六話 サバをよんでみる
「私はもちろんケンタ様のことは命にかえても口外いたしません。 あと、ケンタ様は……15歳くらいでしょうか?」
「はい!?」
おいおい、27歳の俺が15歳に見えるだと……?
「あのさナターシャ、気を使わなくて良いからね。本当のことを言ってごらん?」
日本人は若く見えると言うが、それは幾らなんでもサバを読みすぎだ。 実年齢の半分くらいになるのはいただけない。
「あっ、失礼致しました。もっとお若かったのですね」
「うんん??」
おかしい。どうも話が噛み合わないぞ。
だがナターシャが嘘をついていないなら、俺はステータス通りに若返っている可能性があるのか?
「ナターシャ、鏡って持ってる?」
「はい。小さいですがどうぞ」
ナターシャの手のひらよりも小さな手鏡を借りて、自分自身を映してみる。そこには……
「ヒゲが薄い」
「おひげ、ですか?」
鏡が小さくて顔の全体図がよくわからんが、20歳頃から濃くなり出したヒゲの跡が薄い。
目元も若干幼いような気がする。気がするだけかもしれないが。
「俺は17歳のようだな」
「そうなのですね」
たぶんね。だって誰に聞いても「知るか」で終わってしまう。頭のおかしい人認定を受けてしまうのは避けたいから、17歳って事にしておこう。
あと、気になるのはユニークスキルの「缶詰食べ放題」か。
うん、ふざけているとしか思えないな。
さっきはホーンラビットに襲われて無意識のうちに発動したようだが、俺はどうやって缶詰を出したのか。
缶詰といえば桃缶やツナ缶、鯖缶とかは安くてその場ですぐ食べられるしよく買っていた。
いや、それに限らず缶詰は大体そんな感じだったけど。
「……お?」
「ケンタ様っ!」
ボトボトボト。
どこかから投げられたわけでもないのに、突如現れたソレは足元に落ちた。
俺がさっき思い浮かべた缶詰3つだった。
「え、なに? 意味わかんねえ」
これが俺のユニークスキル? 一体どういう原理なんだ?てか、勝手に出てきたけどこれはタダなのか?
気になって、さっきしまったばかりの財布の中身を数えてみる。
「銀貨が3枚減っていますね」
俺もナターシャも、呆然とする。
金を要求するのに、「缶詰食べ放題」とはどういうことなのか。いや、焼肉食べ放題だって金払って食べるんだからタダで寄越せってのもがめついのか。っていやいや、そんなことは今は重要じゃない。
混乱している自覚はちょっとあるが、幸いまだ金はあるし、300円程度なら全然痛くないから良い。
目の前で起こった超常現象に、口をぽかんと開けていたナターシャが復活するとステータスを再度見てみろと勧められ、再度ステータスを出現させる。
ユニークスキルは同じものを持つ人が存在しないので、自分で調べるしかないようだ。
良くみるとユニークスキルの欄に「缶詰食べ放題▼」と書かれていた。
▼の部分がいかにもといった感じだなと思いながら、俺はそれをそっと押した。