一話 ここはどこだ
スランプに陥った作者の戯れ。
宜しければ読んでやって下さい。
「…………あれ?」
みなさんこんにちは。
俺、長谷川健太(27)は、5年勤めたブラック企業(内、退職届の受理に1年)を昨日辞めてきました。
明日から何をしよっかなー。忙し過ぎて生活費以外に碌にお金を使わなかったから、貯金も数百万あるし失業保険もらって暫くニート生活を楽しみたいなー。あっ、旅行も行っちゃおー。
深夜までのサービス残業、パワハラ、アルハラ、時折セクハラにさらされ、満身創痍な自分をたっぷり甘やかそうと明日への希望に満ちたそんな良き眠りに就いたはずでした。
「で、なんで草原なんだよ……」
最近購入したばかりのベッドで寝ていたはずなのに、奮発して買ったマットレスが草に変わってるってなんなんだよ。草というか地面に寝かせられてたから身体が痛くてしゃーない。馬鹿野郎が。
とりあえず、いつまでも寝っ転がってても仕方ないから、立ち上がって身なりをチェックしよう。
……うん。何年も使い込んで見慣れたTシャツと、下はスウェットだな。
まぁ、記憶違いでなければ最後の記憶は就寝したはずだから当たり前だ。ただ、よれよれのTシャツに、毛玉付きのスウェットが恥ずかしいだけで。
頼みの綱(?)のスウェットのポッケには、何故か財布が入ってた。
「こんな大掛かりなドッキリ仕掛けやがったのは一体誰だよ。後で絶対シメてやる」
辺りを360度ぐるりと見渡す限り、草・草・草。そんな光景を見つめ、学生の頃からの友人を数人思い浮かべてブツブツと独り言ちる。
いきなりこんなど田舎連れてきやがって、文句くらい言っても許されるはずだ。
「あっちは森で、こっちにはうさぎか」
右、左と遠くにある草以外のものをチェックする。
右の森の中を歩いて民家があるわけもないだろう。むしろ迷子になりそうだ。
左のうさぎは遠目からみても可愛い。俺の視力は大して良くないが、こちらに凄い勢いで走ってくる。野放しにされてるあたり野生っぽいが、人懐っこいうさぎなのか。
「……す……え〜〜!」
「はあっ!?」
違う。あれは俺の知っているうさぎではない!
近付いて来るたびどんどん巨大化していくうさぎの前に、豆粒みたいなのが必死で走っている。
な、なんか叫んでるしあれはまさか襲われているのか!?
「そ、そこの貴方様! どなたか存じ上げませんが、お助け下さいませ〜!」
ーーつーか、こっちくんなああああああああ!!