03. 学校
泥田坊の捕獲に失敗した次の日、佳奈子はセーラー服で学校に登校していた。
なぜなら佳奈子は15才。
現役の高校一年生だからである。
しかし、フラフラと登校した彼女は、教室の席につくなり、バタリと机に突っ伏してしまった。
そしてそんな彼女の元へ、一人の少女が元気にやって来たのである。
「おっはよ~!か~なちゃん!今日も修行でお疲れなのかな~?でもでも聞いてよ~!大ニュースがあるんだ~!」
そう笑顔で言う少女は、佳奈子の友人、土師原 多恵である。
多恵は、活発な性格の、かわいい少女で、いつも髪をポニーテールにしている。
そしてそんな多恵は、今日はやたらと上機嫌で、佳奈子に話しかけてくる。
「なんと!ついにウチのテレビも、カラーになったんだよ!念願のカラーテレビに!きゃ~っ!」
多恵はよほど嬉しいのか、奇声を上げる。
「やっぱりカラーは白黒とは違うね~!もう全然、感動が違うもん!ウチのお母さんなんかさ~、先週までは『まだ白黒テレビの家が多いんだから、テレビを変える必要はないわ~』なんて言ってたのに、いざ、お父さんがカラーテレビを買ってきたら、もう大喜びでさ~!」
「…そっかぁ…。よかたねぇ…。多恵ちゃん…」
「うん!ホントに嬉しい!…って、どうしたの?!佳奈ちゃん?!すっごいクマだよ!」
話の途中で、のろのろと顔をあげた佳奈子を見て、多恵は驚く。
「あはは…。ちょっと仕事で失敗しちゃってさ…。そのせいで、おばあちゃんが怒っちゃって、今朝まで、しごきがスゴかったんだ…」
「うわぁ~。相変わらず、絹代さん厳しいんだ…」
多恵は佳奈子に同情する。
「でも、失敗したって仕方ないのに…。だって佳奈ちゃんが退魔師の免許取ったの、中学を卒業した先月じゃない。新人なんだから、失敗はつきものだって。そもそも高校生の退魔師が、失敗もなく、完璧に仕事をするなんて事、無いと思うよ?」
「…それがさぁ…。高校生の退魔師でも、大人顔負けの仕事をしている人、いるらしいんだ…」
「ええっ?!ウソっ?!」
「しかも、この学校の人達らしくって…。ほら、この学校って、家が拝み屋やってる人も、何人かいるでしょ?」
佳奈子たちが住んでいるこの町、穴脇町は、地方にある田舎都市だ。
しかしこの町は、強力な霊的磁場が発生する、特殊な土地なのである…。
そのため怪異も多く、それを解決する為に、拝み屋たちが集まっているのだった。
なので、拝み屋の家の子供も多いのである。
「その人たちも、みんな高校生から退魔師デビューしてるんだって…。おばあちゃんが言うには、私はその人たちより全然ダメだって…」
「ええっ?!それって、まさか、ウチのクラスの山崎や山田の事?!アイツらも確か、家が拝み屋だったよね?…でも、アイツらがそんなに仕事が出来るとは、思えないんだけど…」
そう言って多恵は、遠くの席にいるガラの悪い彼らを見る。
「あっ、山崎君や山田君の事は知らないよ?あの2人は私と同じで、まだ実績がないと思うから…。おばあちゃんが言ってるのは、2年生とか、3年生の人達だよ」
「ああ。なんだそうなの…。…そういえば、そういうウワサも聞いた事があるような…。…でも佳奈ちゃんも頑張ってるのに、絹代さんはキッツイなぁ…」
「あはは…。だけど私が力不足なのは確かだから…。おばあちゃんは、私を早く一人前にして、後を継いでほしいんだよ…。でも跡取りがこんなんじゃ、きっと恥ずかしいんだろうな…」
佳奈子の家、八乙女家は、千年以上続く名家なのである。
異能持ちの家柄として、その名は広く知られているのだ。
しかしそのせいで、佳奈子のプレッシャーも大きいのである…。
「佳奈ちゃん…。…あのさ、佳奈ちゃんはすごく頑張ってると思うよ?修行を始めたのが、3年前からなんて思えないくらい、呪符のあつかいも上手いし…。絹代さんの言う退魔師たちが、どのくらいスゴイのかは知らないけど、佳奈ちゃんがダメなんて事、絶対ないと思う!」
「…ありがとう、多恵ちゃん。そんな風に言ってもらえて嬉しい…。…おばあちゃんも、いつか、そう思ってくれたらいいのになぁ…」
厳しい絹代は、あまり佳奈子を褒める事がないのである。
「はぁ…。名家の跡取りは大変だねぇ…」
「多恵ちゃんだって、家の跡継ぎじゃない。今月から呪具師デビュー、してるんでしょ?」
「えっ?ああ、まぁね…。私もウチの呪具屋を継ぐつもりだから…」
多恵の家は、退魔師の仕事に必要な道具・呪具を取り扱っている呪具屋なのである。
そして一人娘の多恵は、その店の跡取りなのだ。
「でもウチは、小さな店だからさ。家族も、そんなにプレッシャーをかけて来ないし。気楽なもんだよ」
「…気楽なんて言ってぇ~、多恵ちゃんいっつも、呪具の研究とか、経営の仕方とか、熱心に勉強してるくせにぃ~!かっこいいぞ~!この~!」
「そ、それくらい当然だって…!好きでやってる事だし…!」
多恵は照れているらしく、顔を赤くする。
「ふふっ!…そっか。そうだよね。私も好きで退魔師になったんだから、もっと頑張らないとね!…よぉしっ!私も早く一人前の退魔師になるために頑張るぞ~!今日も帰ったら、しっかり修行しなくっちゃ!絶対にあきらめないぞ~!」
そう言って佳奈子はファイティングポーズをとり、パンチを繰り出す。
「!…そっか…。お互い頑張ろうね!佳奈ちゃん!」
「うん!」
「あ、そうそう!私、昨日、新しい呪具のデザインを考えたんだ!見てくれる?」
「えっ?!どんなの?!どんなの?!見たい見たい!」
こうして2人は励まし合い、さらに友情を深めたのであった。




