小さくなったみかん 6
男の名はシンク。
こことは別の世界から来たという。
その目的は二つ。
一つは奪われたカードの回収。
彼は王宮に仕える騎士の一人で、王様からカードの回収を命じられたそうだ。
そしてもう一つは……。
「俺はプリンセスを探していてね」
「プリンセス? お姫様ってこと? 家出でもしたの?」
わたしは首をかしげる。
「亡命させたんだ。当時プリンセスはまだ赤ん坊だった……」
それは十年くらい前の出来事。
ある日、王宮が襲撃された。
理由は王宮が所持していた1枚のカード。
襲撃者はたった1枚のカードを奪う為になりふり構わず惨殺を繰り返した。
王様と騎士たちは精一杯の力を使ってお姫様とカードを異世界に転移させたのだそうだ――。
「あの時、俺達騎士は襲撃を食い止めるだけで精一杯だった。だから不本意ながら見習いのガキにプリンセスを託した訳だが……」
シンクは雪丸に向けて指を差すと。
「おい、貴様! まさかとは思うが見習いのジャックじゃねーよなあ?」
なぜか雪丸は顔を背ける。
その行動はシンクの予想を確信へと導いたようで。
「ジャック貴様ああああ! 十年間もどこをほっつき歩いていた!!」
突然怒り出した。
わたしは透かさず仲裁に入る。
「もう! ジャックとか見習いとかってあなたさっきから一体何なの!? 雪丸は雪丸なの! 雪丸はわたしのペットなんだから~!!」
「どいてくれプリンセス。俺には分かる。キミこそがプリンセスなんだろう? 百歩譲ってプリンセスが無傷だった事だけはこいつの働きを褒めてやる。だが十年も連絡をよこさなかった事は万死に値する!」
え……?
なに?
わたし今、プリンセスって呼ばれた……?
わたしはこの前パパから言われた事を思い出した。
「いいかい、みかん。みかんにプリンセスって呼んで良いのはパパとママだけだ。もし他人の……ましてや見ず知らずの男がプリンセスって言ってきたら、そいつは変態だからすぐにお巡りさんを呼ぶんだよ」
「じゃあ、仙台のおじいちゃんは? わたしの事をプリンセスって呼ぶよ」
「仙台のおじいちゃんは身内だからセーフだよ」
「じゃあじゃあ、宮崎のおじいちゃんは? わたしの事を姫って呼ぶよ」
「もちろん、宮崎のおじいちゃんも身内だからセーフだよ」
という事は、このシンクと名乗る男は……。
変態!!
わたしはすぐに煌々と光る魔法のステッキを構え直す。
すでにジューシーさの充填は済んでいる。
「食らえ! ジューシー柑橘スプラーッシュ!!」
「ぎょええええええええ!!」
またもや必殺技が直撃し、両目を押さえてのたうち回るシンク。
しかし、彼はすぐに立ち上がると。
「な~んてね。悪いがキミ達にはまた弱体の魔法を使わせてもらったよ」
「んな!?」
いつの間にかシンクの身体が2倍くらいに大きくなっている……?
「いや違う! わたしと雪丸がもっと小さくなっているんだ!!」
「ふはははは! 大きさはパワーだ! 小さくなるという事は攻撃の威力も小さくなるという事。言っただろう? 俺は今、悪い魔法使いさんだと」
これはかなりまずい状況だ。
必殺技は今のが最後……。
ジューシーさを集める術を失った魔法のステッキはとうとう光を失ってしまった。




