29. 拠点への道
評価をいただけて、大変うれしいです…!ありがとうございます…!
それと、更新が遅くなって、申し訳ありません…。
現在、私生活で、大きな出来事があり、その準備で、日々あたふたしており、小説に集中ができません…。
次の更新も、遅くなるかも…。
大変、申し訳ありません…。
はるか千年以上も昔から、この町に伝わる飛立山伝説…。
その伝説の外伝には、当時の村人たちの思いも語られていた…。
平和を、心から望んだ、村人たちの思いが…。
そんな伝説の外伝を、絹代から聞き終わった佳奈子…。
知りたかった話を聞けて、気分がスッキリとした佳奈子は、絹代と共に笑い合う…。
するとそこへ、繕い物を終えた、タマがやって来た…。
「外伝の話は、もう終わりましたか…?」
「あっ…!タマちゃん…!うん…!今、聞き終わったとこだよ…!」
佳奈子は答える。
「おや?タマ、リュックの方は、もう直ったのかい…?」
そう絹代が聞く。
「はい…!私、お裁縫は得意ですから…!もう、バッチリです…!」
そう言って、タマはリュックを見せる。
「わぁ…!すご~い…!縫い目がキレイで、どこを直したのか、全然、分からないよ…!」
「さすがだね、タマ…!」
佳奈子と絹代は感心する。
「えへへ~!なんだか、いつも以上に、うまく縫えたんです…!ひょっとしたら、櫻未さまが、力を貸してくださったのかもしれません…!」
タマはそう、笑顔で言う…。
「えっ…?櫻未さまが…?…あっ!そっか…!櫻未さまって、裁縫の神様としても、知られているんだっけ…?だから、裁縫がうまくなる、「技芸上達」のご利益も、持っていらっしゃるんだったね…」
佳奈子は、そう、思い出す…。
ただ…、櫻未さまの神社で、一番の、ご利益とされるのは、「技芸上達」ではない…。
なので、佳奈子は、その事を、すっかり忘れていたのだ…。
「佳奈ちゃんも、知っているように…、千年前…、櫻未さまは、絶対服従型の式神にされ、心を病んでしまいました…。ですが、ごくたまに、その病状が軽くなる時も、あったんです…。そしてそんな時は、いつも、ご自身のお子様の衣類に、刺繍を、されていたんですよ…」
「えっ?!そうなの…?!そんな話、初耳なんだけど…?!」
佳奈子は驚く…。
「あれっ…?言ってませんでしたか…?」
「うん!聞いてないよ…?!櫻未さまの神社には、裁縫が上手くなるって言う「技芸上達」の、お守りも売ってるよ…、とは聞いたけど…、自分の子供の衣類に、刺繍をしていたなんて、全然、知らなかった…。てっきり、裁縫をしていたのは、式神にされる前だけなんだと思ってたよ…」
「あらら…。うっかり、伝え忘れていたんですね…」
「…そういや、言ってなかったかもしれないねぇ…」
そう、タマと絹代が言う…。
「もう…!2人とも…!外伝の話といい、そういう事は、もっと早く教えてよ…!」
佳奈子は、3年前、この町にやって来たばかりで、まだ町について知らない事が多い…。
そのせいで、なんだか、仲間外れにされたようで、悲しいのだ…。
「ご、ごめんなさい、佳奈ちゃん…」
「てっきり、その話は、もう、誰かが、話したもんだと、ばっかり、思ってたんだ…」
「む~!…もう、いいよ…!それより、櫻未さまの刺繍の話を、聞かせてよ。それって、どんな刺繍だったの…?神社に行けば、その刺繍がされた衣類って、見せてもらえるの…?」
佳奈子は、今、それがとても気になった…。
「いえ…、残念ながら、その衣類は今、見ることが出来ません…」
「えっ?!どうして…?あっ…!櫻未さまの神社には、決まってる拝観日が、あるとか…?」
ちなみに、拝観日とは、おもに、神社やお寺、そこの所蔵品などを、一般の人が、見せてもらえる日のことである。
たいていの神社やお寺では、ほぼ毎日、その拝観を、受け付けているが、場所によっては、その公開が「特定の期間のみ」と、決められている場合があるのだ。
そして、そういう文化財の中には、数年に一度しか、公開がされないようなものもある…。
「いえ…、決まった拝観日があるとかじゃなくて…。櫻未さまが刺繍をした、その衣類は…、長い時間の間に劣化しちゃって、もう残っては、いないんです…」
「えっ…?!残ってないの…?!」
「はい…。でも、とても美しい刺繍だったって、色んな書物に、書き残されているんですよ…?」
「…そっか~。残念だな~。残ってたら、絶対、見てみたかったのに~」
佳奈子はがっかりする…。
「ええ。私もそう思いました…。…あ…、それより、佳奈ちゃん、知ってますか?刺繍って、単なる飾りじゃなくって、子供の健康や成長を願う、お守りの意味があるんですよ…?」
「えっ?!そうなの…?!」
佳奈子は驚き、そして気づいた…。
「あ、じゃあ…、子供の衣類に刺繍をしたって事は…、櫻未さまは、自分の子供の事を、嫌ってはいなかったんだ…」
嫌悪する相手との子でも、まだ何も、悪いことをしてない子供には、罪はないと、櫻未さまは、思ったのかもしれない…。
「はい…。きっと、そうだと思います…。…ただ…、「伊氏のような行いをすれば、決して許さない…」…そういう気持ちも、あったんだと思います…。…でも…、「この子は、伊氏のようには、ならないかもしれない…。そうなってほしくない…」…きっと、そんな風に思って、刺繍に願いを込めたんだと思います…」
「そっか…」
佳奈子は、櫻未さまの心境を思う…。
すると、絹代が、
「…櫻未さまは、自分と約束をした、子供と村人を、信じてくれた…。その信頼を裏切らない為にも…、アタシたちは、櫻未さまに、恥じない生き方をしなくてはね…」
「うん…。そうだね…」
佳奈子たち3人は、うんうん、と、うなずき合った…。
「…なんか、話を聞いたら、すごくやる気が出てきちゃった…!平和を願っていた、櫻未さまや、村人たちの思い…。その思いを、私も、引き継いでいかなくちゃ…!って…。そのためにも、私…、もう周りに迷惑をかけないように、がんばるよ…!そして必ず、一人前の退魔師に、なってみせる…!」
佳奈子は、そう、気合いを入れた。
「!そうかい」
絹代は、そう言って、嬉しそうに笑う。
「…それじゃあ…、佳奈子も、気がかりが晴れて、落ち着いたことだし…、そろそろ櫻未さまに、ご挨拶をしようかね」
「うん…!そうだね…!」
そうして、佳奈子たち3人は、櫻未さまの祠に、しっかりと向かい合った…。
そして、神社にお参りする時のように、二礼二拍手をして、目をつぶり、心の中でお願いをする…。
(…櫻未さま…、私…、人間と妖怪が、仲良く暮らしていけるように、がんばります…!そのために、きっと一人前の退魔師になってみせます…!だから、見守っていてくださいね…?)
佳奈子は、そう、お願いをした…。
そして…、そんな3人のいる山頂を、太陽の光が、温かく、照らしていたのだった…。
「…それじゃあ、ご挨拶も済んだことだし…、さっそく修行を始める…、と、言いたいところだが…、まずは、山の中腹に作った、拠点に行くよ。そこでウタも待ってるはずだ」
そう、絹代が言う。
「…うん…。…今回の修行…、ほんとはすごくイヤだけど…、私、自分の力を制御するために、がんばるよ…!」
佳奈子は、そう、宣言をする。
「うん!いい気合いだ!佳奈子」
「ええ…!その意気です…!」
そう、絹代とタマが言う。
「それじゃあ、拠点に行こうか。場所が載っている、地図はもらっているんだが…、案内をしてもらった方が、早いね…。んじゃ、タマ。拠点まで、案内を頼むよ」
「はい…!任せてください…!」
すると、その時、ニャ~ッ!という鳴き声がして、タマの後ろから、2匹の猫たちが|現れた…。
「えっ?!こんな山の中に、猫…?!」
佳奈子は驚く…。
しかし、佳奈子とは違い、タマは、まったく驚かない…。
それどころか…、
「あ、おはようございます…!ワサビさん…!イクラさん…!朝の挨拶に来てくれたんですか…?ありがとうございます…!」
そう、猫たちに、笑顔で話しかける…。
「えっ…?!タマちゃん、その猫たちを知ってるの…?!」
佳奈子は驚いて聞く…。
「はい…!もちろんです…!私たち、とっても仲良しなんですよ…?」
「へぇ~!そうなんだ…。さすがは、もと猫…。それにしても…、こんな山の中に、猫がいるなんて、驚きなんだけど…。その子たち、野生の猫なの…?」
佳奈子はそう、タマに聞く…。
「いえいえ…!ワサビさんと、イクラさんは、ずっと山で暮らしているノネコでは、ありませんよ…?!普段は、町で暮らしている、町のネコです…!」
タマは、そう答える。
「えっ、じゃあ、なんで、こんな山の中にいるの…?」
「ワサビさんと、イクラさんは、ウチの山の、見回りをしてくれているんですよ。ウチの山に、怪しい妖怪や、悪い人たちが、入ってきていないか、どうか…って。それと、人に捨てられたり、グレて、家出をしちゃった猫たちが、ここに来ていないか…って。その見回りの為に、ワサビさんたちを、ウチで雇っているんですよ」
「えっ?!そうだったの…?!あ、でも…、そういう巡回って、退魔師連盟や、警察の方で、やってくれているんじゃなかった…?」
佳奈子は、そう聞いていた…。
「はい。この町の見回りは、退魔師連盟や、警察にいる、妖怪の雀さんたちが、主にやってくれています。でも…、この町は、とても怪異が多いですから…。雀さんたちだけじゃ、見回りが、大変なんだそうです…」
「えっ、そうなの…?」
佳奈子は、今、初めてそれを知った…。
ちなみに、妖怪の雀には、夜雀や、袂雀、送り雀、と呼ばれる者たちがいる。
「雀さんたち、お仕事が、大変だったんだ…」
佳奈子は、知らず、申し訳なく思う…。
すると、絹代が、思い出したように、口を開いた…。
「そういや、お前には、まだ、言ってなかったね…。だが、町内会の集まりなんかじゃあ、その話がよくされているんだ…。特に、植物の葉っぱが、茂ってる季節は…、葉っぱの下が、雀から、見えにくいってね…。だから、なるべく、町の見回りに協力をしてほしい…って、お願いをされているのさ」
「そうだったんだ…。それで、この猫たちに、ウチの山の見回りを…。あっ!じゃあ、この猫たちって…、ウチで雇っている社員…って、ことかな…?」
佳奈子は、そう気づいた…。
すると、タマが…、
「はい…!そうですよ…?!ほら、2人とも、ちゃんと首の所に、八乙女家の家紋が入った、チョーカーをしているでしょう…?」
そう、教えてくれる…。
「え…?あ、ほんとだ…!」
佳奈子は、しゃがみ込み、猫たちを見て気づく…。
タマの言う通り、猫たちの首には、八乙女家の、家紋が入ったチョーカーが、しっかりと、あったのだった…。
ちなみに、八乙女家の家紋というのは、中学校の理科の授業で習う、電気抵抗の大きさを表す単位…、オーム(記号:Ω)の形に、とてもよく似ている…。
「じゃあ、この猫たちが、ウチの社員ってことは…、ひょっとして…、私と、この子たちって…、もう前に、会ってるのかな…?」
佳奈子は、猫たちに聞く…。
すると、猫たちは、ニャ~ッ…!と、肯定するように鳴いた…。
「ええ。佳奈ちゃんは、前に家で、彼らと、会ってますよ…?ただ、その時は、他にもたくさん、猫がいたから、気づかなかったのかもしれませんね…」
そう、タマが言う…。
「そうだったんだ…。ごめんね、気がつかなくて…。改めて、よろしくね…?ワサビちゃん。イクラちゃん」
佳奈子は、そう謝って、猫たちをなでる…。
なでられた猫たちは、ゴロゴロ…と鳴いて、とても嬉しそうだ…。
しかし、そのあと、なぜか、猫のワサビは、ニャ、ニャ~ッ…!と、タマを見て鳴き始めた…。
どうやら、ワサビは、ネコ語で、何かタマに、話をしているようだ…。
すると、タマは…、
「えっ…!そ、そんな…!だ、大丈夫ですよ~!」
そう、ワサビに向かって、遠慮するように、言葉を返している…。
「ん…?どうしたんだい…?タマ。ワサビは、なんて言ってるんだい…?」
そう、絹代が聞く…。
すると、タマは、なぜか、とても言いづらそうに、ネコ語の解説を始めた…。
「えっ?!…えっと、その…。…ワサビさんは、その…。…また、私が…、この山で、迷子になるかもしれないから…、道案内をしてあげます…って…、そう言ってくれてるんです…」
「なんだって…?!」
「タマちゃん、この山で迷子になったの…?!」
佳奈子と絹代は驚く…。
「うっ…。そ、それは、その…。この山って、しょっちゅう、来るわけじゃ、ありませんし…。それに、ここって、鳥や虫も多いから、つい、気になってしまって…。それで、ちょっと、ルートを外れてしまった…というか…」
タマは、もじもじと、恥ずかしそうに言う…。
「…そっか~。まぁ、誰にだって、一度くらい、迷子の経験は、あるよね~」
そう、佳奈子が言う…。
しかし、なぜか、絹代は、怪しむように、タマを見た…。
そして…、
「…タマ…、お前…、ここで拠点づくりを始めてから、迷子になったのは、一回だけかい…?」
そう、問いかける…。
すると、タマは、なぜか、ビクッ…!と震えた…。
「?タマちゃん…?」
「…タマ…、お前…、ここで何回、迷子になった…?」
そう、絹代が聞く…。
すると、タマは、とても恥ずかしそうに、口を開いた…。
「うう~っ…。…6回です…」
「えっ?!6回…?!6回って、ここ数日で…?!」
佳奈子は驚く…。
「一体、どうして、そんなに、迷子になっちゃったの…?!…だって、ここって、登山道はないけど…、祠がある山頂に行くルートには、目印が、たくさん、あったよね…?迷わない為の…。あれって、昔っから、あるんでしょ…?」
佳奈子は、さっき登って来た、登山ルートを思い出し、話を続ける…。
「それに…、今回、作った、拠点に行くルートにも、とっくに、その目印をつけた…って、言ってなかった…?目印が載ってる、地図もくれたし…。…あっ!迷子になったのは、その目印を、つける前とか…?」
佳奈子は、そう思って聞く…。
しかし、タマは…、
「…いえ、その…、…目印をつけた後にも…、何回か、迷子になってしまって…」
そう、恥ずかしそうに言う…。
「ええっ…?!目印をつけた後にも…?!」
佳奈子は、仰天する…。
すると、タマは…、
「そ、その…、山って、誘惑が、たくさんあって…。つい、うっかり、しちゃうっていうか…」
そう、迷子になる理由を言った…。
しかし、それを聞いた佳奈子は、余計に驚く…。
「…つい、うっかり、迷子になるのが、数日で6回も…」
「うっ…!」
「…ちなみに、タマちゃん…、どこか、体の具合が、悪かったりする…?」
佳奈子は、一応、確認をした…。
「え?いいえ…?2週間前に、病院の健康診断に行ってきましたけど…、その時に先生には…「キミは、健康の見本みたいな人だねぇ~!」って、褒められました…!」
「…そう…」
「?」
「…はぁ…。…やっぱり、タマは、天然だねぇ…」
そう絹代は言った…。
「うん…。そうだね…」
佳奈子も、それに同意する…。
すると、タマが…、
「えっ?!天然…?!そ、そんな事、ないですって…!…確かに私、ちょっとだけドジで、忘れっぽいですけど…、誰にだって、うっかりミスや、ど忘れくらい、あるはずです…!だから、私、天然じゃ、ありません…!」
そう、主張をする…。
しかし、絹代は、そんなタマを、とても痛ましそうに見て、口を開いた…。
「…あのね、タマ…。そりゃあ、誰しも、うっかりミスくらい、するもんさ…。けどね…、さすがに、数日で6回も、うっかり迷子になる…、ってヤツは、そうそう、いないんだ…。何かの病気で、そういう症状が出るってことはあるが…、お前は、見本になれるくらい健康だ…。…となると…、お前が、迷子を繰り返す理由は、もう一つしかない…。そう…、天然だからさ…。お前はね…、タマ…、紛れもなく、天然なんだ…。これは、もう、間違いないよ…」
絹代は、そう言って、タマの肩に、そっと手を置いた…。
「そ、そんな…!」
タマは、絹代の言葉に、ショックを受ける…。
すると…、そんなタマの、もう片方の肩に、今度は、佳奈子が、手を置いて、話を始めた…。
「タマちゃん…。元気出しなよ…!確かに、タマちゃんは天然だけど、いい所だって、いっぱいあるじゃない…!天然な人って、明るいし、なんだか和むし、誰に対しても態度を変えなくて、陰口も言ったりしないから、天然な人が好きだって人、たくさんいるよ…?もちろん、私も好き…!」
佳奈子は、そう、笑顔で言って、話を続ける…。
「まぁ…、天然の人って、うっかりミスや、ど忘れが、すっごく多いし、趣味が変だし、鈍感で、騙されやすくって、空気が読めなかったりもするけど…、そこが、また、漫才のボケみたいで楽しいから、一緒に、いたいって思うんだよね…!だから、そんなに落ち込まないで…?タマちゃん…!きっと、悩んだところで、タマちゃんが天然なのは、変わらないしさ…!」
「!!!」
タマは、ズガ~ン…!と激しいショックを受けた…。
ちなみに…、佳奈子には、自分が酷い事を言っている、という自覚がない…。
人は誰しも、こうして、知らず知らずのうちに、誰かを傷つけてしまうのだ…。
そのうえ、佳奈子は、自分も、ど忘れが多くて、ちょっと天然ぎみだ…、という事実にも、気づいていなかった…。
人は、案外、自分のことが、よく分かっていないものなのである…。
「まぁ、とにかく…、何回も迷子になっているタマに、道案内を、頼むのは、危険だね…。…ってことで…、ワサビと、イクラ…。お前たちは、案内をするために、来てくれたんだろう…?じゃあ、さっそく、拠点まで、案内を頼めるかい…?」
絹代は、そう、猫たちに聞く…。
すると、2匹の猫たちは、
「「ニャ~ッ…!」」
…と、元気よく鳴いた…。
そして、猫たちは、振り返りながらも、歩き始める…。
「あっ…!これって、きっと、ついて来い、って、言ってるんだよね…?」
佳奈子は気づく…。
「ああ、そうだろうね。んじゃ、道案内、よろしく頼むよ、お前たち。…あ、けど、佳奈子…、一応、周りの目印を、確認しながら、歩くようにね…」
「うん…!分かったよ…!」
「んじゃ、タマも行くよ…!ほら…!シャキッとしな…!」
「…はい~」
タマは、フラフラしながらも、返事をして歩きだす…。
そうして、佳奈子たち3人は、2匹の猫たちに案内されて、拠点があるという、山の中腹へと向かった…。
拠点まで、道案内をしてくれる猫たちは、明らかに、歩きやすいポイントを選んで、そこに、佳奈子たちを、誘導してくれる…。
しかも、歩きづらい場所では、必ず、立ち止まって、佳奈子たちが来るのを、待っていてくれるのだ…。
「ありがとう…!ワサビちゃん…!イクラちゃん…!」
佳奈子は、やさしい猫たちに、お礼を言った…。
すると、猫たちは…、
「「ニャ~ッ!」」
…と、元気に鳴いて、しっぽを振ってくれるのだった…。
そうして…、山を下り始めてから、結構な時間がたった頃…、佳奈子は、大きな岩を見つけた…。
「わ~!面白い形の岩~!まるで人の顔みたい…!それも、寝ぼけて、よだれをたらしてる顔に、そっくりだ~!」
佳奈子は、岩を見て、そう思う…。
すると、佳奈子より後ろを歩いていた絹代がそれを聞いて…、
「!佳奈子…!それが、たぶん、目印の、ねぼけ岩だ…!拠点の、すぐ近くにあるっていう…!」
そう、大声で叫んだ…。
「えっ…?!ねぼけ岩…?…ああ~!ウタちゃんが、昨日、言ってたヤツか…。それにしても、ほんとに、ねぼけた顔にそっくりだ~!」
佳奈子は、岩を見て笑った。
一方…、絹代は、近くに来て、岩を確認すると、持っていた地図を広げる…。
「…うん…。今まで、見つけた目印は、ちゃんと、地図の番号通りだった…。ねぼけ岩も見つけたし…、間違いなく、正しいルートを進んでるね…。って事は…、そろそろ拠点が、見えてきても、いいはずなんだが…」
そう絹代が言う…。
すると、それまで、しょんぼりと、していたタマが、急に鼻を、ピクピクと動かし始めた…。
「!くんくんくん…!…この匂いは…!」
「?!どうしたんだい?タマ」
「美味しい、ごはんの匂いがします…!これは、きっと、拠点からです…!」
タマは、そう、力強く言う。
「おお…!そうかい…!」
「えっ…?!ほんと…?!…くんくんくん…。…?…私には、なんの匂いもしないけど…」
佳奈子は、タマと同じように鼻を動かしたが、わからない…。
「タマは、化け猫だからね。人間より、嗅覚がいいのさ」
「そっか…!」
「タマ。その匂いが、どっから来てるか、分かるかい…?」
「はい…!わかります…!あっちからです…!ついて来てください…!」
「あ!うん…!」
「頼んだよ…!タマ…!」
「はい…!」
そうして、佳奈子と絹代は、タマと2匹の猫に導かれ、山の中を、進み始めた…。
「くんくんくん…。匂いが、どんどん、強くなっています…!拠点まで、あと少しです…!」
タマが、そう、確信をもって言う…。
「…くんくんくん…。あっ…!ほんとだ…!私にも、匂いが、分かるようになってきたよ…!いい匂い~!これって、きっと、ウタちゃんが、料理を作ってくれてるんだよね…?…でも、なんだろう…?…さっきから、なんか、変な音が聞こえてこない…?…なんの音だっけ…?これ…」
佳奈子は、聞こえてくる、なぞの音を、不思議に思う…。
「…ほんとだねぇ…。どっかで聞いたような音なんだが…。なんだったっけね…?」
絹代も、そう言って、不思議がる。
そう…、佳奈子たちの目指す方向から、何か、シューッ…!シューッ…!という音が、ずっと聞こえてきているのだ…。
リズムを刻むような、その音は、拠点に近づくにつれ、だんだんと大きくなっている…。
佳奈子たちは、その音を、不思議に思いながらも、拠点へと向かった…。
すると…、
「あっ…!見えましたよ…!あれが、私たちの拠点です…!」
タマが、そう言って、前を指さす…。
「へぇ~!あそこが拠点か~!あっ…!あそこにいるの、ウタちゃんだ…!…お~い…!ウタちゃ~ん…!」
佳奈子は、ウタ見つけ、名前を呼んだ。
しかし…、ウタは気づかない…。
「おや…?何かに夢中で、気づかないみたいだね…」
そう、絹代が言う。
「…っていうか、ウタちゃん…、何をしてるんだろう…?」
佳奈子たちは歩きながら、ウタを見る…。
ウタは、焚き火の近くに座っていた…。
その焚き火の上では、大きな鍋が、グツグツと湯気を立てている…。
きっと、ウタは、昼食の準備をしているのだろう…。
けれど…、ウタの後ろには、おかしなものが見えた…。
おかしなもの…、それは…、物干し竿に吊るされた、カラスの姿だった…。
そして、その吊るされたカラスの前で、ウタは、「うふふふ~!」と笑いながら、包丁を研いでいるのだった…。
そう…、ずっと聞こえていた、シューッ…!シューッ…!という音は、ウタが、包丁を研いでいる音だったのだ…。
…その光景は、なぜか、とても異様に見えた…。
なので、佳奈子と絹代は、言葉をなくし、動けなくなる…。
せっかく拠点に着いたのに…、見知ったウタがそこにいるのに…、なぜか、これ以上、ウタに近づきたくない…。というか、動けない…!なに、この状況…?!
佳奈子は、激しい動機を感じながらも、そう思った…。
そして…、そんな佳奈子たちの前で、ウタは、なおも、「うふふふ~!」と笑いながら、包丁を研ぎ続けているのであった…。




