表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sin Spec Memory F  作者: 直斗
インフィニット・アドヴァギア
19/43

19

19


キャラクターネーム、アッシュ。

目の前の少女を見ながら、疑問を口に出す。


「アッシュ?」


小さく現れた表示には、アッシュの名前が含まれていた。


「私の事だよ。」


彼女は人差し指で自信を指しながら、そう返答する。


「とりあえず、さ。」

「早く承認して。」


(アッシュから友達申請が届いております。)

(承認しますか?)


私は迷うことなく承認した。

アッシュの名前と、プレイヤーネーム。

それに加え職業と現在いる場所までが表示された。


「アナライズシールダー?」


職業、アナライズシールダー。

始めて聞く、気がする。


「まぁ、ね。」

「敵の攻撃をなるべく耐え、生き残れるようにしたアナライザー。」

「状況を分析および解析し、戦闘を有利になるよう表示する。」

「それが私の職、というか役割。」


話しながらも彼女は、メニューを操作する。


「じゃ、こっちも入ってね。」


こちらがメイン。

先ほどの、この子の願い。


(アッシュから、ギルド『混沌に浮く星々』の加入申請が届いております。)

(加入しますか?)


本当は、雲谷炉衣が属するギルドと同じギルドに入る予定だった。

現実の方で実際に彼女に頼まれ、承諾したことがある。

約束を破る事になってしまったが……

脅されているし、仕方ないよな。

と強引に自身を落ち着かせる。

ギルド加入者は……


「二人?」


さすがに驚いた。

加入させたからそこまで多くは無いと考えていたものの、まさか二人目だったとは。

既に二、三人はいるものだと考えていた。


「こ、これから増やすから、ね?」

「そんな事より、混沌に浮く星々。」

「宇宙に輝く星々を感じさせる、いい名前だと思わない?」


ギルドの名前なんて、正直どうでも良い。

とても気に入っているであろう彼女の前で、それを言う勇気は無かった。


「さて、と。」

「そろそろ行こうか。」


どこに、と聞く私の言葉に対して彼女は笑い転げる。


「君ねぇ。」

「ここはゲームだよ。」

「なら、分かるね。」


そうだった。

なぜ、私は忘れていたのだろう。

ならやることは決まっている。


「冒険!」

「ダンジョン攻略!」


二人が同時に答えたその解答は、大体合っていて、それでいて違うものだった。

アッシュは鼻で笑った。


「冒険かぁ。」

「まぁ、いいよ。」

「冒険もダンジョン攻略も一緒だからね。」


彼女はこちらへと手を差し伸べる。


「ほら、行こう。」

「何度挑んでも、攻略できないダンジョンがあるんだ。」

「どんなチートかは分からないけど、君が居れば勝てる。」

「でしょ?」


差し出された手を取ることなく、その場を後にしようとした。

後ろからあわてて、アッシュは追いかけてくる。


「待ってよ。」

「こら、待ちなさい!」

「ギルマスの言うことは聞け―!」


私はピタリと歩くのを止めた。

別に、この子に命令されたからではない。


「やぁ、こんばんは。」

「いや正確には、おはようかな?」


男性のガンマン。

が、細い通路を塞いでいる。

すぐに追いついたアッシュが、彼に問いかける。


「どっちでもいいけど、あんたはこいつの知り合い?」

「少なくとも、私の知り合いではないんだからね。」


アッシュの知り合いかと思い、そちらを見た瞬間に答えられた。

彼女は目の前の男から、目を離さない。


「いいや。」

「アッシュ、君の事は知っているよ。」

「先ほどの臨時ミッションはお疲れ様。」

「まぁ、僕と君との接点はそこだけだね。」


この男。

私たちを通す気がない?


「一方的に知ってるだけじゃん。」

「ほら、構ってないで行くよ。」


そう言って、手を引っ張られる。

と、その先にももう一人。


「ごめんね。」

「通すなと言われているんだ。」


同じくガンマンの男性。

完全に逃げ場がない。


「ギルジス君、ありがとう。」

「君ら二人はここを通りたい、だね?」


話をする男に、二人は向き直る。


「だったら――」


「僕ら二人に勝てばいい。」


単純単純。

強い者の願いが叶う。


「負けたらその時点で即ログアウト。」

「君たちが負けても、ログインした時にこの町のどこかから始まるから、ここでハメ殺すことは僕らにはできないよ。」

「ルールは2対2、だ。」


いきなり対プレイヤー戦。

自身は無い。

だが、負ける気もない。


「分かった。」

「あんたの挑戦状、受けとったよ。」


彼は声を出すことなく、口だけを歪めて笑った。


「僕はレクタード、とここでは名乗っているよ。」

「ライゼル君、君にはこの名前覚えていてもらいたいものだよ。」


わずかに時間を置いた後、新しいウィンドウが表示される。


(プレイヤーバトル)

(決闘を申し込まれました)

(フィールドを選択してください)


草原や月面など見たことがあるフィールドもあるが、表示されている大半は見たことが無い。

どこでも、同じ、かな?

一番最後にあったランダムを選択すると、ある一つのフィールドを選択した状態になった。


(building)

(一つの巨大なビルの中がフィールドです)


屋内戦になることを予想しつつ、それで決定した。

薄暗い廊下、全体が細かく揺れ始める。

左右の壁にはヒビが入り始めており、崩れるのではないかと予感させる。

その壁が崩れるよりも早く、閉じ込めるように二つの壁が下から突き上げた。

私はレクタードとも、アッシュとも隔離されその場に閉じ込められる。

コンクリートで出来たような、白い壁。

ヒビが入って来ていた両横の煉瓦で作られた壁は、細かい塵になり吹き飛ぶ。

その先にあるのは、全てがコンクリートで作られた廊下。

まさか、これがフィールド?

相手の位置はともかく、自分の位置でさえ分からない。

明るい蛍光灯で照らされたそこは、どちらへ進んでも突き当りになっている。


(TEAM BLUE 1 VS TEAM RED 1)

(フレンド、およびギルドのメンバーを呼ぶことが可能です。)


今表示されている180の数字は、とてもゆっくりに感じられる。

おそらく16倍速コードのせいだ。

このコードは戦闘時以外でも適応されるのか……

とか考えながら、アッシュを選択した。

しばらくすると何かが落ちる音がし、その何かはぶつぶつと文句を言っている。


「全く……」

「なんで私は呼ばれるたび、いつも上から落ちるの?」

「ほんと、理解できない。」


赤色の髪、猫なのか狐なのか分からない耳。

そして、その体よりも大きい巨盾。

これがアッシュの武器……

盾で攻撃なんてできるのだろうか?

もし一人で戦うことがあったら、この子はどうするつもりなのか?

いろいろな疑問が一瞬で駆け巡るが、それはアッシュによって遮られた。


「ほら、早く決定を選択して。」

「向こうも準備は出来てるから。」


(TEAM BLUE 2 VS TEAM RED 2)

(フレンド、およびギルドのメンバーを呼ぶことが可能です。)


選択する。

すると、10のカウントダウンが始まった。


「さぁ、武器を抜いて。」

「この時間からスキルを溜めることが出来るから。」


アッシュは両手で盾を持ち、片目を閉じている。

私も鞘に入ったままの刀に手を伸ばした。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ