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第11話:近(ちか)くにいても、心(こころ)は遠(とお)く

Kawaii Cafeカワイイカフェはいつもよりしずかだった。

あめつづき、ジェー・プロイは「売上うりあげちた」とぼやいていたが、店内てんない空気くうきえたのは天気てんきではなかった。

それは──カナとティーのあいだながれる、えない“距離きょり”。

 

________________________________________

カナのがわひろがるあたらしい世界せかい

 

あめ出来事できごとあと、カナはピムのさそいをけ、スクンビットのスタジオではつのファッション撮影さつえいおこなった。

それをティーにははなしていなかったが、SNSにった写真しゃしんで、ジェー・プロイとモクはづいた。

 

やがて、カナはタイにある日本にほんのオンラインマガジンの表紙ひょうし登場とうじょうし、インタビュー番組ばんぐみにもばれるようになった。

彼女かのじょみせ回数かいすうり、てもしずかにラテアートの練習れんしゅうをして、すぐにかええた。

 

「カナさん、明日あした練習れんしゅうますか?」モクがたずねる。

「ごめんなさい… 明日あしたはまたべつ広告撮影こうこくさつえいがあります」

 

________________________________________

勉強べんきょうがわ卒業そつぎょう目前もくぜんいそがしさ

 

同時どうじに、カナは大学だいがく4年生ねんせい最後さいご学期がっきむかえていた。

卒業論文そつぎょうろんぶん提出ていしゅつせまり、彼女かのじょよる図書館としょかんしずかなカフェで勉強べんきょうしていた。

ティーは彼女かのじょいそがしさを理解りかいしていた。

邪魔じゃましたくなかった。でもこころおくでは──

彼女かのじょ世界せかいから、すこしずつとおざかっていくがしていた。

 

________________________________________

セイヤ・メタ:えば、げるひかり

 

メタはカフェにあらわれる回数かいすうえた。

ジェー・プロイやモクへのおくもの口実こうじつにして、実際じっさいはカナにいにていた。

 

「カナちゃん、明日あした撮影さつえいあるの? おくっていこうか?」

大丈夫だいじょうぶです。自分じぶんったほうが気楽きらくですから」

つかれてるなら、ぼくのオフィスで勉強べんきょうしてもいいよ。トンローにしずかな部屋へやがあるんだ」

 

カナはいつものように、丁寧ていねい微笑ほほえみながらも、やんわりとことわった。

彼女かのじょけっしてつめたくない。でもだれたいしても、必要ひつよう以上いじょうこころひらくことはなかった。

 

________________________________________

ティー:どこかとおくなっていくきみ

 

ある、ティーはアソークの高級こうきゅうコンドミニアムにコーヒーを配達はいたつしていた。

そこで偶然ぐうぜん撮影さつえいチームのくるまからりてくるカナの姿すがたかける。

 

ノースリーブのトップス、ロングスカート、いメイク。

彼女かのじょはいつもとちがう。

ティーはこえをかけなかった。

ただ、とおくからているしかなかった。

 

その日の夕方ゆうがた、カフェにもどったティーは、いつもよりしずかだった。

モクがたずねる。

 

「カナちゃん…たの?」

ティーはうなずく。

「でも… ぼくってるカナじゃなかった」

 

________________________________________

そのよる カナの部屋へやにて

 

カナは撮影さつえいからかえってきたあと、ベッドにすわって論文ろんぶんひらいたが、文字もじえなかった。

 

スマホをり、Kawaii Cafeでティーと一緒いっしょった写真しゃしんる。

ミルクのあわほおについてわらった、あの一枚いちまい

 

そこへ通知つうちはいる。

 

日本にほんのメディアにったよ! ダイミョウ王家おうけひめが、タイでモデルに!? 有名ゆうめいになってきたね!」

 

その文字もじつめたカナは、表情ひょうじょうくもらせる。

そしてつぶやいた。

 

「…もし王室おうしつに知ら(し)れたら… どうおもうのかな」

 

スマホをしずかにき、じる。

ほほに、一粒ひとつぶなみだちた。

 

「どうか…明日あしたは、“き”と“あるべき姿すがた”をえらばなくていいでありますように…」

 

________________________________________

一ヶ月後いっかげつご えなかったおも

 

カフェのドアベルがる。

試験しけんわり、カナがみせあらわれた。微笑ほほえんでいるが、どこかせつないをしていた。

 

試験しけんわったのかい? うちのひめさま」

 

ジェー・プロイのこえに、カナはちいさくうなずき、しずかにくちひらいた。

 

「ジェー・プロイさん… はなしたいことがあります」

 

「どうしたの?」

 

じつは…家族かぞくから連絡れんらくて、きゅうくにもどらなければならなくなりました」

 

モクがおどろいて、る。

「またえるよね?」

 

「うん、絶対ぜったいに。またおうね。モクは、わたしにとってはじめての友達ともだちなんです」

 

ジェー・プロイは、しずかにピンクいろ封筒ふうとうす。

 

「これはラテ無料券むりょうけん一生いっしょうぶんよ。もどってきたら使つかってね」

 

 

── そして、わかれの夕方ゆうがた

 

カナはチュラだい校舎前こうしゃまえあるき、ったはなしたでティーと再会さいかいする。

 

試験しけんわったんだね?」

「はい…」

 

いそがしいのわって、うれしい…でも、すこさびしいかも」

 

「どうしてですか?」

「だって…まだつたえてないこと、たくさんあるから」

 

カナはしずかにった。

わたし帰国きこくはやまったんです」

 

ティーはおどろいたかおせたが、理由りゆうかず、ただしずかにった。

 

「そうなんだ… きゅうなんだね」

 

「はい… すみません」

 

しばしの沈黙ちんもくのあと、ティーがう。

空港くうこうまでおくろうか?」

 

「いいえ、大丈夫だいじょうぶです。おいそがしいでしょうし… ご迷惑めいわくかけたくありません」

 

「そっか… じゃあ、をつけてね」

 

本当ほんとうは、いたいことがやまほどあった。

でも、ティーがえたのはそれだけ。

 

「ありがとう… ティーさんは、本当ほんとうやさしいひとです」

 

きみごせて、しあわせだった」

 

 

── その翌日よくじつ文学部ぶんがくぶ屋上おくじょう

 

メタがカナをっていた。

カナがちかづくと、しずかに微笑ほほえみながらう。

 

「また…えるかな?」

 

「メタさん、ありがとう。でも私は…くにかえって、自分じぶんみちあゆまなきゃいけません」

 

メタはすこだまってから、うなずいた。

かった。ありがとう、素直すなおはなしてくれて」

 

カナは最後さいごかるあたまげてった。

 

出会であえてよかったです、メタさん」

 

「…わすれないでね」

 

つづく


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