二十話 当店での取り扱いはございません!
「ケンタ殿は南の国出身だったのですね」
「南?」
なんの事かさっぱりわからないが、アルベルトさんは神妙な面持ちで話を続けた。
「最近はナターシャの顔色も良かったので、薄々、そうなのかもと……。いえ、そうであればどんなに良いかと思っておりました」
「え、何? 私がどうしたの?」
……なんだなんだ。
俺とナターシャは一体何の話が始まったのか訳もわからず、置いてけぼりのまま話を聞いていた。
「ケンタ殿があの粉を娘に無償でお譲り頂いていたとも知らず、お礼もせずに大変失礼を致しました事、平にご容赦ください」
「粉!?」
ちょっ、人を密売人みたいに言うんじゃない!
心の中ではそんな突っ込みをしていたが、頭を深く下げた2人の態度があまりに真剣過ぎた。
「あの、すみません。あの粉とは何の事を指しているのでしょうか」
「え?」
「私は南の国とやらの出身ではないですし、今の今まで存在すら知らなかったんです」
「……そんな、それならどうして」
愕然としながらも2人は教えてくれた。
ツッカと呼ばれる粉はとても甘くて、近隣諸国では南の国か、もしくはタチアナさんの故郷である人里離れたエルフの郷でしか手に入らないらしい。
そこまで話を聞いたナターシャは納得したように、「ああ!」と声をあげた。
「私も粉そのものは見てないですけど、ふんだんに使われた甘味をお持ちになっているのにとても驚いたんです」
「……もしかして、砂糖のことか?」
「さとう?」
3人はきょとんとしてこちらを見ているが、白くて甘い粉なら、十中八九砂糖で間違いないだろう。
「えーと、確かに俺はそのツッカという粉は持っていませんが、それが材料に含まれているおやつは持ってますね。大量にはないですけど」
いくらスキルでもキッチリお金を払わなくてはいけないのだから、無限に出てくるわけではない。
それに聞いた感じでは貴重品のようだし、言いふらすのも危険そうだ。
「俺には事情がよくわからないですが、ナターシャに必要なものなら今後もお譲りする事はできますよ」
「そ、それは本当ですかっ!?」
「……ただし、条件がひとつだけあります」
人差し指を立てて2人をジッと見つめると、ひゅっ、と息を呑んだ音が2人から聞こえた。
アルベルトさんとタチアナさんの焦り様からカマをかけてみたが、どうやら当たりだったようだ。
最悪のパターンも想定しつつ、俺は静かに深呼吸してから覚悟を決めた。
「何故、それが必要なのかを全て話していただきます。それが出来ないのであれば、お譲りする事は出来ません」




