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29. 拠点への道

評価をいただけて、大変うれしいです…!ありがとうございます…!

それと、更新が遅くなって、申し訳ありません…。

現在、私生活で、大きな出来事があり、その準備で、日々あたふたしており、小説に集中ができません…。

次の更新も、遅くなるかも…。

大変、申し訳ありません…。


 はるか千年以上も昔から、この町に伝わる飛立山(とびたちやま)伝説…。


 その伝説の外伝(がいでん)には、当時の村人たちの思いも(かた)られていた…。


 平和を、心から(のぞ)んだ、村人たちの思いが…。


 そんな伝説の外伝を、絹代(きぬよ)から聞き終わった佳奈子…。


 知りたかった話を聞けて、気分がスッキリとした佳奈子は、絹代と(とも)に笑い合う…。


 するとそこへ、(つくろ)(もの)()えた、タマがやって来た…。


「外伝の話は、もう終わりましたか…?」


「あっ…!タマちゃん…!うん…!今、聞き終わったとこだよ…!」


 佳奈子は答える。


「おや?タマ、リュックの方は、もう(なお)ったのかい…?」


 そう絹代が聞く。


「はい…!私、お裁縫(さいほう)得意(とくい)ですから…!もう、バッチリです…!」


 そう言って、タマはリュックを見せる。


「わぁ…!すご~い…!()い目がキレイで、どこを(なお)したのか、全然(ぜんぜん)()からないよ…!」


「さすがだね、タマ…!」


 佳奈子と絹代は感心(かんしん)する。


「えへへ~!なんだか、いつも以上に、うまく()えたんです…!ひょっとしたら、櫻未(さくらび)さまが、力を()してくださったのかもしれません…!」


 タマはそう、笑顔で言う…。


「えっ…?櫻未(さくらび)さまが…?…あっ!そっか…!櫻未(さくらび)さまって、裁縫(さいほう)の神様としても、知られているんだっけ…?だから、裁縫(さいほう)がうまくなる、「技芸(ぎげい)上達(じょうたつ)」のご利益(りやく)も、持っていらっしゃるんだったね…」


 佳奈子は、そう、思い出す…。


 ただ…、櫻未(さくらび)さまの神社で、一番の、ご利益(りやく)とされるのは、「技芸上達」ではない…。


 なので、佳奈子は、その事を、すっかり忘れていたのだ…。


「佳奈ちゃんも、知っているように…、千年前…、櫻未(さくらび)さまは、絶対(ぜったい)服従型(ふくじゅうがた)式神(しきがみ)にされ、心を()んでしまいました…。ですが、ごくたまに、その病状(びょうじょう)(かる)くなる時も、あったんです…。そしてそんな時は、いつも、ご自身(じしん)のお子様の衣類(いるい)に、刺繍(ししゅう)を、されていたんですよ…」


「えっ?!そうなの…?!そんな(はなし)初耳(はつみみ)なんだけど…?!」


 佳奈子は驚く…。


「あれっ…?言ってませんでしたか…?」


「うん!聞いてないよ…?!櫻未(さくらび)さまの神社には、裁縫(さいほう)上手(うま)くなるって言う「技芸上達(ぎげいじょうたつ)」の、お守りも売ってるよ…、とは聞いたけど…、自分の子供の衣類(いるい)に、刺繍(ししゅう)をしていたなんて、全然、知らなかった…。てっきり、裁縫(さいほう)をしていたのは、式神にされる前だけなんだと思ってたよ…」


「あらら…。うっかり、(つた)え忘れていたんですね…」


「…そういや、言ってなかったかもしれないねぇ…」


 そう、タマと絹代が言う…。


「もう…!2人とも…!外伝の話といい、そういう事は、もっと早く教えてよ…!」


 佳奈子は、3年前、この町にやって来たばかりで、まだ町について知らない事が多い…。


 そのせいで、なんだか、仲間(はず)れにされたようで、悲しいのだ…。


「ご、ごめんなさい、佳奈ちゃん…」


「てっきり、その話は、もう、誰かが、話したもんだと、ばっかり、思ってたんだ…」


「む~!…もう、いいよ…!それより、櫻未(さくらび)さまの刺繍(ししゅう)の話を、聞かせてよ。それって、どんな刺繍だったの…?神社に行けば、その刺繍がされた衣類(いるい)って、見せてもらえるの…?」


 佳奈子は、今、それがとても気になった…。


「いえ…、残念(ざんねん)ながら、その衣類は今、見ることが出来ません…」


「えっ?!どうして…?あっ…!櫻未(さくらび)さまの神社には、決まってる拝観日(はいかんび)が、あるとか…?」


 ちなみに、拝観日(はいかんび)とは、おもに、神社やお寺、そこの所蔵品(しょぞうひん)などを、一般(いっぱん)の人が、見せてもらえる日のことである。


 たいていの神社やお寺では、ほぼ毎日、その拝観(はいかん)を、受け付けているが、場所によっては、その公開が「特定の期間のみ」と、決められている場合があるのだ。


 そして、そういう文化財(ぶんかざい)の中には、数年に一度しか、公開がされないようなものもある…。


「いえ…、決まった拝観日(はいかんび)があるとかじゃなくて…。櫻未(さくらび)さまが刺繍(ししゅう)をした、その衣類(いるい)は…、長い時間の(あいだ)劣化(れっか)しちゃって、もう(のこ)っては、いないんです…」


「えっ…?!残ってないの…?!」


「はい…。でも、とても美しい刺繍(ししゅう)だったって、色んな書物に、書き(のこ)されているんですよ…?」


「…そっか~。残念(ざんねん)だな~。残ってたら、絶対、見てみたかったのに~」


 佳奈子はがっかりする…。


「ええ。私もそう思いました…。…あ…、それより、佳奈ちゃん、知ってますか?刺繍(ししゅう)って、(たん)なる(かざ)りじゃなくって、子供の健康や成長を願う、お守りの意味があるんですよ…?」


「えっ?!そうなの…?!」


 佳奈子は驚き、そして気づいた…。


「あ、じゃあ…、子供の衣類に刺繍をしたって事は…、櫻未(さくらび)さまは、自分の子供の事を、(きら)ってはいなかったんだ…」


 嫌悪(けんお)する相手との子でも、まだ何も、悪いことをしてない子供には、(つみ)はないと、櫻未さまは、思ったのかもしれない…。


「はい…。きっと、そうだと思います…。…ただ…、「伊氏(これうじ)のような(おこな)いをすれば、()して許さない…」…そういう気持ちも、あったんだと思います…。…でも…、「この子は、伊氏(これうじ)のようには、ならないかもしれない…。そうなってほしくない…」…きっと、そんな(ふう)に思って、刺繍(ししゅう)に願いを()めたんだと思います…」


「そっか…」


 佳奈子は、櫻未(さくらび)さまの心境(しんきょう)を思う…。


 すると、絹代が、


「…櫻未(さくらび)さまは、自分と約束をした、子供と村人を、信じてくれた…。その信頼(しんらい)裏切(うらぎ)らない(ため)にも…、アタシたちは、櫻未(さくらび)さまに、()じない生き方をしなくてはね…」


「うん…。そうだね…」


 佳奈子たち3人は、うんうん、と、うなずき合った…。


「…なんか、話を聞いたら、すごくやる気が出てきちゃった…!平和を願っていた、櫻未(さくらび)さまや、村人たちの思い…。その思いを、私も、引き()いでいかなくちゃ…!って…。そのためにも、私…、もう(まわ)りに迷惑(めいわく)をかけないように、がんばるよ…!そして必ず、一人前(いちにんまえ)退魔師(たいまし)に、なってみせる…!」


 佳奈子は、そう、気合(きあい)いを入れた。


「!そうかい」


 絹代は、そう言って、(うれ)しそうに笑う。


「…それじゃあ…、佳奈子も、気がかりが晴れて、落ち()いたことだし…、そろそろ櫻未(さくらび)さまに、ご挨拶(あいさつ)をしようかね」


「うん…!そうだね…!」


 そうして、佳奈子たち3人は、櫻未さまの(ほこら)に、しっかりと()かい合った…。


 そして、神社にお(まい)りする時のように、二礼(にれい)二拍手(にはくしゅ)をして、目をつぶり、心の中でお願いをする…。


(…櫻未(さくらび)さま…、私…、人間と妖怪が、仲良く()らしていけるように、がんばります…!そのために、きっと一人前の退魔師になってみせます…!だから、見守っていてくださいね…?)


 佳奈子は、そう、お願いをした…。


 そして…、そんな3人のいる山頂(さんちょう)を、太陽の光が、温かく、()らしていたのだった…。





「…それじゃあ、ご挨拶(あいさつ)()んだことだし…、さっそく修行(しゅぎょう)を始める…、と、言いたいところだが…、まずは、山の中腹(ちゅうふく)に作った、拠点(きょてん)に行くよ。そこでウタも()ってるはずだ」


 そう、絹代が言う。


「…うん…。…今回の修行…、ほんとはすごくイヤだけど…、私、自分の(ちから)制御(せいぎょ)するために、がんばるよ…!」


 佳奈子は、そう、宣言(せんげん)をする。


「うん!いい気合いだ!佳奈子」


「ええ…!その意気(いき)です…!」


 そう、絹代とタマが言う。


「それじゃあ、拠点に行こうか。場所が()っている、地図はもらっているんだが…、案内(あんない)をしてもらった方が、早いね…。んじゃ、タマ。拠点(きょてん)まで、案内(あんない)(たの)むよ」


「はい…!(まか)せてください…!」


 すると、その時、ニャ~ッ!という()き声がして、タマの後ろから、2匹の(ねこ)たちが|(あらわ)れた…。


「えっ?!こんな山の中に、猫…?!」


 佳奈子は(おどろ)く…。


 しかし、佳奈子とは(ちが)い、タマは、まったく驚かない…。


 それどころか…、


「あ、おはようございます…!ワサビさん…!イクラさん…!朝の挨拶(あいさつ)に来てくれたんですか…?ありがとうございます…!」


 そう、猫たちに、笑顔で話しかける…。


「えっ…?!タマちゃん、その猫たちを知ってるの…?!」


 佳奈子は驚いて聞く…。


「はい…!もちろんです…!私たち、とっても仲良(なかよ)しなんですよ…?」


「へぇ~!そうなんだ…。さすがは、もと猫…。それにしても…、こんな山の中に、猫がいるなんて、驚きなんだけど…。その子たち、野生(やせい)の猫なの…?」


 佳奈子はそう、タマに聞く…。


「いえいえ…!ワサビさんと、イクラさんは、ずっと山で()らしているノネコでは、ありませんよ…?!普段(ふだん)は、町で暮らしている、町のネコです…!」


 タマは、そう答える。


「えっ、じゃあ、なんで、こんな山の中にいるの…?」


「ワサビさんと、イクラさんは、ウチの山の、見回(みまわ)りをしてくれているんですよ。ウチの山に、(あや)しい妖怪や、悪い人たちが、入ってきていないか、どうか…って。それと、人に()てられたり、グレて、家出(いえで)をしちゃった猫たちが、ここに来ていないか…って。その見回(みまわ)りの(ため)に、ワサビさんたちを、ウチで(やと)っているんですよ」


「えっ?!そうだったの…?!あ、でも…、そういう巡回(じゅんかい)って、退魔師(たいまし)連盟(れんめい)や、警察(けいさつ)(ほう)で、やってくれているんじゃなかった…?」


 佳奈子は、そう聞いていた…。


「はい。この町の見回(みまわ)りは、退魔師連盟や、警察にいる、妖怪の(すずめ)さんたちが、(おも)にやってくれています。でも…、この町は、とても怪異(かいい)が多いですから…。雀さんたちだけじゃ、見回りが、大変なんだそうです…」


「えっ、そうなの…?」


 佳奈子は、今、初めてそれを知った…。


 ちなみに、妖怪の(すずめ)には、夜雀(よすずめ)や、袂雀(たもとすずめ)(おく)(すずめ)、と()ばれる者たちがいる。


(すずめ)さんたち、お仕事が、大変だったんだ…」


 佳奈子は、知らず、(もう)(わけ)なく思う…。


 すると、絹代が、思い出したように、口を開いた…。


「そういや、お前には、まだ、言ってなかったね…。だが、町内会(ちょうないかい)(あつ)まりなんかじゃあ、その話がよくされているんだ…。(とく)に、植物(しょくぶつ)()っぱが、(しげ)ってる季節(きせつ)は…、葉っぱの下が、(すずめ)から、見えにくいってね…。だから、なるべく、町の見回(みまわ)りに協力(きょうりょく)をしてほしい…って、お願いをされているのさ」


「そうだったんだ…。それで、この猫たちに、ウチの山の見回りを…。あっ!じゃあ、この猫たちって…、ウチで(やと)っている社員…って、ことかな…?」


 佳奈子は、そう気づいた…。


 すると、タマが…、


「はい…!そうですよ…?!ほら、2人とも、ちゃんと(くび)の所に、八乙女(やおとめ)()家紋(かもん)が入った、チョーカーをしているでしょう…?」


 そう、教えてくれる…。


「え…?あ、ほんとだ…!」


 佳奈子は、しゃがみ()み、猫たちを見て気づく…。


 タマの言う通り、猫たちの首には、八乙女家の、家紋(かもん)が入ったチョーカーが、しっかりと、あったのだった…。


 ちなみに、八乙女家の家紋(かもん)というのは、中学校の理科の授業で(なら)う、電気抵抗(ていこう)の大きさを(あらわ)単位(たんい)…、オーム(記号:Ω)の形に、とてもよく()ている…。



「じゃあ、この猫たちが、ウチの社員ってことは…、ひょっとして…、私と、この子たちって…、もう前に、会ってるのかな…?」


 佳奈子は、猫たちに聞く…。


 すると、猫たちは、ニャ~ッ…!と、肯定(こうてい)するように鳴いた…。


「ええ。佳奈ちゃんは、前に家で、彼らと、会ってますよ…?ただ、その時は、(ほか)にもたくさん、猫がいたから、気づかなかったのかもしれませんね…」


 そう、タマが言う…。


「そうだったんだ…。ごめんね、気がつかなくて…。(あらた)めて、よろしくね…?ワサビちゃん。イクラちゃん」


 佳奈子は、そう(あやま)って、猫たちをなでる…。


 なでられた猫たちは、ゴロゴロ…と鳴いて、とても(うれ)しそうだ…。


 しかし、そのあと、なぜか、猫のワサビは、ニャ、ニャ~ッ…!と、タマを見て鳴き始めた…。


 どうやら、ワサビは、ネコ()で、何かタマに、話をしているようだ…。


 すると、タマは…、


「えっ…!そ、そんな…!だ、大丈夫(だいじょうぶ)ですよ~!」


 そう、ワサビに()かって、遠慮(えんりょ)するように、言葉を返している…。


「ん…?どうしたんだい…?タマ。ワサビは、なんて言ってるんだい…?」


 そう、絹代が聞く…。


 すると、タマは、なぜか、とても言いづらそうに、ネコ語の解説(かいせつ)を始めた…。


「えっ?!…えっと、その…。…ワサビさんは、その…。…また、私が…、この山で、迷子(まいご)になるかもしれないから…、道案内(みちあんない)をしてあげます…って…、そう言ってくれてるんです…」


「なんだって…?!」


「タマちゃん、この山で迷子(まいご)になったの…?!」


 佳奈子と絹代は驚く…。


「うっ…。そ、それは、その…。この山って、しょっちゅう、来るわけじゃ、ありませんし…。それに、ここって、鳥や虫も多いから、つい、気になってしまって…。それで、ちょっと、ルートを(はず)れてしまった…というか…」


 タマは、もじもじと、()ずかしそうに言う…。


「…そっか~。まぁ、(だれ)にだって、一度くらい、迷子の経験(けいけん)は、あるよね~」


 そう、佳奈子が言う…。


 しかし、なぜか、絹代は、(あや)しむように、タマを見た…。


 そして…、


「…タマ…、お前…、ここで拠点(きょてん)づくりを始めてから、迷子(まいご)になったのは、一回だけかい…?」


 そう、問いかける…。


 すると、タマは、なぜか、ビクッ…!と(ふる)えた…。


「?タマちゃん…?」


「…タマ…、お前…、ここで何回、迷子(まいご)になった…?」


 そう、絹代が聞く…。


 すると、タマは、とても()ずかしそうに、口を開いた…。


「うう~っ…。…6回です…」


「えっ?!6回…?!6回って、ここ数日(すうじつ)で…?!」


 佳奈子は驚く…。


一体(いったい)、どうして、そんなに、迷子(まいご)になっちゃったの…?!…だって、ここって、登山道(とざんどう)はないけど…、(ほこら)がある山頂(さんちょう)に行くルートには、目印(めじるし)が、たくさん、あったよね…?(まよ)わない(ため)の…。あれって、昔っから、あるんでしょ…?」


 佳奈子は、さっき(のぼ)って来た、登山(とざん)ルートを思い出し、話を続ける…。


「それに…、今回、作った、拠点(きょてん)に行くルートにも、とっくに、その目印をつけた…って、言ってなかった…?目印が()ってる、地図もくれたし…。…あっ!迷子(まいご)になったのは、その目印を、つける前とか…?」


 佳奈子は、そう思って聞く…。


 しかし、タマは…、


「…いえ、その…、…目印(めじるし)をつけた(あと)にも…、何回か、迷子になってしまって…」


 そう、()ずかしそうに言う…。


「ええっ…?!目印をつけた後にも…?!」


 佳奈子は、仰天(ぎょうてん)する…。


 すると、タマは…、


「そ、その…、山って、誘惑(ゆうわく)が、たくさんあって…。つい、うっかり、しちゃうっていうか…」


 そう、迷子になる理由を言った…。


 しかし、それを聞いた佳奈子は、余計(よけい)に驚く…。


「…つい、うっかり、迷子(まいご)になるのが、数日(すうじつ)で6回も…」


「うっ…!」


「…ちなみに、タマちゃん…、どこか、体の具合(ぐあい)が、悪かったりする…?」


 佳奈子は、一応(いちおう)確認(かくにん)をした…。


「え?いいえ…?2週間前に、病院の健康(けんこう)診断(しんだん)に行ってきましたけど…、その時に先生には…「キミは、健康(けんこう)見本(みほん)みたいな人だねぇ~!」って、()められました…!」


「…そう…」


「?」


「…はぁ…。…やっぱり、タマは、天然(てんねん)だねぇ…」


 そう絹代は言った…。


「うん…。そうだね…」


 佳奈子も、それに同意(どうい)する…。


 すると、タマが…、


「えっ?!天然(てんねん)…?!そ、そんな事、ないですって…!…(たし)かに私、ちょっとだけドジで、(わす)れっぽいですけど…、(だれ)にだって、うっかりミスや、ど(わす)れくらい、あるはずです…!だから、私、天然(てんねん)じゃ、ありません…!」


 そう、主張(しゅちょう)をする…。


 しかし、絹代は、そんなタマを、とても(いた)ましそうに見て、口を開いた…。


「…あのね、タマ…。そりゃあ、(だれ)しも、うっかりミスくらい、するもんさ…。けどね…、さすがに、数日で6回も、うっかり迷子(まいご)になる…、ってヤツは、そうそう、いないんだ…。何かの病気で、そういう症状(しょうじょう)が出るってことはあるが…、お前は、見本(みほん)になれるくらい健康(けんこう)だ…。…となると…、お前が、迷子(まいご)()り返す理由(りゆう)は、もう一つしかない…。そう…、天然だからさ…。お前はね…、タマ…、(まぎ)れもなく、天然なんだ…。これは、もう、間違(まちが)いないよ…」


 絹代は、そう言って、タマの(かた)に、そっと手を()いた…。


「そ、そんな…!」


 タマは、絹代の言葉に、ショックを受ける…。


 すると…、そんなタマの、もう片方(かたほう)(かた)に、今度は、佳奈子が、手を置いて、話を始めた…。


「タマちゃん…。元気出しなよ…!(たし)かに、タマちゃんは天然だけど、いい所だって、いっぱいあるじゃない…!天然な人って、明るいし、なんだか(なご)むし、(だれ)(たい)しても態度(たいど)を変えなくて、陰口(かげぐち)も言ったりしないから、天然な人が好きだって人、たくさんいるよ…?もちろん、私も好き…!」


 佳奈子は、そう、笑顔で言って、話を続ける…。


「まぁ…、天然の人って、うっかりミスや、ど(わす)れが、すっごく多いし、趣味(しゅみ)が変だし、鈍感(どんかん)で、(だま)されやすくって、空気が読めなかったりもするけど…、そこが、また、漫才(まんざい)のボケみたいで楽しいから、一緒(いっしょ)に、いたいって思うんだよね…!だから、そんなに落ち()まないで…?タマちゃん…!きっと、(なや)んだところで、タマちゃんが天然なのは、変わらないしさ…!」


「!!!」


 タマは、ズガ~ン…!と(はげ)しいショックを受けた…。


 ちなみに…、佳奈子には、自分が(ひど)い事を言っている、という自覚(じかく)がない…。


 人は(だれ)しも、こうして、知らず知らずのうちに、誰かを(きず)つけてしまうのだ…。


 そのうえ、佳奈子は、自分も、ど忘れが多くて、ちょっと天然ぎみだ…、という事実(じじつ)にも、気づいていなかった…。


 人は、案外(あんがい)、自分のことが、よく()かっていないものなのである…。


「まぁ、とにかく…、何回も迷子(まいご)になっているタマに、道案内(みちあんない)を、(たの)むのは、危険だね…。…ってことで…、ワサビと、イクラ…。お前たちは、案内をするために、来てくれたんだろう…?じゃあ、さっそく、拠点まで、案内を(たの)めるかい…?」


 絹代は、そう、猫たちに聞く…。


 すると、2匹の猫たちは、


「「ニャ~ッ…!」」


 …と、元気よく()いた…。


 そして、猫たちは、()り返りながらも、歩き始める…。


「あっ…!これって、きっと、ついて来い、って、言ってるんだよね…?」


 佳奈子は気づく…。


「ああ、そうだろうね。んじゃ、道案内、よろしく頼むよ、お前たち。…あ、けど、佳奈子…、一応(いちおう)(まわ)りの目印を、確認(かくにん)しながら、歩くようにね…」


「うん…!()かったよ…!」


「んじゃ、タマも行くよ…!ほら…!シャキッとしな…!」


「…はい~」


 タマは、フラフラしながらも、返事をして歩きだす…。


 そうして、佳奈子たち3人は、2匹の猫たちに案内されて、拠点(きょてん)があるという、山の中腹(ちゅうふく)へと()かった…。



 拠点まで、道案内をしてくれる猫たちは、(あき)らかに、歩きやすいポイントを(えら)んで、そこに、佳奈子たちを、誘導(ゆうどう)してくれる…。


 しかも、歩きづらい場所では、必ず、立ち止まって、佳奈子たちが来るのを、()っていてくれるのだ…。


「ありがとう…!ワサビちゃん…!イクラちゃん…!」


 佳奈子は、やさしい猫たちに、お(れい)を言った…。


 すると、猫たちは…、


「「ニャ~ッ!」」


 …と、元気に鳴いて、しっぽを()ってくれるのだった…。




 そうして…、山を(くだ)り始めてから、結構(けっこう)な時間がたった(ころ)…、佳奈子は、大きな(いわ)を見つけた…。


「わ~!面白(おもしろ)い形の(いわ)~!まるで人の顔みたい…!それも、()ぼけて、よだれをたらしてる顔に、そっくりだ~!」


 佳奈子は、岩を見て、そう思う…。


 すると、佳奈子より(うし)ろを歩いていた絹代がそれを聞いて…、


「!佳奈子…!それが、たぶん、目印の、ねぼけ岩だ…!拠点の、すぐ近くにあるっていう…!」


 そう、大声で(さけ)んだ…。


「えっ…?!ねぼけ岩…?…ああ~!ウタちゃんが、昨日、言ってたヤツか…。それにしても、ほんとに、ねぼけた顔にそっくりだ~!」


 佳奈子は、岩を見て笑った。


 一方…、絹代は、近くに来て、岩を確認すると、持っていた地図を広げる…。


「…うん…。今まで、見つけた目印は、ちゃんと、地図の番号通りだった…。ねぼけ岩も見つけたし…、間違いなく、正しいルートを(すす)んでるね…。って事は…、そろそろ拠点が、見えてきても、いいはずなんだが…」


 そう絹代が言う…。


 すると、それまで、しょんぼりと、していたタマが、急に(はな)を、ピクピクと動かし始めた…。


「!くんくんくん…!…この(にお)いは…!」


「?!どうしたんだい?タマ」


美味(おい)しい、ごはんの(にお)いがします…!これは、きっと、拠点からです…!」


 タマは、そう、力強(ちからづよ)く言う。


「おお…!そうかい…!」


「えっ…?!ほんと…?!…くんくんくん…。…?…私には、なんの(にお)いもしないけど…」


 佳奈子は、タマと同じように鼻を動かしたが、わからない…。


「タマは、化け猫だからね。人間より、嗅覚(きゅうかく)がいいのさ」


「そっか…!」


「タマ。その匂いが、どっから来てるか、分かるかい…?」


「はい…!わかります…!あっちからです…!ついて来てください…!」


「あ!うん…!」


(たの)んだよ…!タマ…!」


「はい…!」


 そうして、佳奈子と絹代は、タマと2匹の猫に(みちび)かれ、山の中を、進み始めた…。




「くんくんくん…。(にお)いが、どんどん、強くなっています…!拠点まで、あと少しです…!」


 タマが、そう、確信(かくしん)をもって言う…。


「…くんくんくん…。あっ…!ほんとだ…!私にも、(にお)いが、分かるようになってきたよ…!いい匂い~!これって、きっと、ウタちゃんが、料理を作ってくれてるんだよね…?…でも、なんだろう…?…さっきから、なんか、変な音が聞こえてこない…?…なんの音だっけ…?これ…」


 佳奈子は、聞こえてくる、なぞの音を、不思議に思う…。


「…ほんとだねぇ…。どっかで聞いたような音なんだが…。なんだったっけね…?」


 絹代も、そう言って、不思議がる。


 そう…、佳奈子たちの目指す方向から、何か、シューッ…!シューッ…!という音が、ずっと聞こえてきているのだ…。


 リズムを(きざ)むような、その音は、拠点(きょてん)に近づくにつれ、だんだんと大きくなっている…。


 佳奈子たちは、その音を、不思議に思いながらも、拠点へと向かった…。


 すると…、


「あっ…!見えましたよ…!あれが、私たちの拠点です…!」


 タマが、そう言って、前を指さす…。


「へぇ~!あそこが拠点か~!あっ…!あそこにいるの、ウタちゃんだ…!…お~い…!ウタちゃ~ん…!」


 佳奈子は、ウタ見つけ、名前を呼んだ。


 しかし…、ウタは気づかない…。


「おや…?何かに夢中(むちゅう)で、気づかないみたいだね…」


 そう、絹代が言う。


「…っていうか、ウタちゃん…、何をしてるんだろう…?」


 佳奈子たちは歩きながら、ウタを見る…。


 ウタは、()き火の近くに(すわ)っていた…。


 その()き火の上では、大きな(なべ)が、グツグツと湯気(ゆげ)を立てている…。


 きっと、ウタは、昼食(ちゅうしょく)準備(じゅんび)をしているのだろう…。


 けれど…、ウタの後ろには、おかしなものが見えた…。


 おかしなもの…、それは…、物干(ものほ)竿(ざお)()るされた、カラスの姿(すがた)だった…。


 そして、その()るされたカラスの前で、ウタは、「うふふふ~!」と笑いながら、包丁(ほうちょう)()いでいるのだった…。


 そう…、ずっと聞こえていた、シューッ…!シューッ…!という音は、ウタが、包丁(ほうちょう)()いでいる音だったのだ…。


 …その光景(こうけい)は、なぜか、とても異様(いよう)に見えた…。


 なので、佳奈子と絹代は、言葉をなくし、動けなくなる…。


 せっかく拠点に()いたのに…、見知(みし)ったウタがそこにいるのに…、なぜか、これ以上、ウタに近づきたくない…。というか、動けない…!なに、この状況(じょうきょう)…?!


 佳奈子は、(はげ)しい動機(どうき)を感じながらも、そう思った…。


 そして…、そんな佳奈子たちの前で、ウタは、なおも、「うふふふ~!」と笑いながら、包丁(ほうちょう)()ぎ続けているのであった…。





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