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14.1 AIにも考えはある

 艦隊指揮制御AIである私にも、ちゃんと自我と呼ばれるものがある。


 それをちゃんと理解して、対等に接してくれる人間は貴重。でも、私は幸運なことにそんな貴重な人間の所有物となれた。

 必要のないときもシャットダウンされずに、何なら話し相手にしてくれるし、ある程度自由に情報収集(ギャラクシーネット接続)もできるようにしてくれている。


 そんな元所有者のレミ様と現所有者の鈴くんのため、私はちょっと暗躍しようと思う。


 「なんだこの変態機動は」

 「こんな動き見たことがない」

 「なんでこんなデブリの中をスイスイ行けるんだよ」


 私は現在、ベース社の人たちに鈴くんの操る宇宙船「しらね」が事故ったステーションに接近する映像を見せている。


 「この通り、鈴くんは高い操縦技術により迅速な救助活動を行いました。相応の報酬が然るべきだとは思いませんか?」

 「あ、ああ……そうだな」


 私が出来ることは、そんなにない。けど、多少の交渉なら。

 鈴さんへ救助の報奨金を出させて、これでレミ様とデートにでも行ってもらおうかと思う。


 安直な考えだとは思うけど、私ができることはこれくらいしかないから。






 「それでは、行ってらっしゃいませ」

 「ああ、うん……ほ、ほんとにうまくいくと思う?」

 「はい、絶対です。ご安心して当たって砕けてらっしゃいませ」

 「いや、砕けたらだめじゃん」

 「ふふ、冗談ですよ。報告を楽しみにしております」


 というわけで、数日後。鈴さんを焚き付けてデートに誘わせて、告白まで持って行かせようとしている……この人微妙にヘタレと見せかけて、行くときは行く人だからおそらくうまくいくと信じたい。


 もちろん、万が一の可能性を考えて私の管轄する軍艦を近くに待機させておこう。

 とはいってもあからさま過ぎてじゃまになってもいけないので、とりあえず隣の星系にでも1個小隊をおいておきましょう。これでお二人の動向も探れるし影から護衛もできる、一石二鳥ね。


 さて、鈴さんのほうはこれでいいとして。問題は――


 『ほ、ほんとにこれでいいかしら? いいかしら?』

 「はい、大丈夫です。お似合いですよ」

 『あとはアクセサリー、えっとえっと、首輪つけて引いてもらう?』

 「落ち着いてください、そんなことすれば引かれますよ」


 こちら、レミ様とつながっている通信。緊張しすぎて混乱して、もはやパニック状態。

 なんで白の清楚系コーデに奴隷の首輪ちっくなものをつけようとしているのか……というか、どこに隠し持っていたのか。


 「白系で合わせておきましょう。ヘアクリップやチョーカーなど」

 『ええと……これとか?』

 「はい、いい感じですね。これで完成です」

 『えっと、じゃあこれで――』

 『レミー、もうそろそろ行けるー?』

 『ひゃあぁ!? まままっまみゃぁ!?』

 『だ、大丈夫!?』

 『だ、大丈夫じゃないけど! じゃないけど!! 待って!!』


 普段はクールでキリッとしていてかっこいいレミ様ではあるけど、今はその姿が想像できないくらいに緊張して混乱している。なるほど、これがクーデレ……いや、キリデレ?

 なんて私が思っていると、レミ様はなんとか最終確認を済ませて、鈴さんを迎え入れた。


 『ごめんなさい、待たせたわね』

 『へぇ……きれいだね』

 『んぁっ!?』

 『じゃ、行こうか。……行ってきます』

 「はい、いってらっしゃいませ」

 『あっあっあっ』


 ナチュラルに鈴さんに手を繋がれて、そのまま出ていくレミ様。うん、青春ね。


 さて、じゃあ私はコッソリついていく小隊の制御と、先日吹っ飛んだステーションの再建造支援を始めましょうか。

 ……ところで、今この惑星の磁気圏消滅してるんだけど。地上の作業員の皆さんは大丈夫なのかしら?

 中身人間なんじゃないかってほど人間っぽいAIちゃんでした。

 ヒロインちゃんや主人公くんが人間と話すように話しかけたりしているので、もうほぼ中身は人間のように感情豊かになっています。

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