紺の節~篠崎と白銀の横笛
一方、学校からの帰り道の公園で美しい笛の音を聞いた一人の女子高生はそこで一人の金髪の大人の女性を見つけた。その女性は高貴なお姫様な雰囲気で女子高生は思わず見とれたのだった。
「とっても綺麗な笛の音ですね。」
「…。」
白銀の横笛を携えた女性は黙って頷いた。
「…私、篠崎って言います。お姉さんは…?」
「…。」
女性は返事をしなかった。
「もしかして…、言葉を話せないんじゃ…?」
篠崎は女性が言葉を話せない事に気付いた。女性は頷いた。
「誰かを探してるんでしょうか?」
女性は頷き、近くに落ちていた木の枝で地面に『ケント』と文字を書いた。
「『ケント』って人を探してるんですね。」
女性は頷いた。
「じゃあ、私の家に来ませんか?私も一緒にケントって人探しますから。」
篠崎は女性に私の家に来るよう促した。そのついでにケントを探す事も伝えた。女性は頷いて篠崎について行った。
家に着いた篠崎は家族に事情を説明し、女性を自分の部屋に案内した。
「何もないけどゆっくりして下さいね。」
篠崎は女性に休むよう促し、女性は頷いた。篠崎は携帯端末を取り出し、さるグループ単位で女性についてのメールを送信した。女性は篠崎の手にした携帯端末を見ていた。
「スマートフォンが気になるんですか?これがあると離れていても相手とコミュニケーションがとれるんです。今、私の友達皆に『横笛を持った金髪の外国人の女の人がケントって人を探してて、今私の家で預かってる』って伝えたところです。後はどんなレスが返ってくるかですけど。」
「…。」
「私…、子供の頃から好きな場所があるんです。街を見渡せて何より木々が生い茂ってて、そこで夕方まで友達皆で一緒に遊んでました。私達が『秘密基地』って呼んでた場所です。」
篠崎は女性に自分の好きな場所を語った。女性は少し笑顔を見せた。
「意外と笑うんですね。とっても素敵ですよ。」
篠崎はなかなか笑顔を見せない女性が笑うのを見て素敵だと褒めた。
「あっ…、秘密基地の事を話したらあの歌が浮かんできちゃった…。お姉さん…、笛を演奏出来るって事は音楽に関心があるんですよね?」
女性は頷いた。
「じゃあ、子供の頃秘密基地で友達皆で歌ってた『シークレットベース』って曲を歌いますよ。」
篠崎はシークレットベースを歌った。女性は更に笑顔を見せた。歌い終わると、女性は横笛を取り出し、両目を閉じながら先程篠崎が歌った曲を演奏した。極めて高い再現力だ。
「とっても素敵です。」
篠崎が褒めると女性は頷いた。こうして二人暫く部屋で過ごしたのだった。