タイムマシン?眉唾でしょう。
「出来たぞぉぉおおおっ!!」
じいちゃんの声だ。
『なんだよ、じいちゃん。そんなにでかい声出して。』
そう言ってじいちゃんの研究室を覗くと、白い煙が立ち込めていた。
俺の経験上、こういう状況のときは大抵ろくでもないものを発明している。
「おお、レオン!わしはやっと長年の夢を叶えたぞ!」
『はぁ?毎回同じようなこと言ってんじゃん。』
「今回は今までと違うんじゃ!わしの夢どころか人類の夢じゃぞ!!」
意味がわからない。
そもそもそんなものを作れるなら政府にでもお金を出してもらえばよかったじゃないか。毎度毎度、資金だなんだで頭を痛めていたくせに。
『で、何が出来たの。』
「おお!そうじゃな…聞いて驚け!」
『はいはい』
「タイムマシンじゃ!!」
『はいは………………はい?』
今、物凄くファンタジーな名詞が聞こえたんだが。
「じゃから!タイムマシンじゃて!」
『じいちゃん、俺、頭痛くなってきたよ』
そろそろじいちゃんがボケてきたって母さんに連絡入れないと…。
「信じとらんな?」
『そもそも、そんな物が作れるなら政府に資金を出してもらえばよかっただろ。』
「馬鹿じゃのう…。悪用しようと思う者がおらんとも限らんじゃろう」
うーん、確かにそうなのかもしれないが。
『ふーん、本物なの?』
そう聞くとじいちゃんはペンダントのような物を差し出してきた。
「本体にその時代の何かをセットして起動すると、このペンダントを着けた者がその何かが存在した時代、場所に行けるんじゃよ」
うーん、わかりづらい。というか、わからない。
『その時代って言われてもなあ…。100年前に存在したものは1年前にも存在するじゃん。』
「特定の時代に行きたければ、複数の何かを用意するんじゃよ。それらが最も至近距離にある時代に行くことができる。」
『なるほど…。』
なるほど…か?
それから30分ほど、理論についての説明がなされたが、俺にはほとんどわからなかった。
じいちゃんの説明でわかったことは、
例えば、リンカーンに会いたい場合、
リンカーンの帽子、靴、杖なんかのリンカーンに関係するものを複数集めて機械にセットすればいいらしい。
本当にちゃんと起動するかは怪しいが。
じいちゃんの発明は10個中9個は失敗だ。
今まで俺も大変な目にあってきた。
ここは軽く流してしまうのが得策だろう。
『まあ、よかったな、じいちゃん。じゃあ俺は行くから…。』
と、その場を立ち去ろうとするとじいちゃんに肩を掴まれる。
「試して、みんかの?」
……今回も巻き込まれる予感。




