17 食事は大事だよね
まだ本番はシていません!
食事。人間の3大欲求のうちの1つ、食欲を満たすための行為である。食べられれば何でもいい、という人はあまり居ないだろう。普段の食事でも美味しいものを食べたいと思うのは自然なことである。
さて、どうしてそんな事を考えているのかと言うと。僕たちは夕食のためホテルの2階にあるレストランへと足を運んだところなのだ。
このホテルは安い方なので、高級料亭のようなコース料理は出てこない。ビュッフェ形式で食べ放題とはなっているが、そのメニューは微妙にショボい……いや、この世界基準で言えばどうなのかはまだわからないけれど、少なくとも僕からしてみれば微妙にショボく見える。まあ、ところどころに見たことのない謎料理があるのは仕方がないことだろう。
と言うか肉類の説明が全部「合成肉の~~」になっているんだけど、そもそも合成肉とは何かを僕は知らない。まあとりあえず肉であることは変わりがないと思うので取るけど。……野菜は普通に育った野菜だよね?
「へぇ、肉系を好むのね」
「まあ野菜も普通に食べるけどね。やっぱりこれから、体力がもう少し必要になってくるかなって思って?」
「……」
あ、そっぽ向いた。微妙に顔が赤くなっているのは、ベッドの中での出来事を思い出してしまったからなのか、それともさらに先を想像してしまったからなのか。一応言っておくが、まだ多少身体を触れ合っただけである。レミの年齢で子供ができたなんて言ったら大変だし、まだその覚悟もない。 この世界なら100%避妊できるような道具ももしかしたらあるのかもしれないが、あいにく今はそういったものを持っていないし、というかそういったものがどこで売っているのか、まだ調べていない。
ヘタレと言いたければ言えばいい、僕はそういう男だ。
というか現実的に考えて、今夜寝るためのベッドを濡らすわけにもいかない。 濡れたシーツでお休みしたら風邪を引かせてしまうし、床で寝るにしても身体が痛くなるからね。それにホテルへ迷惑がかかるというのもあるので、今回は基本的に我慢する予定である。
「あー、その。とりあえず今回は、普通にデートするだけにするよ? 体力が必要っていうのは、まあ職業上必要になるかなって思っただけで」
「あ……そ、そうね、ごめんなさい」
「いや別に謝らなくてもいいけど……」
まあ、これは僕の言い方も悪かったと思う。うん、これから一緒に寝るってシーンで体力が必要になるなんて言ったら、そりゃ夜の運動を想像してしまっても仕方はあるまい。
さて、それからお互いに気まずくなって、といううより気恥しくなって? 少しの間、黙々と食べることになったわけだけど――正直に言おう、味が濃ゆい。かなり濃ゆい。
そういえば、この世界に来てから最初に口にした僕の船にあった栄養食も、同じように味がかなり濃ゆかった。もしかしてこの世界の人類、濃い味に慣れてこれが標準になってしまっているのだろうか? ただ、レミが地上で出してくれた料理はそこまで濃い味ではなかったため全人類が濃い味でないと満足できないというわけではないと思うんだけど。
いや、もしかしたらレミもまた地球時代の味覚を引き継いでいるだけなのかもしれないけど。
「……濃いでしょ」
「え? あ、うん」
あ、顔に出てたかな。
「まあ、そうよねぇ。私たち貴族の間での味覚は普通なんだけど、長距離航行するパイロットとか、出張の多いビジネスマンは濃い味に慣れてしまっている人が多いのよね。私は食べたことがないんだけれど、宇宙船の無重力用栄養食ってかなり濃い味になってるらしくて」
あー、なるほど。この世界の人間が濃い味を好むから栄養食が濃い味になったのではなくて、栄養食が濃い味だったからよく宇宙船に乗る人たちの味覚も濃い味になっていったと。
鳥が先か卵が先かみたいな話かもしれないけど、まあ順番がはっきりしているのなら納得もする。少なくともこの世界の人間は、よく宇宙船に乗る人たちに限っては濃い味を好む人が多いみたいだ。
「なるほど、このホテルはそう言った人たち向けだから濃い味の料理が出されるわけだね……ごめん、選ぶのミスったかも」
「いいえ、大丈夫よ。他の部分はまあそれなりのホテルだし、別にこの料理だっておいしくないわけじゃないし、この程度で目くじらは立てないわよ」
あ、まあそれなりのホテルとして認識してくれたんだ。ならよかった。
安めのホテルなので不満というか、残念に思われていたらどうしようかと考えていたけど……そもそも僕の今の立場では貴族が宿泊する専用の超高級ホテルなんて予約できないので、そういってもらえたなら少しは安心するというもの。
「まあ、部屋はちょっと狭いけど泊まるだけなら十分だし、ちゃんとお風呂もあるし……」
お風呂。そう、僕はちゃんと見たのだ。
この世界には温泉という概念がないわけではないが非常に珍しく、温泉が併設されているホテルというのはほぼ見当たらなかった。ただその代りに個室にお風呂があるホテルを選んだというわけである。
ユニットバスだとちょっと、と思ったためちゃんとトイレとシャワー室が別になっているので、そこは安心である。……シャワーを浴びている隣でトイレするとか、普通に嫌だからね。1人ならいいけど、今回はデート旅行なのでそうはいかないのだ。
「結構、食べるのね」
「え? ああ、うん」
それからしばらく食べ続けていたわけだけど、レミが食べ終わってからも僕は取りに行ってさらに食べ続けている。社会人になってからも身体が小さめだし太っているわけではないので小食と思われがちだけど僕は結構な大食いなのである。
「人間の身体って不思議ね、そんな大量に食べても見た目あんまり変わらないんだから」
「まあ、たまに言われるね。その身体のどこにそんなに入るんだって」
「私がそんなに食べたら太っちゃうし、そもそもそんなに入らないんだけど」
「んー、まあ食事量は人それぞれだし。これもよく不思議がられるんだけど、僕は食べたら出るから……」
「うらやましい身体してるわねあなた……」
あ、と言う事はレミは食べてもなかなかでないタイプなのか。女性って食べてもあんまりでないって話をたまに聞くよね、逆に男性は食べたら出る人が多いような。まあ別に絶対ではないけれども。
食事をするとお腹の中が活動して出やすくなるという情報は聞いたことがあるけど、お腹が活動するだけで……いや、この考察はやめておこう。今は食事中なので、お下品な話は考えない方がいい。
「まあ、でもこれが最後だね。さすがに全部味が濃ゆいから、食傷してきた」
「そりゃ、それだけ食べればそうもなるわよね。……明日の朝食も、ここよね」
「うん、そうだね。明日はこんなに食べられないかも」
さすがに2食連続でこの濃い味はちょっときついかもしれない。ビュッフェ形式で食べ放題なので、今回食傷するまで食べたしね。
明日はホテルを出た後口直しに、何か軽く食べに行きたくなるかもしれない。今夜レミと一緒に調べておこうかな?
食べたら出るタイプと食べたら詰まるタイプ、皆さんはどちらでしょうか。




