ぎゅっと抱きしめてきた。
………なんだこりゃ。




