本の魔法使い 8
――!!
わたしの意識が見覚えのある図書館の風景に戻ってきた。
さっきまで夢を見ていたんだ……。
ところでさっき撃たれた所はどうなてるんだろう。
あれ? 脇腹の血が止まっている。それに痛みも少しだけ引いた気がする。
すると……
「気分はどう?」
誰?
「もう、そんなキョトンとしないで? あなたが呼び出したんだから」
声がする方に顔を向けると、見覚えのある魔法少女が立っている。
わたしが読んだあの本の表紙。
そこに描かれていた主人公と瓜二つの人物が――。
見比べようと本の表紙を確かめる……あれ?
表紙が真っ白になっている。
「まだ分かってないの? あなた、本を見て強く思ったでしょう? 魔法使いに会いたいって……。だから、その思いに答えて出て来ちゃったの。まあでも、わたしの性格設定プロフィールなんかに関してはあなたのイメージをそのまま引きずっている訳だけどね」
「え? じゃあ、Dに見せかけて本当はCにパットっていうのも?」
「え、ちょっと待ってね。今確認するから………」
只今確認中……。
「――ッ!! ちょっと! あなた一体全体私になんて設定盛り込んでくれるのよ! 油断も隙もあったものじゃないわ!!」
「気付いて無かったんだ……。で、今どういう状況?」
「あなたに回復処置を施して、猛獣も消し去ったところ。でもあの子供を取り逃がした」
「じゃあ、お開きってこと?」
わたしがホッと胸を撫で下ろそうとすると……
「いえ、まだよ! まだ気配があるもの。それにここには本がたくさんある。まだ彼に分があるわ」
すると、本棚の向こうが黒く光った。
きっと僕ちゃんが魔法を使ったんだ。
本から出てきた魔法少女と共に慎重に本棚の向こうを覗き込もうとした……その時――。
「うわああああ!!」
僕ちゃんの悲鳴が聞こえた。
わたし達は急いで本棚の向こうを確認すると……。
「魔法少年ビューティーサロン! 只今惨状!! さあ、俺のカットに酔いしれな!!」
そして白いバラ達が一斉に咲き誇る。
真っ白な背景の世界観がそこには広がっていた。
魔法少年と名乗るチャラい男の人が僕ちゃんを半裸にしていく……。
「て、てめえ何しやがる!!」
「そう照れるなよ。さ、この俺に全てを委ねてごらん」
そして、顎クイ……からの熱々濃厚なキス!!
それもマウストゥマウスで!!
僕ちゃんは白目をむいて気絶した。
「あれが、司書のお姉さんが言っていたハードな世界……」
すると……。
「なんか手柄を持ってかれたような気がするけど……まあ、一件落着ってことで!」
本から出てきた魔法少女の身体が透け始めた。
「あなた身体が……」
「ああ、気にしないで。帰るだけだから、あそこにね」
魔法少女は本を指差すと、光になって本の表紙に吸い込まれていった。
「ありがとう、本の魔法少女さん。活躍したところ全然見て無くてごめんね」




