16. 呪具取り扱い新人講習
功刀たちのケンカを目撃した佳奈子は、学校の帰り、骨董屋に立ち寄った。
「こんにちは~!」
「やあ!いらっしゃい!佳奈子ちゃん!ちょうど貰い物のカステラがあるんだ。食べていかない?」
真人はそう言って、笑顔で佳奈子を迎える。
「えっ?!いいんですか?!いただきます!」
こうして佳奈子は、今日も真人に、ごちそうになったのだった。
「ん~っ!このカステラ、フワフワで、すっごくおいしいです!」
「そう?喜んでもらえて良かったよ」
真人は、とても嬉しそうな顔をする。
「それにこの緑茶、優しい味で、なんだか気持ちが落ち着きます…。今日は学校がギスギスしてたから、こういうお茶を飲むとホッとするなぁ~」
「えっ?学校で何かあったのかい?」
「あっ…。…実は…」
佳奈子は今朝の事件を話した。
「…と、いうことがあったんです…。ほんと、朝からケンカなんて、ビックリしました…。しかもケンカで負けた山崎君と山田君、ザコって呼ばれて、よほど傷ついたのか、そのあと、すごく荒れて大変だったんです…。学校の壁を、蹴ったり殴ったり、周りの人に怒鳴ったり…。荒れた2人は怖かったけど、なんかちょっと、かわいそうっていうか…」
功刀の昨日の様子からみて、彼は、佳奈子のことも、ザコだと思っているに違いない…。
けれど、そんな事を、はっきりと言われたら、佳奈子だって、かなりショックだ…。
だから佳奈子は、山崎達に、同情を禁じ得ない…。
「そっか…。確かにその2人、そこまで面子を潰されてると、気の毒になってくるよね…。そうなった原因は、山崎君と、山田君にもあるのかもしれない…。けど、2人を負かしたっていう功刀くんって子、ちょっと問題があるよなぁ…」
真人は話を聞いて、難しい顔をする。
「この町で退魔師デビューする為に、わざわざ引っ越して来たって言うんなら、功刀くんにはきっと、相当の覚悟があるんだろう…。けど退魔師の仕事には、皆との協力だって必要だ…。皆の関係に、変に亀裂を生まなければいいんだけどね…」
「亀裂…」
「まぁ、それは考えすぎかな。それにしても彼、そんなに腕が立つんなら、ちょっと興味が引かれるなぁ。俺も一度くらい、その功刀くんと、話をしてみようかな?ちょうど今日の夜、講習会があるでしょ?呪具取り扱い新人講習会。その講習会に、きっとその子も来るだろうしさ」
そう、今日の夜は、「呪具取り扱い新人講習会」が開かれるのである。
その講習会では、最近起きている呪具による事故を紹介したり、その事故を防ぐための、予防策や、心構えを教えてもらうのだ。
そして、この講習会に参加すると、講習の「受講済み証」をもらえる。
この「受講済み証」は、かなり重要で、これをもらわない限り、退魔師は特定の呪具を購入出来ないし、呪具師は特定の商品を売る事が出来ないのである。
なので新人退魔師や、新人呪具師は、ほぼ必ずこの講習会に参加するのであった。
ちなみに、退魔師研修会は、たいてい日曜日や、休日に開かれる事が多い。
しかし、呪具取り扱い講習会は、たいてい平日に開かれるのだ。
なぜなら、呪具師たちは、呪具を作るだけでなく、店を開いている者が多いからだ。
店を開いている呪具師たちは、休日は、店に来る客が多く、忙しいのである…。
なので、呪具師が参加する、講習会は、呪具師の事を考えて、たいてい平日に行われるのである。
「確かに、「受講済み証」をもらうために、今日の講習会には、功刀くんも来るとは思いますけど…。新人じゃない、真人さんも会場に来るんですか?」
佳奈子は、不思議に思って聞く。
「うん。今日の講習会ではね、危険な呪具の使い方を実演するんだ。だから俺も、その実演の手伝いをしてほしいって言われていてね。講習指導員として、臨時出席するんだよ」
そう、真人は、理由を話す。
「そうだったんですか!じゃあ講習会では、真人さんの勇姿が見られるんですね!」
「えっ?!ゆ、勇姿?!俺はただの手伝いだよ?」
「いいえ!手伝いでも、なんでも、皆に危険を知らせるため、あえて自ら危険に身を投じる…、なんて勇敢なんでしょう!私、今夜の講習会が楽しみになってきました!頑張ってくださいね!真人さん!私と多恵ちゃんも、受講席から応援してますから!」
「う、うん…。…なんだか急に緊張してきた…」
真人はいつになく緊張し、冷や汗をかき始めたのであった。




