五話 そこそこお金持ちでした
「け、ケンタ様! それって白金貨じゃないですか!?」
「あ、やっぱり?」
慌てふためくナターシャの横で、白金貨らしきものを取り出してじっと観察する。
財布の中身を確認すると、中にはもう4枚同じ硬貨とたくさんの硬貨が入っていた
これが白金貨で間違いないなら、俺が持っているのは一際目立つ白金貨5枚と、その他の日本円ではない硬貨が。
少なくとも、日本円でいう500万円以上は持っている計算になる。
「財布だけでも見つかってよかったですね!」
「うん」
ナターシャに財布の中身を確かめて貰ったが、この世界のお金で間違いないようだ。
まずこれだけあれば当面の生活費には困らない。
ナターシャは自分の事のように喜んでくれた。
とゆーか、これってきっとあれだよな。
暫くニート生活を楽しもうとあてにしていた俺の貯金額と一緒っぽい。
俺をここへ連れてきた誘拐犯の気遣いなのか何なのか、よくわからない思惑を感じる。
「ステータスは確認されましたか?」
「いや、どうやってみるんだ?」
「自分自身にしか見えませんので、心の中で念じてみて下さい」
「おう。……っうお!」
いきなりなんか出た!
無色透明で、なんか、B4サイズのプラ板みたいだな。
【名前】ケンタ・ハセガワ
【年齢】17
【職業】なし
【レベル】1
【体力】50
【知力】100
【防御】15
【運力】80
【ユニークスキル】缶詰食べ放題 アイテム袋(財布)
……基準がわからないからなんとも言えないが、職業の欄がやけに虚しい。自分で望んでニートになったってのに、人から言われるのは嫌みたいだ。ニートだって人間だ。人間ってやつは複雑なんだよ。
「でもあれ、なんで17歳? それに缶詰食べ放題って何のことだ?」
このふざけたユニークスキルに身に覚えは……あるな。めっちゃある。さっきおでん缶食べたし。
「ケンタ様?」
ステータスを確認したまま固まっていた俺にナターシャが声を掛けてくる。
でも異世界転移とかって、ユニークスキルが強力なせいで面倒事に巻き込まれたり、ユニークスキル持ちが貴重だったりするのはテンプレだ。慎重にいかないと。
「ナターシャはさ、ユニークスキルとかってあるの? あと俺って何歳に見える?」
「ユニークスキル? ああ、先程の美味なる食べ物の事ですか」
速攻バレた。
気を取り直してナターシャにユニークスキルの事を聞くと、ユニークスキル持ちはやはり珍しいようだ。隠しておく方がいいな。ナターシャにも口止めをしておこう。