表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sin Spec Memory F  作者: 直斗
チュートリアル
6/43

6

6


ただ一人、長い階段を上り先ほどの湖の真上。

金属質の床に壁、円形の巨大な部屋。

天井は見えないほどに高い。

そこに入った途端、扉は塞がれた。

ようやく来たか、キーモンスター。

どこからか、一際大きな火の玉が出現する。

名前はバーナム。

バーナの強化系か。

となると、物理攻撃は無効かな。

ここで自分の状況が、改めて悪いことに気が付いた。


アルケミストがいない。


一人だけではない、NPC全員がいないのだ。

アクエリアドラゴン、恐るべし強さ。

巨大な炎の球は、部屋の中央から一向に動く気配を見せない。

かと言って、こちらから攻撃すればどうなるか分かったもんじゃない。

ひとまず、何か使えるコードがないか。

確認してみるか。

ゲーム内の時間が止まり、周囲は黒色に包まれる。


体力全開、スタミナMAX、アイテム全て所持。


この辺りは使えそうに無いな。

視線を少しづつずらしていく。


所持金MAX、スピード2倍、スピード4倍、スピード8倍。


この辺りも戦闘向きではない。

さすがのチートでも無理なのか。

そう諦めかけたとき、あるコードが目に付いた。


スキル全開。


これで、魔法が使えるようになるとも限らないのだが……

やってみるか。


Game Start


視界は元に戻り、バーナムが一体のみ。

同時に小さなウィンドウが現れ、次々とスキルが表示されていく。

それの中に紛れて表示された、いかにも魔法攻撃のようなスキル。


(スキル『光弾Lv.1』を習得しました。)


メニューを開き、スキルの項目を選択する。

そこから光弾を選択し、動作の確認を開いた。

忘れてしまった時の為なのだろう。

一度修得したスキルは、こうして動作を確認することが出来る。

動作の確認を終え、全てのメニューを閉じた。

メニューを開いている間、時間が止まることは無いが敵の動きはない。

相も変わらず、部屋の中央でユラユラと揺れている。

手の平を上に向け、そこに意識を集中させる。

すると光が集まりはじめ、徐々に大きく膨れ上がる。

ある一定の大きさにまで膨らんだのち、より一層輝く。

作られた光球は、それ以上大きくなることは無かった。


チャージ完了。


巨大な炎の球を下地に、現れていた黒の顔。

一瞬、それが不安そうな表情になった気がした。

これが本当に魔法攻撃なら、間違いなくお前は死ぬ。

そうでなければ、お楽しみだな。

光球を作ったその手の平を、押し出すように突き出した。

光球は光弾となり、相手に向かってまっすぐに飛んで行った。

決して遅くはない。

だが、見て避けられるほどのスピードで。

着弾までの時間が、非常に長く感じられた。

私の期待を乗せたそれは、バーナムに当たり白の数字が表れた。

悲鳴のような甲高い音が響き渡り、小さく黒くなり、そして消えた。

消えたそこから金属のカプセルが現れた。

それが自動で四つに割れ、開く。

中から現れたのは、一つのスイッチ。

入ってきた扉は閉まったまま。

他に出入り口は無く、仕掛けもない。

唯一の手掛かりを、叩きつけるように押した。


鳴り響く警報――


――どこかで始まる数々の爆発


その爆発はバーナムと戦ったエリアの真下。

そう、地底湖。

それらは地底湖の底に穴をあけ、さらに地下へと水を押し進める。

流れ着く先は、マグマの中。

瞬間的に水蒸気に変わり、さらに巨大な爆発が上のフロアを押し上げる。

フロアそのものが、ありえない速さのエレベーターと化したのだ。

驚くほどの圧力に、手足を床につける。

一定時間上昇したのち、フロアは巨大な振動とともに急停止した。

四つんばいのまま、反動で飛び上がる。

空中で体制を立て直し、そのまま立ち上がった。

さて。

目の前には、ボス部屋特有のデザインをした巨大な扉。

それが今。

ゆっくりと開け放たれた。


巨大な部屋の中央に、岩石のようなものがある。

ただ、普通のそれとは違う。

わずかに上下しているのだ。

部屋に入ると、背後の扉は閉ざされた。

同時に、岩石のようなものが大きく動き出す。

巨大なトカゲのような外見。

黄色い目が開き、赤い瞳がこちらをとらえた。

火山ダンジョンボス、サラマンドラ。

全身が黒く岩石のように変質しており、守りは堅いのだろう。

周囲の空気が奴へと流れ始める。

刀に手を置き、風に乗り一気に走り始めた。

敵へと到達するよりも早く、風はやんだ。

そして起こったのは。


爆音と熱波


地面に這いつくばるように、前からの暴風をやり過ごす。

ただの咆哮。

ついでに状態異常、大火傷を付与された。

チートでレベルを最大にしていなかったら、ここでログアウトしていただろう。

終わったと同時に走り出す。

鞘と柄を握り、刀全体が光り始める。

こうしている間も、大火傷により一定の割合で体力が削られていく。

もって残り5秒。

それまでに決着をつける。

咆哮により、天井から石の針が落ちてくる。

それを右へ左へとかわしつつ接近する。

敵の目と鼻の先。

巨大な影が目の端に入った。

爪。

巨大で強靭な爪の攻撃。

慌てて飛び退いた。

だが。


範囲が広すぎる!!


空中で溜めていたスキルを解放し、爪を切り裂く。

残り1秒!

もう一度接近し、スキルを溜めていたのでは間に合わない。

先ほどチラリと見かけた武器投合スキル。

動作が分からないがやるしかない。

着地と同時に、右手で刀を逆手に持ち変え左手を前に突き出す。

柄の方から先端へ、0.2秒で移動する。

刀身全体が輝き始めると同時に、一気に相手に向かって投げつけた。

スキルによって放たれたそれは、光の槍となって目と目の間を貫く。

敵は巨体を支えきれずに倒れた。


残り0.3秒!


運よくすぐ近くに、街へと戻る為の装置が出現した。

ドロップ品には目もくれず、大急ぎでそこへ飛び込んだ。

この時の残りの体力は、たった1だけを残していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ