ゲームの説明書はクリア後に読むタイプ #4
定時更新にしたいのですがなかなか…(´ω`;)
複数の得体の知れない物を見る視線と大きく口を開きながら固まるという何とも情けない姿をしている美女、そしてなぜかそれを見てニヤついている目付きの悪い男性がいるなか、勇者達のおまけに召喚された中年…今は中学生位の見た目になっている設楽碧は自分の見に起きた事が理解出来ず呆然としていた。
「金と服を持って即刻立ち去れ」
物語は冒頭へと戻る。
今の状況はまる出s…丸腰だった俺は衣類とナイフ、そしてこちらの世界の通貨価値はまだよくわからないが金貨を5枚程渡され大臣と呼ばれていた顔色の悪い男から放逐されそうになった所をセーラー服の似合う女子に庇われている所だ。
「だが各国との協定により召喚される勇者は5人と決まっている」
王様?の話によると今回の勇者召喚は各国との細かい制約上に成り立っていて6人目として俺が召喚されたことはその規約上かなりマズイ事らしい。
即処刑なんて事にはならなそうだから少しホッとしたけれど、正直この先どうやって生きて行けばいいか不安だ。
40年以上生きていたとしてそれなりに人生経験があるとしても、俺は普通の人間でしかない。異世界にトリップした後どうするかすぐに思い付くようなら今頃もとの世界で大物になっていただろう。
「別にコイツ勇者じゃねーんだから俺らの所でこきつかえばよくね?」
軽い頭の悪そうな声が響く。
今口を開いたのは勇者として召喚された5人組の内の1人糸のように細い目、汚い印象をうけるくすんだ茶色に染めらた頭髪、だらしなく学生服を着崩したシンヤと呼ばれていた男だった。
嫌いなタイプの人間だったがコレの言ってる事に
は俺がこの先、どう生きていくか悩んでいる理由の一部を含んでいた。
この世界には職業とステータス、レベルという概念が存在する。
まさにゲームの用な話だがこの世界においてはそこまで自由度のあるシステムでは無い。
職業は賃金を得るためにする労働とは別にその人物本来の性質の事を表す。
つまり職業はゲームのように好きな物へ転職することは出来ないのだ。
だが普通に一般人として生活する分には職業はそこまで意識することはない、ステータスの伸びや覚えられるスキルは確かに違いはあるがそもそも普通に生活していたらレベルが上がることはないのだ。
レベルを上げるにはその職業に合った行動をするかこの世界に蔓延る魔物や他人と戦う必要がある。その為商人や鍛冶屋等の例外を除いて戦闘を行うことがない潜在的に戦士や剣士の職業を持った一般人はレベルをほとんど上げる事なく生涯を終える。
ここまで言ったら察していただけるとありがたい、5人組の方はすでにこの世界の英雄達を遥かに越えるステータスと強力なスキルに勇者と+αで複数の職業をもっているらしい。
この世界に来た時にステータスを表示する聖刻石という手のひらサイズのプレートを渡された後、いい年した身分の高そうな男達が5人組のプレートを見る度に。
「なんと規格外のステータスなんだ!」「職業を複数持ってると‼?」「何だこの見たことの無いスキルは!」
…とひっきりなしに騒いでいた。
俺はふと自分のプレートに目を落とす。
聖刻石
設楽碧lv1
職業旅人
筋力 10 スキル
技量 14 料理lv2
体力 10 格闘初級
魔力 5 剣lv1
俊敏 10 自動翻訳
知能 15
運 6
魅力 10
これを召喚国…グシオンというらしいが彼等に伝えると何とも言えない表情になっていた。
話によるとスキルは自動翻訳は多少珍しいがそれ以外のスキルもステータスも一般人レベルの物だという。そして肝心の職業はというと…
「旅人というのはほぼ全てのスキルや魔法を習得できる珍しい職業ではあるのだがスキルの習得には一般的な職業より多くの習熟が必要なうえそのスキル自体にも下方修正が付きステータスの上がりかたもそこまでよくないし魔法を行使する際にも普通より多くの魔力を要求される。様々なスキルを覚える分最高の雑用係とも呼ばれているな」
うん、長々と説明ありがとう顔色の悪い大臣さんついでにその人を小馬鹿にした顔もやめていただけやがれませんか?。
それを聞いたチャラチャラしたこの男が俺の意見も聞かず自分達の都合のいいようにこき使おうとしているのだ。
「いや…人の話も聞かず何言ってるの?バカなの?」
俺言葉を聞いたシンヤ少年は一瞬ぽかんとした後顔を真っ赤にして叫ぶ。
「あぁ?糞ガキが今なんつった!‼?てめぇみたいな巻き込まれただけの役立たずを勇者の俺が使ってやろうって言ってんのに何が不満なんだ!」
シンヤ少年を中心に謎のプレッシャーが渦巻いている。
俺は思わず本音を言ってしまったことに後悔する。40年以上日本人をやってその辺は自制利いていると思っていたのに…やはり14歳の体に考え方が引っ張られているのだろうか。
元の世界ではともかくこの世界でシンヤ少年は紛れもない化物なのだ。それこそ一般人レベルと言われてしまった俺なんかはすぐに殺されてしまうだろう。
俺は第2の人生のあっけない幕切れを覚悟すると…。
「シンヤ、そこまでにしてやれ」
シンヤ少年が同じ型の学生服を着た少年に諭されていた。
「なんでこんなガキ庇うんだよユウト!こんな奴奴隷にしちまおうぜ」
ユウトと呼ばれた少年に諭されてもなおシンヤ少年の暴言は止まらない。
「奴隷とか世界を救う勇者である僕達が言うべきことじゃないだろう?」
おぉ!ちょっと臭いが良いこと言ったぞユウト少年!君なら立派な勇者になれるだろう!ヴィジュアル的にも申し分ないな爆発しろ!。
ユウトはシンヤと違って学生服をきっちり崩す事なく着て頭髪も規定の黒だった。そして顔はどこかテレビで見たような整った所謂イケメンであった。
「奴隷じゃなくてちゃんと仲間として共に行くべきだ」
oh…ぶるーたすお前もか…
このユウト少年も根っこは善人なのだろうが自分のご都合主義で物を考えるタイプのようだ。
「…へっ、ユウトには叶わねぇな」
どこか恥ずかしそうなそれでいて満足そうな雰囲気を先ほどまでオコだったシンヤ少年が醸し出していた。
勇者御一考である俺を庇ったセーラー服の少女も安心したような顔を、同じくセーラー服を着たどこかツンとした雰囲気の背の高い少女もまったくしょうがないわね、とでも言いたげな表情をしていた。五人組最後の一人である背の低い(といっても14歳の俺と同じ位)ウサギのフードがついたパーカーを着た少女は終始おろおろしていたが…。
王様や大臣のほうを見ると王様は「ほぅ…」と眩しい物を見るような視線でユウト少年を見ていたが大臣はなぜか逆に苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「王よっ!どうかこの俺達の召喚に巻き込まれてしまった少年の同行をお許し下さい!彼と僕達は必ず魔王を討伐して世界を救って見せましょう!」
どこか芝居掛かった仕草でユウト少年は王に高らかと宣言する。
「貴様っ王に向かって無礼であろ…「よい」」
大臣の言葉は王本人によって遮られる。
「今日召喚された勇者は五人だ」
「は?」
王様の言葉に大臣と俺を含めた全員がぽかんとする。
「そして勇者一行には我グシオン王が選んだ荷物持を同行させよう‼」
王はニヤリと笑ってユウト少年を見る、意味を理解したユウト少年も王へと笑みを返しバサっと学生服の裾をはためかせながら振り返り俺に手を差し伸べる。
「さぁ!共に戦いこの世界の平和を取り戻そうではないか!」
キラッと白い歯を輝かせながらイケメンスマイルを炸裂させるユウト少年。
周りの人間は全て、シンヤ少年でさえもまるでこれからの輝かしい未来を確信するようにユウト少年と俺を見つめていた。
俺はフッと小さく優しい笑みを作りユウトを見つめ返しこう答える。
「お断りします」
読んでいただきとても嬉しいです。ヽ(・∀・ヽ)