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ヌヴェル13 吾輩の勝利

作者: 寺澤樹生
掲載日:2026/08/29

“吾輩は猫である”の絵本があってね。それを読んだ息子が嵌っちゃって、自分のことを“吾輩”って言うようになってね。まあ、それはそれで可愛くもあり、面白くもありで良かったんだけど。


その内、“吾輩は人間である”って言うようになって。なんか難しいことを言い始めたぞと思ってたら、“吾輩は名探偵である”とか“吾輩はユーチューバーである”とか、なんか将来やってみたい仕事で呼ぶようになってね。


それが息子だけならまだしも、我が家には人真似得意なオウムのオムちゃんがいてね。

これが実に見事に人真似をするんだ。声のトーンまで使い分けるから、もうそっくりでね。

そのオムちゃんが、“吾輩は名探偵である”とか“吾輩はユーチューバーである”とかを、いろんな声音で真似るものだから、やかましいのやかましくないのって大変だったんだ。


そんなある日、なんと我が家に泥棒が入ってね。

家内はいたんだけど、無事で。ほんとよかったよ。

なんか人の声を聞いてね。えっ?と思ったら、バタバタって音がして。リビング覗いたら窓が開いていて、誰かが走って逃げていく姿が見えて。とりあえず警察には来てもらったけど。君も気をつけた方がいいよ。


えっ、泥棒が走って逃げたのは何故かって?

それはね、息子とオムちゃんのファインプレーでね。

最近、息子がTVドラマに嵌っちゃって。その主人公が格好よくてファンになったみたいでね。“吾輩は・・・”ってよく言うようになって。

それを真似るようになったオムちゃんが低音でね、ちょうど泥棒が入ってきたときに、真似たみたいなんだ。

“吾輩は刑事である”ってね。



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