絶対に許せない相手 1
わたしと雪丸は横断歩道の前で立ち止まる。
すると、赤信号なのに向こう側から横断歩道を渡って来るお兄さんがいた。
「いい歳した大人が信号も守れないなんてかっこ悪いなあ……雪丸は真似しちゃだめだぞ」
「いちいち言わんでも分かっとるわ」
そして案の定、やって来た大型トラックがお兄さんに対してクラクションを鳴らす。
お兄さんは立ち止まると、何気ない顔つきでトラックを見ている。
「あぶない!」
わたしがそう叫んだ時、その人はトラックに跳ねられた。
「キャー!!」
「うわあああ! 人が跳ねられたぞ!」
周囲にいた人達が叫ぶ。
わたしは跳ねられた人の元へ駆け寄る。
すると……。
「あれ? この人、さっきのお兄さんじゃない!」
わたしは驚愕した。
隣にいた雪丸が尋ねる。
「おい、みかん! どういうことだ」
「トラックに跳ねられた人が、いつの間にかおじさんになってるの。雪丸も見たでしょ? 信号無視してたのはもっと若いお兄さんだったでしょ?」
「すまん。オレ近眼でよく見えて無かった」
「もう、これだから犬は!」
「だから謝っただろ! っていうか犬関係なくね? それにみかんの見間違いじゃねーのか?」
「いや、絶対見間違いじゃないもん。跳ねられたのはお兄さんだった! ほら、ちょうどあそこで何食わぬ顔で歩いているような感じの……」
――!?
わたしがたまたま指を差した人、まさにそれがさっきのお兄さんだったのだ。
「雪丸! あの人だ! あの人捕まえて!!」
雪丸はまだ困惑気味だったが、頷くとすぐに駆け出してお兄さんの足にしがみ付いた。
「わんわんわんわん!」
「うわ、何だてめえ!」
わたしは尋ねる。
「お兄さん、さっき信号無視してた人でしょ? 説明して! なんでトラックに跳ねられたはずのあなたがここにいるの!?」
するとお兄さんは舌打ちをする。
「チッ、うぜえな……」
その瞬間。
「え!?」
わたしは困惑した。
瞬きをした一瞬の隙にお兄さんがサラリーマンっぽい人に……まったくの別人にすり替わっていたからだ。




