04 初夜?
今回は途中から貴族令嬢のレミちゃん視点になります。
『それでは鈴さん、以後よろしくお願いします。
艦隊の概要、装備品及び今までの活動履歴データはすでに送ってあります』
「あ、うん。ありがとう」
現在地、貴族の3女様……もといレミの住んでいる屋敷の中。
警備ロボットのモニターに表示される女性と会話をしていた。
この警備ボットに表示される女性は、AI艦隊の旗艦に搭載されているAIである。
僕が依頼を受けたので、いろいろと情報共有をしているのだ。ホログラムで立体的にわかりやすく表示してくれるのっていいよね。
『それでは、今後の予定をお話いたします。
レミ様はこれより、初めての惑星開拓計画を実行される予定です。我が領地の再外周であると同時に、帝国にとっても再外周の辺境の星系1つをレミ様のものとして譲り受けているので、そちらの開発を行っていく予定となっています』
あ、それって辺境の星系を譲り受けた、というよりは押し付けられた、と言った方がいいんじゃなかろうか? まあでも、これから開発していくらしい。
「なんとなく見えてきたゾ。その星系開発に際して、こき使われるんでしょ僕」
『まあ、有体に言えばそうなります』
うん、なるほど? だからあんな好条件で引き留めようとしたのか。
実際、レミの周りの人間からとなるといろいろと面倒なんだろうなとは思う。上下関係とか、引き抜きの調整とか、貴族様とはいえ3女となると扱いもそれほど良くはないと思うし。
「ま、美しい女性のためなら多少はがんばるけどね? 僕のペースでやらせてもらう事にするよ」
『心配はいりません、信じがたい事ですが別世界から来た人間という事は聞き及んでおりますし、我々AIもサポートします』
「いっそ全部AIに任せた方がいいんじゃね? って思うけど、その辺は貴族的な立場とか評価とかの影響で出来ないのかね?」
『はい、おそらく難しいかと』
そう、個人的には全部AI任せにした方が手っ取り早いと思うのだが、そうは問屋というか周りの貴族がおろさないだろう。
この帝国ではAIにすべてを任せることはタブーとされ、出来るだけ頼らないことが望ましいとされている。
法律で禁止されているわけではなく、暗黙の了解というものである。貴族というのもなかなかに面倒そうなものだね。
「せめて何かご褒美でもあればはかどると思うけど仕方ない、頑張るかぁー」
『報酬は艦隊司令として平均的な相場です』
「違うそうじゃない。ほら、男にとってのご褒美って言ってわかるかな? レミがハグしてくれるとか、頭撫でさせてもらうとか、そういうの」
『現状、レミ様が鈴さんに好意を抱いている確率は94%程度です』
「what?」
いや、どゆこと? 僕に好意を抱く要素がどこに……あ、恋愛的な意味じゃなくて、普通に良い印象を持っているってことか。
「なるほど。じゃあ嫌われないようにするかな」
とは言っても、どうすればいいのかねー。
『はい。まず目下の行動ですが――』
「鈴君、か」
まさか、好きな人が転生先に来るなんて思いもよらなかった。
たぶんあちらは気づいていない。私が前世、音楽部で鈴君といつも一緒にいた私だという事を。
『人工知能である私には、前世や異世界転移というものは理解が及びません。しかし鈴さんもレミ様の事は悪くは思っていないようです』
「ならよかったわね。下着姿とか晒したら襲ってくれるかしらね?」
『流石に貴族のご令嬢に手を出すことの危険性は理解していると考えます。そもそも通常の活動においてそのような事態にはなりえないでしょう』
「わかってないわね、こういうのはわざと起こすものよ。
例えば、今日はこの屋敷に一泊させるつもりよ。そこで彼の目の前で脱いでとかね」
『複数の意味で危険かと思われますが』
「大丈夫よ」
そう、一応この屋敷には今日明日は私と鈴君しかいない状態になる。
出会ってそうそう何か起こると考えているわけでもないけど、チャンスは積極的に生かしていかないと。
と、そんな事を考えていると。
コンコンッ ガチャッ
「レミ……さん? えっと、今日僕は泊っていいって言われたんだけど、食料とか持ってきてないよ? って言ったら、直接話せって言われたんだけど」
「あら、別に二人きりの時は呼び捨てで構わないわよ? あと、食料と寝床に関しては心配いらないわ。この世界の食べ物事情について教えてあげるわよ」
「え、いいの? 貴族の女性が、どこの馬の骨とも知らない男と二人っきりで一つ屋根の下とか」
あー、それね。たしかにバレると何か言われそうだし、あまりよくはない。
けど、こういうのはばれなければいいのよ、バレなければ。
「いいのよ、私の動きをいちいち事細かに監視している人は今のところ居ないわ。
私たちから言いふらしたりしなければ問題にはならないわよ」
「つまりばれたら問題と、なるほど。まあ僕としては、こんな綺麗な女の子と一緒にいられるなら文句はないけどね」
「あら、ありがとう」
「まあ警備ロボットもいるし、早々間違いは起こらないか」
「あ、この警備ロボットたちは夜は外で警戒するわよ。家の中にはいなくなるわ」
「ゑ゛?」
あ、フリーズした。
「襲いたいなら、絶好のチャンスという訳ね。あなたは私を襲うのかしら?」
「……あ、うん。何もなければ襲わないと思うけど、レミが誘ってきたりしたら遠慮なくヤっちゃうよ? まあシチュエーションからして誘っているとしか思えないような感じではあるけど」
「そう。なら勝負下着を準備しないとね」
「オイ話聞いてた? いや襲われたいのか」
「想像にお任せするわ」
私だって女の子、男の子にリードしてもらいたいと思う事もある。
それに、彼……鈴君は、私の好きだった鈴君と変わっていないように思える。これなら、むしろ襲ってほしいかもしれない、なんて。
でも自分から襲ってくださいなんて言いにくいから、襲ってもらえるように誘導している。ふふ、今夜が楽しみね。
「そうだ、レミを船に監禁して性奴隷に……」
私はその言葉を聞き逃さなかった。あれ、鈴君は意外と危険人物だった?