jijiはもういない
jijiは もういない
庭のカエルがぴょんと はねただけで
パッと 私の足の影にかくれていた黒猫
猫は 死期が近づくと
ふらっと みんなの前からいなくなるんだって
いつもの お散歩に行ってくるよ という風に
ふらっと でかけたまま戻ってこないんだって
昨日まで 素っ気なかったのに
今日はやけに 甘えてくるなって感じで
にゃあ と鳴いたら
それは ありがとう と
言っているのかもしれない
心配してくれる家族を 安心させるように
昨日まで 気だるそうに眠ってばかりいたのに
今日はとても 調子が良いんだって感じで
にゃあ と鳴いたら
それは さよなら と
言っているのかもしれない
かけがえのない家族の 誰にも気づかれないように
この話が ここで終わったとき
でも それは全部
人間が都合の良いように 解釈しているだけで
実際は ちがうんだと
本当は こうなんだと
得意顔で 誰かがそう言うんだ
それは事実で 君は正しいんだろう
その言葉に それでも私は こう考えたいと
空想にふければ 筆を執り続けられるのだろうか
それとも 猫みたいに
ふらっと いなくなるのだろうか
人間は感情の動物だと 誰かが言った
jijiは もういない
真夜中 月明かりの庭に向かって
試しに にゃあ と鳴いてみる
答えはないまま
白い息は 夜に揺れて溶けた
この作品は、以前投稿した『人間は 感情の 動物』を改稿したものです。