絶対に許せない相手 6
地面に付着したわたしの鼻血がうねりを打ち始める。
スライムと化した鼻血はうねうねと動くと、わたしの頭と男の足の間に滑り込む。
「うわ!」
男が足を滑らせバランスを崩す。
「そのまま頭を打って気絶しゃえ!」
わたしは気合で起き上がると叫んだ。
咄嗟に男の視線が遠くを向く。すると一瞬で雪丸とすり替った。
男は一瞬焦った風だったが、体勢も立て直して何事もなかったように嘲笑う。
「くははは――。残念だったな。俺は何ともないぜ」
でもこれではっきりした。男は目で見た物に対して魔法が使えるんだ。
今、男は雪丸を見た後、自身と雪丸の立ち位置を入れ替えた。
だとすると、男の目を潰すことがわたしの勝利に繋がる。
わたしは傍にいた雪丸を抱えて一旦距離をとった。
地面に雪丸をそっと置く。
「雪丸、わたし絶対勝つからね。もう少しだけ待っててね」
わたしはステッキを強く握ると、男に向かって突進する。
「ああああああ!!」
もしもう一度、頭に蹴りを入れられたら今度は死ぬかもしれない。
でも……絶対に諦めてはいけない。この最低人間を絶対に許してはいけない。
今のわたしを突き動かすもの。
それはただ一つ……絶対に勝つという確固たる信念だ。
「ガキが! 何度来ても同じだ!」
そう、同じだ……この男はきっとまた同じことをする。
再び雪丸と立ち位置を入れ替えて、わたしが雪丸をぶっ叩くことを期待している。
そのズルさこそが、わたしに逆転をもたらす唯一の隙だ。
わたしは男に向けて再びステッキを振り下ろす。
男の視線が雪丸に移った。
「今だ!」
わたしは念じる。
地面よ! 大きな落とし穴に変われ!!
さっきわたしが雪丸を置いた場所……
そう、今まさに男が着地するその先は……
わたしが放った……ジューシー柑橘スプラッシュの染みが付着している場所である。




