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02 艦内探索と初遭遇からの連行

 僕がゲーム内で使っていたこの船は中型機、あるいは重戦闘機に分類される船である。Wikiでは戦闘多目的船になっていたな。

 セッティング次第でゴリゴリの戦闘艦とも渡り合えて、汎用性も高いという、よく言えば万能型、悪く言えば器用貧乏なタイプの船である。


 僕のセッティング? 輸送もできる戦闘艦、という感じか。


 ペイロードは100トン前後と、カーゴに特化させた場合の半分程度となっている。

 その分戦闘で役に立ちそうなものは一通り備えている。ドローンコントローラーとか、モジュール修理キットとか。

 戦闘能力はどちらかと言えば高い方、程度。


 まあそんな感じなので、船内はある程度広い空間があり、ある程度はごちゃっとした空間があり、みたいな感じだった。


 で、目的の食料や飲み物はと言うと……普通にパイロット用の居住区にあったよね。

 と言っても、個人荷物用の倉庫に積み込まれていた分だけなのでそれほど多くはない……と思いかけてよく見てみると、一食分が非常に小さいので結構あったわ。


 一食分、5センチ四方の固形栄養食がおよそ300食分。これだけで3か月ほど生きられる。

 一食分、クーリッシュのようなパックに入った液体栄養食が90食分。ちょうど1か月分である。


 さらにコックピット内の非常用パックの中にも半月分くらいの固形栄養食があった。

 とは言っても、これは非常用なので食べるつもりはない。……消費期限とかあるなら話は別だけど、調べてみたところ10年は持つらしいのでしばらくこのままだろう。


 なお、いろいろな味があった。が、食べてみたところそこまで特別美味しいものでもなかった。むしろ味が濃い目で、ちょっと遠慮したくなるようなものだね。


 飲み水? なんかウォーターサーバーっぽいものがあったよ。

 とは言っても無重力の中でコップに水を注いで、なんてできないので飲み物用パックに水を入れる装置だけどね。水の残量はトン単位であるので多分大丈夫だろう。


 さて、という感じで飲み水と食料の問題は心配いらない。少なくとも3か月くらいここで情報収集をしたり、のんびりくつろいだりして過ごすことも可能である。


 「んっ……くあぁー、寝っ転がりたい」


 うん、寝っ転がりたい、猛烈に。お布団が恋しい。

 というのも、情報収集から船内の探索、食料の集計までぶっ通しでやっているのだ、そりゃ眠くもなる。


 無重力空間での睡眠方法は、オフトンごと身体を宇宙船内に縛り付けるというもの。

 これは寝ている間にふよふよ漂って変なスイッチを押さないためであり、地球の国際宇宙ステーションなんかでもこうして寝ていると見たことがある。

 時代は移れど睡眠方法は同じなんだな、なんて考える。






 「ふあぁ~……」


 おはよう。地球にいたころのようにアラームに起こされることもなく、快適な睡眠をたっぷりと取った僕は思考すっきり全快である。

 でもトイレ行きたい。


 この船のトイレは……うん、バキューム式だね。掃除機のように吸い込むタイプ。

 無重力なのでやりにくいけど、まあ仕方がない。ちな、排泄物は自動処理してくれるようで、詰まったり故障したりしなければ人間が手作業する必要はないらしい。よかった。


 無事にトイレも使えてスッキリしたので、ちゃんと手を洗って……とは思ったものの、手を洗う場所がない。まあ当然か。

 濡れタオル……いや、使い捨てのアルコールティッシュがあるな。これを使えってことか。

 ゴミはゴミ箱ではなく、コックピットの後方、寝袋の隣に収納してある袋に入れる。さーて、次は何しようかなと――


 『こちらレア家領地軍、レミ・レア様直轄艦隊である。貴艦にはレミ様の招集がかかっている。ご同行を願う』


 アレェなんか通信が入ってる!? しかも領地軍!?

 コックピットのキャノピーを覗き込んでみると、そこにはコルベット艦の姿があった。Oh……


 『繰り返す、こちら――』

 「あーあー、こちらしらね、船長の鈴です。えーと、ええーと?」


 やっべぇ慌てて通信開いたけど、なんていえばいいんだ!?


 『状況をご説明します。あなた様はこの宙域の領主様の3女であらせられる、レミ・レア様より直接招集がかけられました。

 もちろん拒否権はございますが、悪いようにはしないと伝言を預かっておりますので、ここはご同行頂いた方が賢明かと思われます』


 思いっきり厄介ごとフラグだよねこれ!?

 いや、当たり前と言えば当たり前の話かな? こんなところに見知らぬ船が唐突に表れているんだから怪しまれて当然だろう。多分拒否したらさらに怪しまれるだろう。


 もちろん、ここで拒否してとっとと別の勢力圏に行ってもいい。けど、僕知ってるもん。大抵どこへ行っても怪しまれるんだよね、この船種はこの世界にないみたいだからね、シカタガナイネ。


 ゲームの世界と技術形態や技術開発度などが同じなのに船や星、勢力などは全く違うこの世界。ここで逃げてもいつかはぶつかる問題である。

 であれば、この場は同行しておいた方が賢明か? うーん。まあとりあえず。


 「了解しました。そちらに同行します」

 『ありがとうございます。それではスーパークルーズにて惑星に向かいますので、航法システムの同期をお願いします』

 「了解」


 左上のホログラムパネルを展開させ、目の前のコルベット艦とクルーズ同期設定……よし。


 「同期設定が完了しました」

 『では、今からスーパークルーズに移行できますか?』

 「はい、大丈夫です」

 『それでは、今からスーパークルーズに移行します。ついてきてください』


 そう言うと、コルベット艦が回頭を始めた。

 この世界の軍艦がどれほどの機動性があるのかと見守っていたけど、結構早いね。ゲームにあったコルベット艦より少々高めの機動性があるとみていいだろう。


 と、見守って数秒後、バシュンッ! という音と共に消え去った。僕も船を同じ方向に回頭させ、スーパークルーズのチャージを開始する。


 なお、他の船の音はコックピットのスピーカーから出されている。

 宇宙空間は真空なので音が伝わらないが、疑似的にスピーカーから音を再現することで、戦闘時には視覚のみならず音でも状況把握ができるようになっている。

 当然キャノピーが割れるとコックピット内も真空になり、音がなくなる。そんな事態にはしたくないけどね。


 こうして、僕は領地軍に連行されていくのであった。

 一応任意同行だけど、気分は犯罪者である。いや本当に、このまま拘留とかされないよね? 大丈夫だよね?

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