30. 謎のカラス
更新が遅くなって、申し訳ありません…。
次も遅くなるかも、しれません…。
修行をするため、山の中に作った、拠点へとやって来た佳奈子たち…。
しかし、たどり着いた拠点では、暴れるカラスが、物干し竿に吊るされていた…。
そして、そのカラスの前では、化け猫のウタが、笑いながら、包丁を研いでいるのであった…。
周囲には、包丁を研ぐ音と、「うふふふふ…」という、不気味な笑い声が、響き渡っている…。
その異様な光景に、佳奈子は、恐怖を感じ、次の一歩が、踏み出せなくなっていた…。
(なに…?!なんなの…?!どうしてウタちゃんは、笑いながら、あんな事をしているの…?!ぶ、不気味すぎる…。とてもじゃないけど、気軽には、声をかけられないよ…。一体、どうしたらいいの…?!)
佳奈子は、そう思い、恐怖で緊張しながら、思い悩む…。
そして、そう感じていたのは、隣に立つ、絹代も同じだった…。
しかし…、絹代は、これまでに、幾つもの修羅場を、くぐり抜けてきた強者である…。
そのため、佳奈子よりも、ずっと肝が据わっていた。
なので、絹代は、ゴクリ…、と、唾をのんだ後、覚悟を決めて、口を開いた…。
「…ウタ…、お前…、何をしているんだい…?」
絹代は、そう、ゆっくりと、問いかける…。
そんな絹代の行動に、佳奈子は…、
(す、すごい…!…さすがは、おばあちゃん…!この状況でも、そんな冷静に、声をかけられるなんて…!)
そう思い、絹代を、尊敬のまなざしで見る…。
一方…、絹代に声をかけられたウタは、やっと佳奈子たちの存在に、気がついたようだ…。
「え?あら~?みんな、来ていたの~?全然、気づかなかったわ~!ごめんなさ~い!」
ウタは、そう、驚いた顔で言う…。
そして、にっこりと笑い…、
「うふふ~!ようこそ、拠点へ~!みんなが過ごしやすいように~、がんばって周りを整えたのよ~?どう?なかなか立派な拠点でしょ~?」
ウタは、そう、自慢げに言う…。
すると、そんなウタの反応が、よほど意外だったのだろう…、絹代は、虚を突かれて…、
「えっ?!ああ…、うん…、確かに立派な拠点だ…。準備、ご苦労だったね…、ウタ…」
そう、反射的に答えてしまう…。
そしてウタは…、
「いえいえ~!どういたしまして~!」
そう、嬉しそうに笑って答える…。
それは、先ほどまでの緊張が、ウソのような会話だった…。
しかし、目の前にある問題からは、大きくズレた会話である…。
そのため、佳奈子は、恐怖も忘れ、ずっこけた…。
「ちょっと…!おばあちゃん…!今、言うことは、それじゃないでしょ…?!」
佳奈子は、すぐに起き上がり、絹代に、つっこむ…。
すると、絹代は…、
「はっ…!そうだった…!」
そう言って、我に返った…。
…実は…、絹代は、一度信用した人間には、とても弱い…。
特に…、ウタは、絹代にとって、赤ん坊の頃から、自分を育ててくれた、母親や、姉妹のようなものである…。
そのせいもあり、絹代は、のんびりとしたウタのペースに、流されてしまったようだ…。
しかし、佳奈子に、つっこまれ、絹代は、その事に気がつき…、
(くっ…!アタシとした事が…、すっかり、ウタのペースに流されちまった…。のんびりした、あの口調には、昔っから弱いんだ…。けど、もう流されたりしないよ…!)
絹代は、そう思い、気を引き締めた…。
そして…、
「…ウタ…!お前、なんで包丁なんか、研いでるんだい…?!正直に、理由を言いな…!」
絹代は、さっきとは、打って変わって、厳しい顔で、問い詰める…。
すると、ウタは、悪事がバレて、ギクリ…!…なんて顔は、しなかった…。
むしろ、不思議そうな顔をして…、
「え?包丁~?包丁なら、いつだって研いでるじゃな~い?時間があれば、家でだって、研いでいるでしょ~?」
そう、当たり前のように言う…。
「え…?…あ…、そういや、そうか…」
絹代は、それを思い出す…。
すると、ウタは…、
「おいしい料理を作るには~、包丁の手入れは、欠かせないのよ~?切れ味がいい包丁だと~、料理がおいしくなるんだから~!」
ウタは、そう言って、話を続ける…。
「うっふふ~!私~、いつも包丁を研ぎながら~、どんな料理を作ろうかしら~?って、考えるの~!そして~、その時に、想像するのよ~。私が作った料理を~、みんなが、おいしい…!って言って~、食べてくれる所を~!うっふふ~!そうやって~、私が、みんなの健康と、胃袋を掴んでるんだ~、って思うと~、もう楽しくって、しょうがないわ~!うふふふふ~!」
ウタは、そう言って、笑う…。
(あ、あれ…?もしかして、私たちって、ウタちゃんに、命を握られてる…?)
佳奈子は、そんな気がしてきた…。
すると、絹代が…、
「ウタ…!お前…!」
そう、厳しい顔で、ウタの名を呼ぶ…。
(!おばあちゃん、もしかして、怒ったの…?!)
佳奈子は、そう思い、絹代を見る…。
すると、絹代は…、
「…お前…、…いつも、みんなのために、包丁の手入れを、していたんだね…。しかも、そんなに、やりがいを持って…。…ありがとうね…、ウタ…」
絹代は、目を潤ませて、ウタに言う…。
(!おばあちゃん、感動してる…!)
佳奈子は、祖母の気持ちに気がついた…。
そして、絹代は…、
「…そうかい、そうかい…。異様な雰囲気だったもんで、つい驚いちまったが…、よく考えりゃ、別に、変な事なんか、何にもないね…」
絹代は、そう言って、安堵の表情をする…。
どうやら、絹代は、また、ウタのペースに流されてしまったようだ…。
しかし、そんな絹代に、佳奈子は、再び、つっこんだ…。
「いいや!おばあちゃん…!あんなに笑いながら、包丁を研いでるのは、十分、変で、怖いから…!なにより、あの吊るされてるの見て…!あのカラス、なに…?!」
「!そうだった…!」
絹代は、気づく…。
「え?カラス~?…ああ~!あの子のことね~。あの子を、ああして吊るしてるのは~、やむにやまれぬ~、事情があるのよ~。仕方な~く、ああしているの~」
ウタは、そう言って、逆さまに吊るした、カラスを見る…。
「やむにやまれぬ、事情…?」
「ええ~。あのカラスったらね~、登山ルートの目印を、剥がそうとしていたんですって~」
ウタは、そう、困った顔で、事情を話す…。
「えっ?登山ルートの目印…?それって、木に付けてあったテープのこと…?あのマーキングの…」
佳奈子は、これまでに何度も見た、マーキングのテープを思い出す…。
「あ~、テープの方じゃなくって~、矢印が描いてある、ステッカーの方よ~」
ちなみに、ステッカーとは、主に屋外で使われる、シールのことである。
そして、今、話題に上っているステッカーは、八乙女家の会社で使われているものである。
そのため、ステッカーの下の方には、小さく、会社名と、電話番号の、印字もあった…。
「ああ…、矢印の…。確かに、あれは、カラスでも、剥がせそうだね…」
佳奈子は、今までに見た、ステッカーを思い出す…。
「ええ~。あれはね~、元々、この連休が終わったら、回収する予定だったから~、あんまり強力には、くっつけてなかったの~。でも、あれがないと~、これからの修行に困るでしょ~?なのに、あのカラスったら~、それを、イタズラで~、剥がそうと、していたらしいのよね~」
「?…らしい…?らしい、って事は…、ウタちゃんは直接、見てはいないの…?」
佳奈子は、不思議に思って聞く…。
「ええ~。ステッカーの件は、見てはいないわ~。でも~、そこにいるメカブはね~、その犯行現場を目撃して~、犯人のカラスを~、ビシッ…!と、止めたんですって~」
そう言って、ウタは、自分の横にある、おしゃれなバスケットを見る…。
「?メカブ…?メカブって、だぁれ…?」
佳奈子は、分からず聞く…。
すると突然、ウタの横にあった、バスケットの中身が、もぞもぞ…と、動き出した…。
「わっ…?!」
佳奈子が、突然の事態に驚いていると…、バスケットの中にあった、ブランケットが、めくれて、一匹の猫が顔を出した…。
猫は、寝ぼけているのか、くぁ~っ…!と、大きな、あくびをする…。
そして、そのあと、んにゃ…?と、鳴いた…。
「び、びっくりした…。猫がいたんだ…。全然、気づかなかったよ…」
佳奈子は驚きながら言う…。
「あら~。驚かせちゃった~?ごめんなさ~い。でもね~、この子が、今、話をしたメカブよ~。この子も、ワサビたちと同じで、ウチの大事な社員なの~」
ウタは、そう言って、メカブを紹介する。
「あ、そうだったんだ…。よろしくね…!メカブちゃん…!」
佳奈子は、メカブに挨拶をする。
すると、メカブは…、
「んにゃ~!」
そう、元気に挨拶を返してくれた。
そして、同行していた、ワサビたちも、メカブと、軽い挨拶を交わす…。
そんな猫たちの挨拶を見て、佳奈子は、「かわいい~」と、なごんだ…。
やがて、その挨拶が済んだのを見て、ウタは…、
「ねぇ~、メカブ~、あなた~、あのカラスが、ステッカーを剥がそうとしているのを、見たんでしょ~?」
そう、ウタは聞く。
すると、メカブは、んにゃ…!んにゃ…!と言って、うなずいた…。
「うんうん。メカブは~、間違いなく「見た」って言ってるわ~」
ウタは、そう、ネコ語を訳す…。
「あ、そうなんだ…。確かに、目印を剥がされちゃうと、山の中で迷うかもしれない…。それは困るな~」
佳奈子は、そう言って、眉根を寄せる…。
「でしょ~?目印がなくなったら、誰かが、遭難しちゃうかもしれないわ~。だから、メカブが~、あのカラスを止めてくれて、良かったわ~。偉かったわね~。メカブ~」
ウタは、そう言って、メカブをなでる…。
「そうだね…。ありがとう、メカブちゃん。…でも…、だからってさ…、あのカラス…、あんな風に、縛って、吊るしちゃう…、っていうのは…、いくら何でも、やりすぎだよ…。鳥のことは、よく分からないけど…、あんまり、長く吊るすと、体に、良くないかもしれないし…、もしかしたら、死んじゃうかもしれない…。だから、もう、ステッカーの件は許してあげて、早く放した方が、いいんじゃない…?」
佳奈子は、そう言って、カラスの体を心配する…。
すると、ウタは…、
「私だって~、本当は、こんな事、したくはないの~!でも~、今、解放すると、そのカラス~、きっと、また、私たちを襲ってくると思うのよ~。だから、これは~、仕方がないの~!」
ウタは、そう、訴える…。
「えっ?!襲ってくる…?!」
「ええ~。そのカラスったらね~、ステッカー剥がしを止められて~、それを止めたメカブを、逆恨みしたらしいのよ~。そのあとは、ず~っと、メカブの事を追いかけまわして、もう大変だったんだから~」
「えっ?!追いかけてくるの…?!そのカラス…?!」
「ええ~。しかも、すご~く、しつこく、追いかけまわして~、メカブの毛を、たっくさん、むしったのよ~?その現場は、私も、し~っかり見たんだから~!あれは、ひどかったわ~!ほら!見て~!メカブの背中…!この酷い、十円ハゲを…!」
ウタは、そう言って、メカブを抱き上げる…。
すると、メカブの背中や、頭の後ろには、十円玉サイズのハゲが、いくつもあった…。
「うわぁ…。ひどい十円ハゲ…」
「ほんとだねぇ…」
「これは、ひどいです…!」
佳奈子と絹代、そしてタマも、そのハゲを見て、メカブをかわいそうに思った…。
「でしょ~?!でも~、連休中って~、動物病院は、お休みだから~、診てもらえないのよね~。…まぁ、大した傷じゃないし~、薬も、しっかり塗ったから~、もう大丈夫だとは思うけど~。念のため~、静かに休ませていたのよ~」
「そうだったんだ…」
すると、ウタは、また、メカブを、バスケットの中に入れ、ブランケットを優しく掛けた…。
「ほんと、メカブの悲鳴を聞いた時は、驚いたわ~。私~、急いで助けに、行ったんだから~。…でも~、そうしたら、そのカラス~、今度は、私にも、攻撃してくるようになったのよ~!」
「えっ?!ウタちゃんにも…?!」
佳奈子は驚く…。
「ええ~!それも、ほんと、しつこいの~!初めは~、ただのカラスだと思って~、たいして、相手になんか、しなかったのよ~?向かって来ても、ちょ~っと、はたき落としただけで~」
ウタは、そう言って、話を続ける…。
「でも~、そのカラスったら~、異常に、しつこくて~。ずっとついてくるし~、10分経っても、全然、攻撃を止めないの~。だから、だんだん、ガードするのも、めんどくさくなってきて~。もういいや…!捕まえちゃえ~!って、護身用に持っていた網を~、バッ…!と、投げちゃった~ってわけ」
ウタは、身振り手振りをつけて、そう話す…。
佳奈子は、それを聞いて…、
「…う~ん…。気持ちは、分からなくもないけど…。やっぱり、そのカラス…、縛って、吊るしちゃう、っていうのは、さすがに、やり過ぎだよ…。きっと、無理やり捕まった…、ってだけでも、相当に、怖くて、ストレスになってるだろうし…。それに…、普通、こんな目に遭ったら、怖くて、もう追っては来ないと思うよ…?だから、もう、放してあげた方が、いいんじゃないかな…?」
佳奈子は、そう、ウタに言う…。
すると、絹代とタマも…、
「ああ、そうした方が、いいよ、ウタ…」
「早く、放してあげた方が、いいです…」
そう、ウタに言う…。
しかし、ウタは…、
「それなら~、もう、とっくに、やったわよ~!」
そう、不満を、あらわにして言う…。
「えっ…?それって、どういう意味…?」
佳奈子は、言われた意味が、分からなかった…。
「だから~、襲ってくる、その子を捕まえて~、拠点から離れた所で、逃がしたのよ~。でも~、逃がした途端、その子は、すぐに、また、襲ってくるの~!もう、それを、7回はやったわ~!」
「えっ?!7回も…?!」
「ええ~!だから~、もう、ただ逃がすのは、諦めたのよ~。ただ逃がしても~、また、すぐに襲って来るだけだから~」
「うわぁ…。まさか、逃がしても、すぐに戻ってくるなんて…。それは、確かに、困るなぁ…。…でも…、カラスに襲われない方法は、縛って、吊るす以外にだって、あるんじゃないかなぁ…?」
佳奈子は、やはり、カラスを吊るす事に、賛成ができなかった…。
すると、ウタは…、
「私だって~、最初っから、カラスを吊るしたわけじゃ、ないのよ~?初めは~、そのカラスを、段ボールの箱に、入れたんだから~。その箱を~、後で、家にいるネネに預けて~、何とかしてもらおう~!って思って~」
ウタは、そう言って、話を続ける…。
「けど~、そのカラス…、段ボールの箱に入れても~、あっという間に、箱を食い破って、出てきちゃうのよ~」
「えっ?!うそぉ?!」
「残念ながら、ほんとうよ~?投げた網も~、布の袋に入れても~、同じように破られたの~。だから~、何かに閉じ込める方法は~、諦めるしか、なかったのよ~」
ウタは、そう言って、話を続ける…。
「でも~、その迷惑カラスを、なんとかしないと~、おちおち料理もできなくって~。しょうがないから~、次は~、気絶させてみたりもしたのよ~。けど、そのカラス~、何度、気絶させても~、10秒もしないうちに、目を覚ましちゃうのよ~。それで、また、私を追いかけてくるの~。ほんと、とんでもなく、しつこいのよ~、そのカラス~」
「うわぁ…、まさか、そこまでだったとは…。っていうか…、ウタちゃん、カラスを、気絶させる事が出来るんだ…?」
佳奈子は驚く…。
「ん~?まぁね~。首の急所を~、トン…!ってするのよ~。あ、でも~、これは、すっごい難しい技だから~、素人がやろうとすると~、相手の体に、後遺症が出ちゃったり~、死なせちゃう場合もあるの~。だから~、佳奈ちゃんは、絶対に、やっちゃあダメよ~?」
「う、うん…」
そう、時代劇などで、よく見られる、人の急所を叩いて気絶させるシーンは、あくまでもフィクションであり、実際にそれをやるのは、大変、危険なのである…。
もしも、実際にそれをやると、成功率よりも、相手に、重い後遺症が出てしまったり、死亡するリスクの方が、はるかに高い…、と言われている…。
なので、悪ふざけや、おもしろそうだ、なんていう興味本位で、それを、マネしようとするのは、絶対にやめよう…!
「けど…、段ボールに入れるのもダメで、気絶させるのもダメだったんだ…。なんか、とんでもないね…、そのカラス…」
佳奈子は、目の前にいる、カラスの評価を改めた…。
「でしょ~?こんなに、恨みがましいカラスは~、私も、初めて会ったわ~」
ウタも、困ったように、カラスを見る…。
「…ウタちゃんの話どおりなら…、そのカラス…、どう考えても、普通じゃないよね…。…もしかして…、何かの妖怪が、カラスに化けて、いたりして…」
佳奈子は、そう思い、暴れるカラスを見る…。
すると、ウタが…、
「私も、初めは~、そう思ったわ~。けど~、そのカラスからは~、全然、妖気を感じないの~。それに~、他の姿になったりもしないし~、しゃべったりもしないから~、やっぱり、カラスなんだと思うわ~。普通じゃないけど~」
「…そっか…。世の中には、とんでもないカラスが、いるんだね…」
佳奈子は、まだまだ世界は、知らない事ばっかりだな…、と、思った。
「そうね~。…けどまぁ、そういうわけで~、そのカラスは、もう最終手段で~、仕方な~く、そこに吊るしてあるの~。そうやって、暴れさせておけば~、そのうち、疲れて、ぐったりするでしょ~?そうすれば、すぐには、追って来れないだろうし~、そのあと~、遠くに置いてこればいいや~って思って~」
ウタは、そう説明を終えた…。
事情を聞き終わったタマは…、
「…う~ん…。この状況は、絶対、良くないとは思いますけど…、そのカラスに、ずっと追いかけられるのも、イヤですしねぇ…」
そう、複雑な顔で言う…。
それを聞いた佳奈子も…、
「そうだね…。まさか、そんな事情があったなんて…。…けど…、そのカラス、ちゃんと、逃がすつもりが、あったんだね…。そこだけは、安心したよ~。てっきり、包丁なんか研いでるから、今から、そのカラス、食べるつもりなのかと、思っちゃった…。けど…、冷静に考えてみれば、カラスを食べるなんて、ありえないよね~」
佳奈子は、そう言って笑う…。
しかし、ウタは…、
「え~?そんな事ないわよ~?ごくわずかだけど~、カラス料理を出している、お店もあるし~。私も~、食糧難の時代には~、カラスを、たま~に食べたわ~」
「えっ…?!うそっ…?!カラスって、食べられるの…?!」
佳奈子は驚く…。
「そうよ~?だから~、そのカラスも~、食べちゃおうかな~?って、一度だけは、思ったわ~」
「ええっ…?!」
「だって~、そのカラス、しつこいから~、相手をしてるの、疲れちゃったんだもの~。だから~、もう、ここで捌いて~、鍋の具材にしちゃおっかな~?って思ったの~。そうすれば~、この迷惑カラスも~、お昼のごはんに大変身~!みんなの、お腹も膨れるし~、面倒事も解決できて~、一石二鳥かも~?!って思って~」
「わ、私たちの、ごはんに…?!」
「けど~、それは、時間的に、無理だな~って、すぐに気づいたわ~。野生の動物って~、病原菌とか~、ウイルスとか~、寄生虫なんかを、持っている事があるから~、安全に捌くのが、大変なのよね~」
「そ、そうなの…?」
「ええ~。捌く時には~、危険な菌が、周りに、うつらないように~、気をつけながら捌かないといけないし~。その捌いた肉も~、しっかりと、火を通して食べないと~、食中毒を起こす、危険があるのよ~。だから~、野生の動物の肉を~、生で食べたり~、しっかり火を通さないで食べちゃうと~、最悪、食中毒で~、死んじゃう場合もあるのよ~?」
「ええっ…?!そうなんだ…?!」
そう、例えば…、人間が育てている家畜は、人が、衛生管理をしているので、危険な菌を持っていない…。
しかし、野生の動物は、そうではないので、危険なウイルスなどを、持っている可能性があるのだ…。
ちなみに、野生の動物肉は、「ジビエ」とも呼ばれている。
日本には、ジビエを販売している場所もあり、そういった所では、衛生管理が徹底されている。
けれど、たとえ徹底した衛生管理のもとで、捌かれたものであっても、ジビエを、生や、加熱不十分の状態で食べる事は、危険だと言われている。
ジビエを食べる場合は、適切な方法で処理をし、肉の中心部まで、75℃で、一分以上、加熱することが不可欠だとされているのだ。
ちなみに、ジビエ料理店で提供される料理というのは、そうした処理や過熱が、しっかりとされているので、安全に食事を楽しむことが出来る。
それと、ジビエ料理店で使われている、「食用のカラス肉」というのは、都会のカラスではなく、農作物を荒らすなどして駆除された、里山のカラスだという…。
近年は、その駆除したカラスを、「ただ処分するのではなく、命を無駄にしない為にも、少しでも、活用できるようにしたい…」…そう、考える人が、多いらしく、カラス肉への関心は、高まっているそうである。
「そういうわけで~、そこの迷惑カラスを捌くのは~、とっても大変で~、時間がかかるのよ~。だから~、お昼には、間に合わないな~、って、気づいたの~。それで~、仕方な~く、カラス料理は~、諦める事にしたのよ~」
ウタは、そう、残念そうに言う…。
それを聞いた佳奈子は…、
「う~ん…。食べずに済んで、よかったような…。ちょっと、惜しかったような…。複雑な気分…。…けど…、カラスって、捕まえて、食べても、いいものだったんだね…。知らなかった…」
佳奈子が、そう素直に言うと、ウタが…、
「あ、でもね~、誰でもカラスを、捕まえていいわけじゃ、ないのよ~?」
そう、注意をする…。
「えっ…?」
「あのね~、ドブネズミみたいな~、一部の例外はあるけど~、原則~、全ての野生動物は~、許可なく、捕まえたり~、殺したり~、傷つけたりしちゃあ、いけないって~、法律で決まってるの~」
「!法律で…」
「だから~、カラスを捕まえるには~、県知事の許可とか~、狩猟免許とか~、狩猟者登録なんかが~、必要になるのよ~?」
「へぇ~。そうだったんだ~。…あれっ…?じゃあ、今、そこで、カラスを捕まえてるのって…、もしかして…、犯罪…?!ど、どうしよ~!」
佳奈子は慌てる…。
しかし…、
「うふふ~!大丈夫だから~!安心して~!佳奈ちゃん…!私は、狩猟免許を持ってるし~、登録もしているの~。だから~、私が、カラスを捕まえて食べても~、大丈夫なのよ~!」
ウタは、そう、自信満々に言う…。
「あ、な~んだ、そうだったの…?よかった~。…って、ウタちゃん、狩猟免許なんか持ってたの…?!」
佳奈子は、驚く…。
「ええ~。私だけじゃなくて~、タマも、ネネも、絹さんも~、ちゃ~んと免許を持ってるわ~。ね~?」
ウタは、そう、タマに聞く…。
「はい…!だから、私たち、町で、イノシシや、熊なんかの被害が出た時には、お手伝いに、行ってるんです…!」
タマは、そう元気に答える…。
「そ、そうだったんだ…」
佳奈子は、知らなかった事実に、驚きを隠せない…。
しかし、そこへ…、
「…いいや…、全然、大丈夫じゃないよ、ウタ…」
そう言って、絹代が、厳しい顔で、割って入った…。
(?おばあちゃん…?)
佳奈子は、いつになく、厳しい顔つきの絹代を見て、不思議に思う…。
「?大丈夫じゃないって、何が~?」
ウタも、絹代の態度を、不思議に思いながら、聞き返す…。
すると、絹代は…、
「…食べてもいいカラスは…、合法的に、捕獲がされたものだけだよ…、ウタ…」
絹代は、そう、重々しい声で言う…。
「?だから~、私たちは、免許もあるし、登録もしてるから~、とっても合法的に~、カラスを捕まえてるでしょ~?」
そう、ウタは言う…。
しかし…、
「…いいや…」
絹代は、なおも、重々しい声で言う…。
「?どういう事~?」
ウタは、さっぱり分からず、眉根を寄せる…。
「…情けない事に、アタシも、ついさっきまで忘れていたよ…」
「?」
「…確かに、カラスを捕まえるには、狩猟免許と登録が必要だ…。だが、それだけじゃ、足りないだろう…?」
「えっ…?」
「…他にも…、狩猟期間や、狩猟区域、猟の方法なんかも、決められていただろう…?」
「!そうだったわ~!」
ウタは、しまった…!…という顔をする…。
「…それに…、日本で狩猟してもいいカラスは、3種類だけだ…。他のカラスは、狩猟が許されていない…」
「!そうだったわ~!それも忘れてた~!ど、どうしよう~?!」
ウタは、激しく慌てだす…。
「えっ…?!えっ…?!どういう事…?!一体、なんでそんなに慌ててるの…?!ちょっと、解説、お願い…!おばあちゃん…!」
佳奈子は、そう、絹代に頼む…。
「…はぁ…、確かに、佳奈子にも、知っててもらう必要があるね…。わかったよ…。…つまりだ…、カラスなんかを捕まえる為には、免許や、登録の他にも、決められた条件を、満たす必要があるんだよ…」
絹代は、そう言って、解説をする…。
「決められた条件…?」
「ああ…。たとえば…、狩猟をしてもいい、「期間」や「区域」ってのが、決められているんだ…。だが…、今は、狩猟をしても、いい期間じゃあ、ないんだよ…」
「えっ…」
「それに…、たとえ自分の土地であったとしても、狩猟の許可は必要なんだが…、そもそも、この山では、狩猟を、禁止しているんだ…。だから、ここは、「狩猟区域」じゃあ、ないのさ…」
「ええっ…」
「他にも、猟の方法なんかも、決められているんだが…、それらの条件を満たした上でも、捕まえてもいいカラスってのは、3種類だけなんだ…。…日本には、その3種類以外にもカラスがいるが…、それは、捕まえちゃあ、いけないんだよ…。…アタシは、あんまり、カラスには、詳しくないんだが…、そのカラスは、その3種類じゃあ、ないような気がするね…」
「ええええええ~っ…!じゃ、じゃあ、今の状態って、どういう事になるの…?!」
佳奈子は、うろたえながら聞く…。
「…犯罪…、って事になるかもね…」
「ひっ…!」
「…たとえ、野生動物に襲われた場合であっても、そいつを許可なしに、捕まえたり、傷つけたりすると、罪になる可能性があるんだ…」
絹代は、そう言って、話を続ける…。
「…なのに、アタシたちは、今、その捕まえちゃいけないカラスを捕まえて…、なおかつ、それを、吊るした状態で、弱らせようとまでしている…。…こりゃあ、逮捕される可能性もあるね…」
「い、イヤああああああ~!!!」
佳奈子は、震えだし、蒼白になって、叫ぶ…。
その、心からの恐怖の声は、風に乗り、山に響いていったのだった…。




