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十四話 ジャンキー

「どうじゃ? こんなものかの」


「あ、ありがとうドワーフのおっさん達!」


 俺は今、猛烈に感動していた。

 増改築をドワーフのおっさんに依頼し、約1ヶ月掛けて、念願の秘密基地(マイホーム)を手に入れたのだ!


「ありがとうはええんじゃが、ほれ」


「ん?」


 ひらり、と手渡された紙切れ。

 受け取ってみると暗号のような文字が書き連ねてある。


「……えーと」


「なんじゃお前さん。 字も読めんのか」


 はん、と呆れたように言われてちょっと悔しい。

 俺はこの世界の言葉は何故か話せるけど、書き取りは出来ない。

 早いうちに気付いてはいたのだが、市場での買い物や道案内は聞けばそれで済んだので、勉強をさぼっていたツケが今更まわってきてしまった。


「てことで、増改築費諸々込みで大白金貨一枚じゃ」


「へ?」


「へ、じゃねえ。さっさと支払え」


 まるで、あの日の居酒屋のデジャヴだ。

 俺の代わりに紙切れの詳細内容を読んでくれたドワーフのおっさんは、あの時と立場が逆になった俺へにやにやとした笑みを浮かべている。正直、ぶっ飛ばしたい。


「……ぼったくってねえよな?」


「ば、馬鹿者(バカモン)! この費用はお前さんが意味のわからん機能をつけまくったからじゃろ! 金持ちじじいの道楽でもねえのに、地下室や風呂や無駄に凝った台所がいいなどと散々我が儘を言いおってからに! わしらがどれだけ苦労したと思うておる!? これでもまけてやったんだぞ!」


「ごめんごめん」


 悪いことを言ってしまった。

 俺が文字を読めない事を良いことに誤魔化されてるかも知れないと疑ってしまったが、おっさんどもはむしろまけてくれていたようだ。


「……すまないが、ローンで支払ってもいいか? 悪いが手持ちが足りない」


 大白金貨一枚というと、日本円で1000万円程だ。

 当初500万円以上あった資金も、宿代や食費で確実に目減りしているし、家の中を整えるのにも今までは必要なかった食器や寝具などを買い揃えるのに入り用になってくる。


「おう。いいぞ」


 ドワーフのおっさん達も俺が富豪でないのは承知していたらしく、とりあえず頭金として白金貨三枚(300万円)を支払い、あとは追い追い返済していくという事で合意してくれた。


「借金返済の為にも、早く店を開けて缶詰を売ってくれよ。お前さんがちまちま売るから、わしらの生傷が絶えないんじゃぞ」


「いや、それは知らねえよ」


 ドワーフのおっさんどもは未知なる鉱物と酒のあての魅力にヤラレたらしく、あれから毎晩俺の夕食時に現れては缶詰のおねだりをしてきた。


 最初は普通に取り引きをしていたのだが、良く考えたら食事処で食い物を売るのは営業妨害だ。

 案の定、すぐに女将さんにバレてしまってからは女将さんや店員の目を盗んでコソコソと受け渡しを行い、スパイごっこをしているみたいになった。

 そんな感じで取り引き量も激減してしまい、だがそれで缶詰の魅力にヤラレているおっさんどもの需要を満たすことが出来る筈もなく、“缶詰ジャンキー”と呼ばれた男達は明日は誰が俺と直接交渉権を得るのか日夜戦いを繰り広げているらしい。


 ……うん、実にあほらしい戦いだと思います。


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