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第二話

「お前がこの店の一番人気だと聞いたのだが……。どんな女かと思いきや、確かに美形ではあるにしても……、こんな幼い顔をしてるとは。おまけに、小柄な体格で少しばかり細いときた」

 表情や口調こそ無感情で淡々としているものの、ダドリーが少なからず落胆しているのがひしひしと伝わってくる。

 そんな彼の様子に一切臆せず、ミランダはこう切り返した。

「初顔のお客様にはよくそう言われますわ。でも、娼婦の真の価値は見た目ではなく、ベッドの中でいかにお客様を悦ばせることが出来るかです」

「ほぅ、随分と自信があるようだな」

 面白い、と言いたげに、ほんの僅かではあるがダドリーはスゥと目を細め、右側の頬をピクリと動かす。

「一応、この店の一番人気ですから」

 ダドリーに負けじと、ミランダは微笑みながらも強気な態度を崩さない。

 こういう風に、身分と気位が高く、始めから自分を見下してかかる客は下手に出て従順になるよりも、怒らせない程度に軽く挑発した方がいい。

 この生意気な小娘を何としてでも屈服させたい、という征服欲を煽り、屈服できそうで中々できないーーという駆け引きを何度か繰り返す。そうして自分のペースに上手く巻き込んでいくのだ。

 遊び慣れたこの男にどこまでその方法が通じるかは分からない。だが、とりあえず試すしかないのだ。

「全くもって色気が感じられない、その幼い容姿でか??この店の客達は皆、少女趣味なのか??私には理解できないな」

 ダドリーに侮辱されたミランダは内心、ほんの少しだけ腹を立てる。 

 彼女は誰もが認める器量良しだ。 

 しかし、くるくるとよく動く、琥珀色の大きな猫目以外の顔の造作はどれも小作りで、小さくて丸っこい頭、小柄で決して痩せすぎてはいないものの、細身な体格で胸やお尻もそれほど大きくない。そのため、実年齢より幼く見えたし、彼女も充分自覚していた。

 だから、ダドリーのように「一番人気を選んでおけば、まず間違いはないだろう」と言う理由で、ミランダの容姿を全く知らない状態で指名する客がこのような反応を示すのは、そんなに珍しいことではなかった。

 それでも、面と向かってここまではっきりと馬鹿にされると、一番人気の誇りに傷がつき、子供の頃から舐め続けてきた、数えきれない程の辛酸の味が口の中に拡がり始める。そして、その傷や苦みなどに負けぬよう、更に強く、自分を奮い立たせる。


 これまでに身に付けてきた手練手管を駆使して、絶対にこの男を落としてやる、とーー。


 可憐な笑顔の裏で、ミランダがそのようなことを思っているなどと知ってか知らずか、ダドリーは相変わらず上から見下ろす態度を崩そうとしない。

「……まぁ、いい。お前が言うように、確かに娼婦の真価はベッドの中で問われる。ならば、試させてもらおう」

 言うやいなや、ダドリーはミランダの小さな顎を掴むと、彼女の唇に自身の唇を重ね合わせてきたのだった。



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