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10 地上基地

 「今のところは順調ね」

 『データに異常値なし。なにも問題ありません』


 巡洋艦の人工重力区画にある指令室。

 戦闘用ではなく、作業用の指令室である。ここは人工重力があり、地上の司令部のように座席にゆったり座って指揮ができるのだ。


 で、今見ているのはベース社の地上基地が大気圏突入しているところ。

 新型基地で、従来の現地組み立て型ではなく、基地が丸ごと大気圏突入してパラシュート降下するという代物である。


 現地組み立てに対する丸ごと突入型の利点は、わざわざ資材を下ろして組み立てる時間が必要ない事。

 既製品をPONと突入させればいいだけなので、基地設営までの作業員の寝床の確保とかも必要ないし、基地に資材が入っているのですぐに別の作業に入れること。


 逆にデメリットとしては、大気圏突入装備の為に基地の内部空間が圧迫されること。

 つまり、見た目ほど物資も人員も入れられなくなるのだ。そのため、大規模運用には基地がいくつも必要になってしまう。これはこれでコスパが悪い。


 まあ、大規模運用には現地組み立て型、小規模運用なら基地ごと突入型がいいって感じかな。あるいは今回のように、まず突入型基地で先行、あとから現地組み立てにより拡張っていうのが合理的かもしれない。


 『圧縮断熱が収まりました。全ての機体でパラシュートが正常に展開しています。これ以降で問題が発生することはないでしょう』

 「よかった。それじゃあ、僕らは正直やることないけど、どうする?」

 「そうね、しらね への物資搬入状況は?」

 『既に完了しています』

 「なら少し早いけど、もう行きましょうか」


 そう言って、指令室を出て行こうとするレミ。いや待て。


 「行きましょうかって、レミも一緒に行くつもりじゃないよね?」

 「あら、いけないかしら? サブシートあるし、一緒に行けるわよね?」


 まじか。

 今から追加の物資を満載した僕の船も地表に向かい、物資をお届けする予定になっているんだけど、どうやらレミも一緒に行きたいらしい。


 「貴族様が下りてきたとなれば、現場が混乱しない?」

 「ま、大丈夫でしょ。私は気にしないわよ」

 「現場の作業員さんたちが気にすると思うよ」


 そう、現場の下っ端は上のお偉方が現場に来るだけで緊張するものなのだ。僕も日本では会社員で、平社員やってたからよく分かる。

 まあ、うちの会社は割とフランクに話してくれる人ばかりだったけどね。


 『おそらく突然の訪問により、現場の人間は混乱すると思われます。行くのであれば、事前に連絡しておく方がいいかと』

 「事前に連絡しても、それはそれであたふたしそうだけど……突然現れるよりはマシかー。レミ、どうしても行きたい?」

 「……だめ?」


 あ、それずるい。そんな上目使いされると断りにくいじゃないか。


 「仕方ない、いいよ。ちゃんと今から連絡してね」

 「はーい」


 普段はクールですまし顔から変化がないのに、こういう時は嬉しそうにするんだね……あれ、僕ってチョロい? ……考えないようにしておこう。


 『やはり男性は、女性の上目遣いには弱いのですね』

 「あー、まー、うん。ソウダネ」


 なんて返せばいいんだろうか?






なんて事があってから数時間後。

僕とレミはめでたくしらねに乗って、地上基地へと向かっている。


僕の船はゲームのDLCで追加された船であり、惑星に降下する能力も備えている。

と言っても、普通に大気圏突入する訳では無い。スーパークルーズモードのま地表上空20キロくらいにドロップアウト、そのままグライドして急速降下しつつ減速するというものである。


で、今。


「3,2,1!」


ドオオォォォン、という空間共振波を出しながら、基地上空にドロップアウト。ここからグライドして基地へ向かっていく。


 「結構重力を感じるわね」

 「惑星の重力もあるけど、減速もしてるからね。地上付近でかなりの減速Gがかかるからあんまりしゃべらない方がいいよ」


 そう言いつつ、操縦桿を少し引いて基地上空で減速完了するように調整する。


 これ初めての時には垂直降下しようとして強制減速がかかったんだよなー……しっかり安全装置が組み込まれているので、操縦を間違えても地表に激突するようなことはない。

 ただ、安全装置の設定が結構シビアなので、ちゃんと降下角度と速度に気を使わなければ強制減速がかかって到着にすごい時間がかかるようになる。


 まあこの世界の船はスーパークルーズのまま惑星突入とかできないみたいなので、むしろこの船が異常なだけなんだけどね。 技術の進歩でそのうち可能な船も出てくるのかね?


 ブゥゥオオオォォォン……


 奇妙なエンジン音を出しながら、狙い通り地表から10キロの地点で減速完了。シートベルトがなかったら吹っ飛ぶようなGなので、荷物の固定は必須である。

 レミは……ベルト部分をさすっている。あー、そりゃ痛いよね。


 「大丈夫?」

 「ちょっと痛くなったけど、問題ないわ」

 「ん、じゃあこれからその辺の適当な場所に着陸するから、着陸完了までちゃんとベルト付けておいてねー」

 「わかったわ」


 そんなこんなで、僕の船は中型船なのでシャトル用ポートには入らないのでその辺の地表に着陸する。

 あ、基地職員が窓から見てるね。そもそもこの世界、惑星に降りるのは専用シャトルが主流で、宇宙船ごと降りるなんてめったにないから珍しいんだろうね。


 なんか普通の宇宙船は重力圏突入に対応できないらしい。理由は調べたけどよく分からなかった。


 ガシャンッ

 ヒュウウウゥゥゥゥン……


 よし、着陸完了、エンジン低出力モード。ちな、音声ガイダンスと障害物警報はオフにしてある。アレうるさいだけで邪魔なんだよねー、船の感覚をつかむまでは必須かもだけど。


 それじゃ、宇宙服着て降りましょうかね。

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