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11. 土転び


 ドン!


 巨大なマリモのようなものが、ゴロゴロと(ころ)がり、少女を()ねる…。


 ()ねられた少女は(ちゅう)()い上がり、そこから落ちて、バンッ!と、地面にたたきつけられた…。


 そして地面にたたきつけられた少女の背中を、巨大なマリモが、無情(むじょう)にもゴロゴロと()いていく…。




 少女・佳奈子は、山の(ふもと)で、妖怪・土転(つちころ)びと戦っていた…。


 しかし…。


「……」


 佳奈子は(たお)され、あげく口を地面に(ふさ)がれて、声を出せない…。


「佳奈子?!このバカ!前に出るなって言っただろう?!」


 祖母の絹代が、怒りの声を飛ばす。


「…うう…。ごめん…。おばあちゃん…」


 佳奈子はよろけながら、()せていた体を起こした。


 しかしその顔は、地面の土で、ひどく汚れてしまっている。


 そしてそんな状態にした土転びは、毛むくじゃらの顔をゆがめ、ムホッ!ムホッ!と笑っているのであった。


 ちなみに土転びという妖怪は、個体によって、その大きさに差がある。


 そして今、目の前にいる土転びは、大きさが1メートル以上もあるのだ。


 しかし意外にも、その重さは軽い。


 そしてフサフサの毛があるせいで、直接ぶつかっても、あまり痛くはないのだ。


 しかしタックルで飛ばされて、地面にたたきつけられる時は、やはり痛いのである。


 そしてそんな土転びは今、ムホホホ~!ムホホホ~!と笑い、からかうように、回転や、飛び()ねを始めたのであった。


「く~っ!絶対バカにしてる!(くや)しい~!」


 土転びの様子に、佳奈子は腹をたてる。


 しかしその様子を見た土転びは、余計に喜んで笑うのだ。


「もう!絶対捕まえてやるんだから!」


 佳奈子はそう言って身構える。


 すると土転びは、ムホッ!と笑い、フェイントをかけながら、タックルを仕掛けてきた。

 

「なっ?!」


 タックルされた佳奈子は、またも地面に倒れてしまう。


 そして倒れた佳奈子の上を、土転びはゴロゴロと通っていくのだ…。


 しかも今度は、佳奈子の背中の上で、何度もバウンドしながら…。


「ぐえっ…!ぐえっ…!ぐえ~っ!」


 背中の上で、土転びにバウンドされ、佳奈子はカエルがつぶれたような声をだす。


「くっ…!土転び…、こんなに悪質で大きい妖怪だったなんて…!」


 佳奈子は想像と違う土転びに、歯ぎしりをする。


 しかしそんな佳奈子の言葉を、祖母の絹代が否定した。


「いや…。そいつは明らかに普通じゃない。普通のヤツは、せいぜい中型犬くらいのサイズだし、そこまでしつこく追いかけても来ない」


「えっ?!そうなの?!じゃあ、この土転びは…」


「ああ。異様に妖力が強い個体だ…。しかも、やたらと悪質な、ね…。動きも異様に速いし、あんなに(はず)んで()ぶなんて異常だ…。気をつけな、佳奈子」


「!…分かった!」


 佳奈子は改めて気を引き締める。


「…でもこの土転び、動きが不規則で、どこから来るのか予測がつかない…」


 この土転びは、転がるだけでなく、ボールのようにバウンドして、あちこちに()ぶのである。


 その為、予測しない方向から攻撃を受けてしまうのだった。


「くっ…、こうなったら…」


 佳奈子はそう言って立ち上がり、走り始めた。


 しかし…。


「あいたっ!」


 佳奈子は、つまずいて転んでしまう。


「佳奈子?!くっ…!」


 絹代は心配の声を上げ、思わず自分の羽衣を身構える。


 佳奈子の修行のため、絹代は極力(きょくりょく)、手を出さないようにしていたが、今回は相手が悪いと思ったのだ。


 一方、土転びは、これを好機(こうき)と喜び、またも佳奈子を()ねようと向かって来る…。


 しかし…。


 ヒュッ!


 なんとその時、地面から天の羽衣が立ち昇り、土転びの動きを封じたのである。


「ムホっ?!」


「ふっふっふ~!引っかかったね!そこにはあらかじめ、羽衣を()いておいたんだ!そこに引き寄せるために、さっきは、わざと転んだの。ふぅ~、ここまで誘い込むのは大変だったよ~。なんどもタックルされたり、()かれたり…。あ~、痛かった…」


 佳奈子はそう言って、自分の(ひじ)をさする。


「!佳奈子、お前…、攻撃されながら、ずっとヤツを、誘導(ゆうどう)してたのかい?!」


「うん。予想以上に、時間がかかっちゃったけどね」


「…。…ふぅ…。お前って子は、意外に考えているんだね…。それに、あれだけ攻撃をされても、()をあげず作戦を続けるなんて…。その根性は見上げたもんだよ…」


「えっ?!おばあちゃん、もしかして()めてくれてる?」


「ああ。…だが佳奈子!あんなに攻撃を受けるのは減点だよ!あのくらいの攻撃、()けられなくてどうする!今日からは、修行をもっと(きび)しくするからね!いいかい?!」


「えっ?!もっと厳しく?!」


「返事は?!」


「は、はい~!」


 佳奈子の悲鳴のような返事は、山に大きく響いていった…。






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