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浮気性な彼氏と許容した彼女

作者: すもも 遊

ちょっと息抜きで作りました。

簡単な設定

月原 鈴奈ーいつもニコニコ笑ってる。美女。頭脳明晰。

飯塚 慧ーヘタレイケメン。浮気性。ヘタレ。


「ほんっとーにごめん!もうしないから!」



えーっと、ちょっと状況がみなさんわからないでしょうから、簡単に説明しますね。


まずは自己紹介を。

私は月原つきはら 鈴奈れいなと申します。大学生やってます。

そして目の前で床に這い蹲って今にも土下座でもせんとばかりに必死の形相で謝っているのは、飯塚いいづか けいで、同じく大学生。私の彼氏です。一応。あ、たった今土下座しました。姿勢が悪いのでかっこ悪いですね。

あぁ、私はソファーに座ってますよ。仁王立ちなんて疲れるからしません。


さて、肝心の状況はというとですね、

彼氏ができる

  ↓

彼氏は浮気性

  ↓

許容する私

  ↓

調子に乗って浮気を続ける彼氏

  ↓

浮気相手の妊娠発覚←イマココ

です。

我ながらかなりわかりやすいと思います、この説明。

今は私の部屋で尋問……ではなく、彼氏の平謝りが繰り広げられています。


別に浮気自体は気にしてないんですけどねぇ。今回の浮気も、付き合い始めてから、1……2……3…………、5人目ですし。いちいち怒ってたらキリないですから。


そうです。私の彼氏は超が付く、もうどうしようもない程の、これはもう病気なんじゃないかって程の浮気性なんです。

女性なら誰もが好みそうな甘い顔に、女心を知り尽くした言動、行動。モテないわけがありませんねぇ。

え?あぁ、はい、私もイケメンは好きですよ。浮気性は嫌いですが。

それにしても、自分から告ってきたくせにかわいい彼女を差し置いてお楽しみなんて、とんだ下種野郎ですね。

……はい?かわいい彼女ですか?ええ、比喩じゃないですよ。自分で言うのもなんですが、私って顔はかわいいんですよねぇ。性格はご覧の通り捻くれてますが。


……おっと。慧さんの事を忘れかけてました。ずっと黙ってたのが気になってるのか、めっちゃこっちの顔色伺ってます。滑稽ですね。



「ごめん!もうしないから!ほんとごめん!」



その台詞何回目だと思ってるんですか、この人。同じ事言っとけば全ての女性が許すとでも思ってるんですかねぇ。私は許す許さない以前にどうでもいいんですけど。

あぁ、そうだ、聞かなければいけないことがあったんでした。



「ところで慧さん」

「はっ、はい!?」

「お相手は何て言ってるんです?」

「……へ?」

「ですから、妊娠が発覚した後、お相手の女性は何て言ってたんですか?」

「あ、あぁ。子供が出来たんだから、責任取れって」

「まぁそうなりますよねぇ」



やれやれ、仮にも成人した男が避妊もできないんでしょうか。



「お相手には浮気だって言ってあるんですか?」

「……うん。言っては、あるけど……、そんな女とは別れろって……でも……」

「当たり前じゃないですか。妊娠までさせておいて何を虫のいいこと言ってるんです?ちゃんと責任は取らないと駄目ですよ」

「でも!」



突然ガバっと顔を上げた慧さんは、聞いてもいない言い訳を始めました。

曰く、浮気をしたのは私の気を引きたかったからだとか本気なのはお前だけだとか避妊はしようとしたけど相手が無理矢理……などなど。

初めて聞きましたねぇ。今この場ででっち上げたとしたら、普通の女性ならすぐに許してしまう程には上手く言い繕えてますよ。及第点です。

流石、多くの女性を泣かせてきただけあります。私が求めてるのはそんな体のいい言葉じゃないんですけどねぇ。



「じゃあ、別れましょうか」

「……は?」

「ですから、別れましょう。恋人という関係はもう今日、今この瞬間を以って終了しましょう。明日からは月原さんと飯塚さんです。わかりましたか?」

「はぁ!?何でだよ!」

「うるさいですねぇ、貴方に怒る権利はありませんよ?自分の浮気が招いた事態じゃないですか」

「っ、でも!」



今後の為を思って別れを告げたのに、何故か逆ギレを始める慧さん、もとい、飯塚さん。まぁ彼が納得してないっぽいのでまだ慧さんで。

まだ何かを言い募ろうとする彼を見下ろすと、うっと身を竦ませてしまいました。そんなに怖い目をしていたでしょうか。



「でもも何もないですよ。言い訳がましい、女々しい人ですねぇ相変わらず。私と別れなければお相手はどうなるんですか?」

「それは」

「堕胎ですか?女性は辛いでしょうねぇ。浮気性の下種野郎に植え付けられた種だとしても、自分の身に宿った命に違いないでしょうに。それとも一人で育てろと?今の時代、私生児には風当たりが辛いでしょうねぇ。私と別れなければ、彼女はどう転んでも不幸になりますよ」

「待てよ!俺はまだお前が好きで、まだ別れたくな」

「知ったこっちゃありませんよ。私は別に貴方が好きで付き合ってた訳ではないので」

「はぁ!?ふざけんなよ!」

「巫山戯てるのは貴方ですよ。本来なら貴方は私に縋って謝るんではなく、今すぐにでもお相手と今後について相談すべきでしょう?」

「そうじゃねぇよ!何だよ、好きで付き合ってた訳じゃないって!」

「お・静・か・に。もう夜です。あんまり喚くと近所迷惑ですよ」



あぁ、そこですか。

私はてっきり、慧さんも私に本気で惚れて告ってきたんじゃないと思っていましたが……。どうやら違うようですね。

まぁ確かに訳のわからないまま別れるのも可哀想ですし、説明してあげますか。



「言葉のままの意味ですけど?貴方はその浮気性はともかく、顔もスタイルも申し分ないですし、常識だってちゃんとわかってますからねぇ。貴方が私に交際を申し込んだ人の中で一番条件がよかったから付き合っただけですよ。

「私は愛も恋も信じてませんよ?貴方からの誠実な愛情なんてもっと信じていませんし。考えなかったんですか?自分みたいな甲斐性なしと交際してくれる女性がいるのか、って。私は貴方が、隣を歩いていても恥ずかしくなく友人に紹介したら羨ましがられる容姿であったから恋人になったんですよ。貴方に恋していたんじゃありません。

「つまり何が言いたいかというとですね。私が貴方に求めていたのは最初から、恋人としての誠意ではなく人間としてのステータスの高さですからご心配なく後腐れなく別れましょう、です。恋愛感情ではないんですよ。そんなもの、唯一低いステータスが人間性な貴方に抱く訳がないじゃないですか」

「な……ん……」



あらあら、何がショックだったのか顔を真っ青にして絶句してしまいましたね。

本当、自分みたいなのと本気で長期で付き合ってくれる女性がいると思ってたのでしょうか、この馬鹿は。大学全体に知れ渡ってる程の浮気性の甲斐性なしだというのに。


相変わらず地面に這い蹲ったままの慧さんと、見下ろす私。

理解できたなら帰ってくれませんかねぇ。ここ私の部屋で、私はもうお風呂に入って寝たいんですが。



「じゃ、じゃあ、今までお前が浮気を許してたのも……、俺の事なんて、どうでもいいからか……?」

「当然じゃないですか。まぁ、本当に好きだったとしても浮気程度なら許してあげますけど。根本的な欲求として、子孫を残す遺伝子を繋ぐっていうのは生物最大の欲ですからねぇ。謂わば男は種で女は畑ですよ。優秀な遺伝子は残したいと望むのは動物として当たり前の事ですし。ですから、私は男性が誰とヤろうが何人とヤろうが許すことができますよ。特に貴方は顔もスタイルもよろしいので、逆に多くの子孫を残して欲しいところですねぇ」

「………………」



絶望

今の彼の顔を表すならこの言葉がぴったりでしょうねぇ。

言葉も出ないって感じです。えっと、水泳が終わって「何も言えねぇ」って言ったの誰でしたっけ?

まぁいいですかね。話はもう終わりです。飯塚さんにはお引取り願いましょう。



「さぁ、もうお帰りください。そしてお相手にちゃんと電話なりメールなにしてあげるんですよ?そしてちゃんと顔を合わせて話し合う事。あぁ、女性に堕ろせは禁句ですからね。絶対に貴方から言い出しては駄目ですよ」

「あ……あぁ、うん……」



喋りながら彼を玄関まで追い立てる。

そういえば、いくつか彼の私物が置いてありましたね。後でまとめて捨てましょう。



「それではお幸せに、飯塚さん・・・・

「……じゃあ……」



少しだけ寂しそうな顔をしてこちらを見る飯塚さん。ドアはバタン、と閉まる。

しっかりと鍵を閉める。戸締りはいつの季節でも大切ですよ。

特に女性の皆さんは厳重に戸締りをしなければ、いつ何が起こるかわかりませんからねぇ。


さて、と。


ポチポチ



「……もしもし……?」

『もしもし、鈴奈?どうしたのぉ?』

「実は、慧さんと別れて……。ちょっとだけ、愚痴に付き合ってくれますか……?」

『あったりまえじゃん!ちょっとどころかいつまでも付き合うよ!』

「……ありがとう」

『友達なんだから当たり前じゃん!家飲みでいいよね?』

「はい、こっちで大丈夫ですか?」

『もっちろん!今から行くね!じゃあ!』

「では」



ぷちっ。


工作完了。

これで、「浮気性な彼氏に捨てられた可哀想な彼女」と「浮気した上相手を孕ませた最低な彼氏」な構図の出来上がりです。


女性の友人関係なんて、僻む対象の不幸で一気に良くなるものです。女性は自分より劣る人間を哀れみ慰めるのが大好きですから。

私なんてその筆頭でしょう。整った容姿に、日々の努力のお蔭で優秀な頭脳。そしてイケメンの彼氏。浮気性だったのが功を奏して、あまり妬まれはしませんでしたけど。

そんな人間の失恋なんて、最高の肴でしかありませんよきっと。他人の不幸は蜜の味。まるで女性のためにあるような言葉ですね。


……あら、そろそろ来る頃ですね。

目薬目薬……、あれ、何処に置いたんだっけ?

……あったあった。


それではみなさんも浮気には十分お気をつけくださいね。




基本的には作者の持論でもあります。

でも、こんな彼女がいたら怖いですね。私はむしろ嫁に欲しいですが。


誤字脱字、不自然な文章等ありましたらお知らせ下さい。

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