本の魔法使い 6
…………。
あれ? 何も起こらない。いつもみたいに必殺技の名前を唱えたのになんで?
わたしは連呼する。
「ジューシー柑橘スプラッシュ! ジューシー柑橘スプラッシュ! ジューシー柑橘スプラッシュ!」
なんで? なんで必殺技が出ないの?
「く、くくく、あーっははははは!! どうやらその必殺伎とやらは、一度しか撃てねーようだな!!」
僕ちゃんが腹を抱えて笑い始める。
「笑うな! 必殺技が出ないなら別にいいもん。打撃技をお見舞いするだけなんだから」
「は? てめえオレに勝った気でいるわけ? 言ったよなオレはエリートだって。今てめえは隙を作った。オレの……勝ちだ」
その瞬間――。
バンッ!!
音と共にわたしの脇腹に激痛が走る。
「ガハッ!!」
振り返ると、後方……本棚の上からピストルの銃口がこちらを向いている。
わたしは撃たれたことを理解した。
勢いのまま床に突っ伏す。わき腹から血が溢れ出だしているのを感じる。
目が霞む。辛うじて一冊の本が見えた。表紙には可愛い魔法少女の絵が描かれている。
わたしが今日ここに返しに来たあの本だ。物語の主人公であるこの魔法少女はとても強い心を持っていた。
彼女は憧れの魔法使いにとてもよく似ていた。わたしが大好きな魔法使いに……。
会いたい……会いたいよ。誰かは覚えてないけど、とにかく会いたい。あの……魔法使いに……。
もうダメだ。
脇腹の血が止まらない……身体が動かない……痛い……寒い……意識が……遠のいていく…………。




