ゲームの説明書はクリア後に読むタイプ
読んでいただいてとても嬉しいです(´ω`)
「金と服を持って即刻立ち去れ」
顔色の悪い痩せた男が俺に冷たい目を向けたままぴしゃりといい放つ。
壁際にズラリと立っている甲冑姿の男達や先程の痩せた男の周りにわらわらと居る華美な装飾の付いた服装をしている男女も喋る事はなかったがねばついた汚物を見るような視線だけは俺を捉えていた。
この場で俺をそういう目で見ていないのは一番高い位置にあるまさに玉座と呼ぶに相応しい場所に佇んでいる目付きは鋭いがどこか人好きのする雰囲気の老人と、俺のすぐ近くにいる5人組のうちの4名だけであった。…つまり1人はしっかりと俺にごみを見るような視線を送っていた。
「ちょっと待って!それはいくらなんでもあんまりだわ‼」
5人組の内のセーラー服に身を包んだ少女が叫ぶ。
「私達よりもステータスが劣っていたりするだけで…」
「巻き込まれただけのこの子を放り出すなんて!」
…俺こと設楽碧は40年以上の歳を重ねてきた。少なくともこのセーラー服の似合う高校生位の少女にこの子呼ばわりされる筋合いは無いはずだ。
だが実際に遥か年下の彼女から子供扱いを受けている。
理由は簡単だ。俺が子供になっているからだ。
何を言ってるか解らない?安心してほしい、俺も解らない。だが現に手荒れでがさつき、さらに皮膚が硬くゴツゴツしていた手はスベスベでサイズも小さくなり、激しい運動が出来なくなった弊害でたるみ、吹き出物が増えてきたりした顔面の肌はつるんと湯上がり卵肌に。若干薄くなってきた筈の頭髪は黒々と茂っており。身長も大分縮んでいた。
俺がこうなってしまい、何人もの熱い視線を注がれるようになった原因は、俺がまだ中年の体をもっていて深夜のベンチで意識を失った後を見ていただければわかると思う。
卍時は少々遡る卍
「あれ…俺どうしたんだっけ?」
目を覚ますと見渡す限り真っ白な部屋に寝そべっていた。
ぼーっと、頭の中に霧がかかったような気分だったが少しずつ意識がはっきりしてゆく。
「あぁ!!!仕事!今何時だ!?」
『目覚めて第一声がそれか』
会社に遅刻するのではと顔を真っ青にしていた碧は頭の中に直接響いてくる男か女かよく解らない声を聞いてさらに混乱する。
『まあ落ち着けって』
「起きろ俺!!夢なんか見てる場合じゃねぇぞ!明日はメーカーとの打ち合わせがあるんだ寝坊なんて冗談じゃない‼」
『だから大丈夫だってお前が明日の打ち合わせに参加することもましてや出勤時間を気にすることはもう無いんだから』
「…何が言いたいんだ?」
意識が無くなる前に気づいた体の異変から思い付いた1つの可能性が碧の中で大きくなっていくのを感じた。
そんなわけが無い、ありえないと必死にそれを否定するがこの真っ白な部屋や頭に直接響く声など非現実的な状況を目の当たりにした事で可能性が確信に変っていった。だが未だに碧の頭は理解することを拒んでいた。
が、頭に響く声の主はあっさりと真実を告げる。
『お前はもう死んでるからな、過労死らしいぞ?』
俺、設楽碧42歳は死んだらしい。
今日はもう一話投稿します。 まだ小説書きとしては至らない点も多いため誤字や読みづらい部分があれば指摘していただけると嬉しいです。